M&Aの効果を定量分析、実施3年後の収益力は34.8%上昇、アビーム

2006/7/21

アビーム M&A コンサルティング シニアヴァイスプレジデント 加藤靖之氏

 アビーム M&A コンサルティングは7月20日、「M&A」実施後の企業価値推移を定量的に分析したレポート「M&Aによる企業価値の創造」を発表した。同社によると、M&Aの効果について、定量的な分析を行った例はほとんどないという。このレポートで測られた企業価値は、時価総額と有利子負債を合算したもの。時価総額は株式市場ムードの補正(TOPIXを採用)を施すことで調整した。

 この調査によると、M&A実施3年後の企業価値は16.1%増加したことがわかった。また、EBITDA(金利・税金・償却前利益)は34.8%の上昇で、収益力が大きく向上した。しかし、売上高は実施後1年後に2.8%、3年後でも4.4%と微増にとどまっている。

 M&A案件における投資元のバイヤータイプを「ストラテジックバイヤー」と「フィナンシャルバイヤー」に分類した。ストラテジックバイヤーは、対象企業の事業を手に入れるために買収を図る投資元を指す。一方で、フィナンシャルバイヤーは、純投資を目的に株式を取得し、場合によっては経営に関与することで、企業価値の向上を図る投資元のこと。

 M&A実施3年後の企業価値が16.1%増加したという調査結果について、投資元ごとに分類して分析すると、ストラテジックバイヤーの方がフィナンシャルバイヤーよりも企業価値を向上させていたことが明らかとなった。ストラテジックバイヤーのM&A案件の場合、「両社の商圏や商品カバレッジの補完余地が大きいことが多く高い効果が得られやすい」(シニアヴァイスプレジデント 加藤靖之氏)と同社では見ている。

 ストラテジックバイヤーによる企業価値増加の優位性というポイントにも関連するが、投資元をマーケットで分類した場合にも違いが見られた。日本企業同士のM&Aを「IN-IN型」、外国企業が投資元で、日本企業が投資先となるM&Aを「OUT-IN型」とすると、OUT-IN型の方が、企業価値の増加に貢献しているという分析結果が得られた。

 「海外企業の国内投資のほとんどはM&Aの形をとる」と同社 代表取締役社長の岡俊子氏はいう。そのためにも、M&Aの効果の定量分析が必要と判断した。結果を見ると、OUT-IN型で、ストラテジックバイヤーによるM&Aは、企業価値を増加させることに成功していることがうかがえる。これらの結果を踏まえて、同社はM&Aに関するいくつかの改善点を提案した。すなわち、買い手・売り手相互の事前検証の徹底、デューデリジェンスの徹底、事後検証の徹底の3点である。

(@IT 谷古宇浩司)

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