管理者なら誰もが経験している失敗にもオサラバ?

2005/6/2

 ジュニパーネットワークスは6月1日、報道関係者向けに同社のエンタープライズ向け製品に関する説明会を開催した。同社は従来より、ISPやキャリア向けのハイエンド製品を中心に展開してきた。しかし、2004年2月にネットスクリーンを買収して以来、エンタープライズルータ市場へ参入している。同社によると、後発としてエンタープライズ市場で戦うためのカギは、独自OS「JUNOS」にあるという。

ジュニパーネットワークス エンタープライズ営業開発部本部長 須田益一朗氏
 ジュニパーは、ISPや大手通信業者といった高い可用性が求められる市場に対して、ハイエンド向け製品「TXシリーズ」などを中心に販売してきた。しかし、ネットスクリーン買収後はエンタープライズ市場にも参入し、同社のラインアップとしては最も下位となるエンタープライズ向けルータ「Jシリーズ」や「Mシリーズ」も発表した。

 ジュニパーがエンタープライズ市場へ参入したことによって、シスコシステムズとの競争が激化したという。ジュニパーネットワークス エンタープライズ営業開発部本部長 須田益一朗氏によると、「最近行われたIDCの調査によると、2004年第4四半期におけるハイエンドルータ分野で当社は43%のシェアを獲得し、1位になった」と胸を張った。その要因として、「独自OS『JUNOS』の操作性のよさや、他製品との親和性の高さ、何よりも可用性の高さが評価されたのだろう」と、須田氏は分析している。

 JUNOSは、ハイエンドのTXシリーズなどに7年前から搭載されてきたモジュラー型OS。最大の特徴は、パケット転送やルーティングエンジン、サービスのプレーンなどがすべて独立したモジュールで構成されている点だ。従来のモノリシックOSは、これらがひとまとめになっているため、VPNやQoSといったサービスを追加するとルート計算処理などに影響が出る可能性があるという。ジュニパーネットワークス 技術本部システムエンジニア 松原星一氏は「このハイエンド市場で7年間鍛えられたOSを、エンタープライズ向けのMシリーズやJシリーズにも搭載したことで、他社製品よりも高い可用性を実現している」と語った。

ジュニパーネットワークス 技術本部システムエンジニア 松原星一氏
  JUNOSでは、フィルタリングルールの許容数やオペレーションミス防止などにも配慮されている。一般的な企業では、新しいアプリケーションの導入などに対応して、ルータに新しいフィルタリングのルールを追加していくことが多い。通常のルータは、このルールを追加できる数に限度があり、400〜500個程度が限界だという。一方、JUNOSでは1000〜2000のルールを追加してもパフォーマンスは落ちないとしている。また、オペレーションミスによるダウンタイム軽減のために、設定を変更した差分を表示・確認できるcommitコマンドや、一定時間中に再度実行しなければ設定が反映されないcommit confirmedコマンドなどが利用できる。

 特にcommit confirmedコマンドは、「管理者がインターネットのTelnetを通じてルータの設定を変更した場合に、誤って自分自身の通信を遮断してしまいコントロール不能になってしまうケースがある。この失敗は長年ネットワーク管理者をした者であれば、必ず1回はやったことがあるミス」(松原氏)に対応する。通信が遮断されてしまった時点で、設定変更の確認ができないため、数分後に自動的に以前の設定に戻って通信が復活するというものだ。松原氏によると「この機能は管理者に大変喜ばれている」という。そのほか、負担の少ないデバッグ機能やりあるタイムにトラフィックを監視できる機能なども搭載している。

 須田氏は今後のジュニパーの戦略を、「ネットスクリーンのファイアウォールやVPNと当社のルータを組み合わせて販売していく。また、ネットスクリーンが持つ既存の販売ルートや認知度を利用して、ルータ部門の顧客の新規開拓も行っていきたい」と説明した。

(@IT 大津心)

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ジュニパーネットワークス

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