米ガートナーのアナリストが指摘

グーグルはマイクロソフトを殺さない

2007/04/20

 オフィスアプリケーションを巡るグーグルとマイクロソフトの動向が注目されている。グーグルはSaaSのオフィスアプリケーション「Google Docs&Spreadsheets」「Google Apps」を本格展開し、中小企業や教育機関を中心に攻勢を始めた。マイクロソフトの「Microsoft Office」はまさにデスクトップアプリケーションの王者であり、マイクロソフトの稼ぎ頭である。

 注目されているのはMicrosoft OfficeがGoogle Docs&Spreadsheetsに取って代わられ、「マイクロソフトが死ぬ」かということだ。米ガートナーのリサーチ・バイスプレジデント ベン・プリング(Ben Pring)氏は「グーグルがマイクロソフトを殺すことはない」と語る。

gartner01.jpg 米ガートナーのリサーチ・バイスプレジデント ベン・プリング氏

 理由は単純だ。「企業の99%のPCにはMicrosoft Officeがインストールされている。この商業的なパターンが続く限り、マイクロソフトは安泰だ」。つまり企業にとってMicrosoft Officeは標準であり、そのほかの選択肢がないのが現状だからだ。

 ここでポイントになるのは世代だ。企業内で使うソフトウェアを決める担当者は上級のベテラン社員であることが多い。現場の若手社員が「Google Docs&Spreadsheets」を提案しても、ベテラン担当者が、パッケージソフトウェア以外のソフトウェアの提供形態を知らない可能性がある。しかも、「大きな組織のIT部門はまだ技術が無料であることに疑いを持っている」(プリング氏)。

巨人はSaaSに苦しむ

 マイクロソフトがあまりにも巨大で豊富な資金を持つことも延命につながる。これは同じくパッケーソフトウェアの巨人であるオラクルやSAPも同じだ。「オラクルやSAPは明日以降、まったくソフトウェアを売らなくても、(サポート収入などで)しばらくは生存できる。10年くらいは大丈夫だろう。マイクロソフトも同じだ。彼らはSaaSにかなり苦しむが、いずれも殺されることはない」(プリング氏)。

 この3社はもちろんSaaSへの取り組みを始めている。プリング氏の評価はこうだ。オラクルは「Oracle Siebel CRM On Demand」を提供したり、ソフトウェアのホスティングを行っているが「単なるアプリケーションのアウトソーシングで、本当のSaaSではない」。しかし、CEOのラリー・エリソン氏は個人でSaaSベンダのSalesforce.comやNetSuiteに出資するなど「SaaSについて理解を持っている」。

 対して、プリング氏はSAPとマイクロソフトに対しては辛らつで、「SAPとマイクロソフトはSaaSの議論がなくなってほしいと思っている。両社はSaaSのサービスを提供しているが、よいサービスではない。『SaaSは使えない』とユーザーに思わせて、パッケージソフトウェアに戻らせることを考えているのではないか」と指摘した。

世代交代で「面白いことに」

 グーグルがマイクロソフトを殺すことは“いまのところは”ない。しかし、「若い人がどんどん会社に入ってくれば、広告ベースのソフトウェアがどう普及していくのか。今後は面白いことになるだろう。Microsoft Officeが“お父さんのためのソフトウェア”になる可能性もある」とも語る。

 ソフトウェアの間接販売が多い日本では、システム・インテグレータやリセラーがSaaSに大打撃を受けることが予想される。SaaSはソフトウェアベンダとエンドユーザー企業を直で結ぶ、究極の中抜きビジネスだからだ。プリング氏は「いろいろ考えてきたが、リセラーが生き残るための簡単な答えはない」として、「1つのチャンスは自分自身がSaaSベンダになることだろう」と話した。

(@IT 垣内郁栄)

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