裾野を広げる検索市場

「FASTはGoogleの検索技術より2年先行」

2007/02/21

 「Googleは検索技術の追究を諦めて、ネット広告に特化した」。Googleは検索技術そのものでは、先端的な検索技術を持つ他社に対して後れを取っており、自社の検索技術はGoogleのそれより2年先行している――、記者向け説明会で事業戦略を語ったファストサーチ&トランスファ 代表取締役社長の徳末哲一氏は、検索技術が開く新しい市場の可能性を感じている。同社は、エンタープライズ向け検索ソリューション市場で地歩を固めつつある。

四国お遍路はやめて検索ビジネスに

fast01.jpg ファストサーチ&トランスファ 代表取締役社長の徳末哲一氏

 「四国にお遍路にでも出ようかなと言ったら妻に怒られましてね」。徳末氏は、長年在籍した日本IBMを1992年に離れてから、日本ピープルソフト、日本ビジネスオブジェクツの代表取締役社長を歴任してきた。前職は2005年秋に退任。次に何をやるかべきか思案していた時期、約3カ月をかけて欧米やアジアを回った。そんな折に知人を通して紹介されたのが検索技術で知られるノルウェーのFastSearch&Transfer(FAST) CEOのジョン・マーカス・レルビック(John M.Lervik)氏だったという。「いきなりノルウェーの自宅に呼ばれましてね、フィヨルドの海岸を見ながら検索について話を聞かされました。検索技術でこういうことをしたい、ああいうことをしたいという話が10年ぐらい先まであったんです」。ERP、CRMなどBI関連は20世紀で一巡したの思いがあった徳末氏は、検索技術の面白さと可能性に惹かれた。

 1980年代前半、IBM在籍中に米国スタンフォードに留学した同氏は、1970年代後半から1980年代前半にかけて勃興する西海岸のITベンチャー群を目の当たりにしている。それまではIBMを選べばノーリスクという時代だったが、専門に特化したIT系スタートアップが急成長を始めた時期だった。そうした新しい「何か」が、いま検索技術を巡って出てくる可能性を徳末氏は感じているという。「検索技術は、まったく違った領域に向かっていくという予感がある。検索技術はコアにあるイネーブラーで、まだわれわれにも何があるか分からない」と話す。

 まだ適用可能な領域やアプリケーションの形には、未知の可能性があるとしている一方、すでにFASTはワールドワイドで3600社以上の顧客を抱え、多くの先進的な導入実績を持っている。2003年以来、50〜60%強の売上増と高い成長率を維持。2006年には1億6300万ドル(約196億円)を記録している。

チャイルドポルノの取り締まりに画像検索を活用

 先進的な検索技術の導入実績として徳末氏が挙げるのは、例えばアジア某国の警察組織に導入された、チャイルドポルノの監視検索だ。Web上をクロールし、注意すべき画像があればシステム側にアラートを発する。同システムは、すでに2年の稼働実績があり、成果も上げているという。

 画像検索には、知財パトロールのニーズもある。通信社のロイターは、写真を含む自社の情報が無断利用されていないか、同社の技術を用いて日々パトロールしているという。

 もともとFastSearch&Transferは、「トランスファ」という名前が示すとおり、画像コンバータや画像転送技術を持った会社で、キーワードベースのテキスト検索だけではない、画像・映像・音声のほか、各種アプリケーションデータやDBなどにも対応していることが強みだ。音声の検索が可能なため、「ケータイの音声をサーチして、テロリストの動きを監視し、事前にアラートを発するといった用途にも使える」という。

セマンティックスまで持つインデックス

 「元の文章よりもインデックスのほうが大きいこともある」という従来の検索エンジンの常識と異なる発言に驚かされる。それは、文章中から「WHO(人)、WHAT(もの)、WHEN(日付)、WHERE(場所)」などの“エンティティ”の情報を抽出し、インデックス化しているからだ。例えば「9-11」で検索すれば、WHOとしてオサマ・ビン・ラディンやジョージ・W・ブッシュといった名前、日付として「2001-09-11」の文字列が列挙される。

fast02.jpg 検索結果の上部には「WHO、WHAT、WHEN、WHERE」といった項目が列挙されている。あらかじめ文章中の“エンティティ情報”をインデックスに持たせてある

 法人ユースを想定した検索レポート機能も、同社のユニークな技術を示す実用例だ。社名、ブランド名、製品名などで検索すれば、ニュースサイトでの掲載記事数の変遷や、サイト別の掲載数、ニュースサイトでのジャンルの扱い、ネット上での評判などを一気に調べられる。Webページの検索結果には、独自の解析エンジンによる「高評価」「低評価」を示すアイコンも表示される。

fast03.jpg 検索を用いたレポート作成機能。ネット上のニュースやブログでの取り上げられかたを詳細に分析できる

内部統制やコンプライアンスにも検索

 企業の内部統制や犯罪捜査にも威力を発揮する。公開されているエンロン経営陣がやりとりしたメール文書コーパスに対して同社の検索ツールを適用すると、誰が誰に対してメールを送ったが一目瞭然で、粉飾決算の中心人物であるケネス・レイの動きが手に取るように把握できたという。「変ないい方ですが、コンプライアンスに使うと“怖い”」ツールだと、徳末氏は言う。

DBの性能を凌駕する検索

 ポータルサイトでも検索が活用されている。ECポータルサイトの楽天では、店子数約4万店、商品数1700万アイテムという膨大な情報を、3000万のユーザーに対して提供している。カテゴリやブランド名による絞り込みは、同社の検索技術を用いて行っているという。「データベースでは、こうした事例は実現不可能」といい、ある程度複雑なクエリになるとデータベースよりも検索のほうがパフォーマンスが出るという。「頻繁にデータを更新するものはデータベース、リードオンリーのデータはサーチでやったほうが効率的」と、検索技術の適用領域は広く、業界地図すら塗り替えるポテンシャルを持っている。一般的なポータルサイトであっても、ブロックごとに表示するデータは、検索を使った“SEARCHLET”で実現できる。

モバイル関連は日本発で

 日本語には、言語処理の専門家を引き入れて約2年をかけて対応した。現在、日本法人は社員30人の陣容でFAST全体の5%強程度の売り上げを上げている。今後は10%のラインを目指す。すでにプロジェクト単位では、NTTデータやIBMといった国内パートナーと協業しているが、4〜6月頃には正式に複数のパートナーと契約を結ぶ予定。徳末氏は「検索は始まったばかりのテクノロジー。日本はモバイルに強いので、モバイル関連は日本発にしたい」と話す。

(@IT 西村賢)

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