ポイント通貨圏形成で優位なポジション狙う

ECナビ、ポイント交換サービス“PeX”を開始

2007/02/05

 ショッピングサイトの「ECナビ」を運営するECナビは、オンラインやオフラインで各社が発行するポイントの、個人向け交換サービスを開始する。親会社のサイバーエージェントと共同で出資して設立した新会社「PeX」は、同名のサービスを2月6日にオープンする。クレジットカード、家電量販店、航空会社などポイントを発行する企業が増えており、PeXは急成長するポイント市場での“基軸通貨”を目指す。

pex01.jpg PeX代表取締役 宇佐美進典氏

1兆円超との見積もりもあるポイント市場

 野村総合研究所の推計によれば、ポイント市場は、すでに年間4500億円規模。主要業種以外のデータも積算すれば、1兆円を超えるとも言われている。これまでリアル店舗での発行や利用が主だったポイントは、楽天、Yahoo!やamazon.co.jpの参入など、オンラインでも活性化している。企業同士の提携も進み、例えばクレジットカードによる買い物で得たポイントを航空会社のマイレージへに交換する、といったポイント交換も盛んだ。

 しかしポイント同士の交換は、必ずしも任意のポイント間で可能なわけではなく、利用者は、手持ちのポイントを特定の企業のポイントに交換するために、複雑な路線の地下鉄を乗り継ぐように“ポイント乗り換え経路”を見つける必要があった。また、ポイントの種類が増えすぎたために、ポイントの管理が煩雑になっている。

pex02.jpg ポイント交換ネットワーク相関図(ポイント探検倶楽部佐藤温氏による)

リアルタイム交換とワンストップサービスがウリ

 こうした状況の中、PeXは、個人向けにポイントの交換や管理を一元的に行うサービスを行う。PeXのWebサイトにログインすると、自分のポイントの残高などの情報が画面上に表示される。PeXに蓄えたポイントは無期限で有効だ。

 PeXと提携しているパートナー企業のポイントは、PeX上に集めて貯めることができる。現在、ECナビやamazon.co.jp、TSUTAYAオンライン、Edyなど、25のサービスと提携しており、サービススタート時点では12種のサービスが利用できる。

 PeXの特徴は、各社ポイント間の交換がオンラインで、リアルタイムで行える点。「これまで百貨店のポイントを交換する場合、1カ月後に商品券が届くようなこともあった。PeXではリアルタイムで交換が可能で、ポイント蓄積も無期限」(PEX取締役 石川敬三氏)。

 今後は提携先を増やす。「夏に交通機関のポイントが拡大していくし、ネット上のポイント利用も拡大している。2008年2月までに100社との提携を行い、2009年9月期でポイント交換総額50億円を目指す」(石川氏)という。PeXでは、ポイント交換時に5〜20%の交換手数料を企業から徴収するほか、PeXに蓄えられたポイントの未使用分を収益の柱とする。PeXはポイントの使用率を85〜90%前後と想定しており、ポイントが未使用のまま発行側の利益となる割合、いわゆる「退蔵率」は10〜15%と見ている。ECナビやamebaブログなど、サイバーエージェントグループ全体で、すでに年間12億円のポイント交換実績があるという。

pex03.jpg PeXのログイン後の画面イメージ

基軸通貨のヘゲモニーを巡る争い激化

 新規参入と各社の提携が進む中、もともと提携先の多い全日本空輸(ANA)や日本航空(JAL)といった人気の高いマイレージは、ポイント市場の中心的ポジションを占めるようになっている。乗降客の多いキーステーションのように、2社のマイレージは、複雑な“ポイント交換路線”における二大ポイント通貨圏を形成している。

 今後、ポイント市場で、他のポイントより流通度や信頼度が高いポイントが登場すれば、それはポイント市場における“基軸通貨”となっていくと予想される。基軸通貨を握る企業にとって、一定の退蔵率を見込めることや、自社の不良在庫をポイントの形で処分できるなど、うま味は多い。例えば航空会社の場合、長引く航空不況で空席多数のまま路線を運用しているより、マイレージを発行して空席を埋めてもらった方が有利になる。

 利用者が少なく“弱いポイント”は基軸通貨となったポイントへのリンクを求めるため、強いポイントは、PeXのように差益を確保できるようになる。こうしたうま味を狙い、今後、ポイント基軸通貨を巡るヘゲモニー争いは、いっそう激しさを増しそうだ。

pex04.jpg 宇佐美氏とPeXイメージキャラクターの牧瀬里穂さん

(@IT 西村賢)

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