インテルのAtom+Moblinに対抗

MID向けLinux混戦、UbuntuがARM対応へ

2008/11/14

 英ARMと英カノニカルは11月13日、デスクトップ向けLinuxディストリビューションの「Ubuntu Desktop」をARMv7アーキテクチャに対応させると発表した。ARM Cortex-A8と、マルチコア対応のCortex-A9プロセッサベースのシステムに対応する。この決定はデバイスメーカーからのニーズに応えるもので、ARMを使って小型のネット端末でバッテリ稼働時間を犠牲にすることなく通信環境を提供できるようしていくという。

 ARM対応版のUbuntuは2009年4月に、従来のデスクトップ版同様にWebサイトやCD-ROM配布によってリリースしていく。

 UbuntuはこれまでMID端末向けとして「Ubuntu Mobile Internet Device (MID) Edition」をOEM向けとしてリリースしていた。Ubuntu MIDはインテルのAtomファミリーをターゲットとしており、カーネルもインテルが中心となって省電力機能などを強化したMoblinベースのものを使用していた。

 インテルはAtomとMoblinの組み合わせで今後成長が見込まれるUPMC市場で攻勢をかけたい構えだったが、組み込み市場で先行するARMはUbuntuと手を組むことで、この流れに対抗した形だ。

カーネル以外でも進むARMへの移植

 UbuntuのARM対応は、組み込み市場でARMの牙城を崩したいインテルにとっては強力なカウンターパンチだ。インテルが主張するAtomプラットフォームの優位性の1つは、x86アーキテクチャをターゲットとしたソフトウェアの豊富さにあるからだ。

 Linuxカーネル以外のソフトウェアやディストリビューション自体をARMアーキテクチャに対応させることは容易ではない。しかし、ノキアがスポンサーする「Maemoプロジェクト」や「Handheld Mojoプロジェクト」はWebブラウザやFlashをはじめとする主要なアプリケーションをARM上へ移植しつつある。例えばノキアのインターネット端末「Nokia N800」はARMベースのプロセッサを採用するが、MozillaベースのWebブラウザであるMicroBやFlashプラグイン、Skypeなどのアプリケーションが稼働している。

 また、Handheld Mojoは、Debian/GNU Linuxの1万以上のパッケージを、最小限の変更でそのままARM上でビルドし直すという野心的プロジェクトだ(参考リンク)。スマートフォンの処理能力やストレージ容量は、もはやそれ専用の“小さな”ディストリビューションを作るほど小さくない、というわけだ。ただ、x86プラットフォーム用Debianのパッケージはクロス・コンパイルを意識して作成されていないものがあるため、PC上でリコンパイルしようとすると多くの手作業が発生してしまう。このためHandheld Mojoでは、ARM上で何日もかけてビルドするという作業を行っているという。

 つまり、GNOMEに含まれる多言語ライブラリ、仮想ファイルシステムや画像・マルチメディア関連のライブラリ、HTMLレンダリングエンジン、SQLライブラリ、ウィンドウマネージャなどを含むパッケージの全体となると、ARMへの完全移植のめどが付いたばかりだ。こうしたタイミングでUbuntuがARMプラットフォームへのコミットメントを表明し、2009年4月にフルバージョンのARM向けUbuntuディストリビューションを提供すると発表したわけで、この意味は小さくない。

 GNOME関連で、もう1つ見逃せない動きがあった。Androidプロジェクトを立ち上げて今も中心的立場にあるグーグルだが、同社はその一方でGNOMEプロジェクトへの参加を最近表明している。グーグルはモトローラとともに11月3日、GNOMEファウンデーションにボードメンバーとしての参加すると発表した(プレスリリース)。GNOMEプロジェクトはモバイル向けとしてGNOME Mobile Platformの開発に取り組んでいる。

 UbuntuのARM対応や、グーグル、モトローラらのGNOMEプロジェクトへの参加は、カーネルだけではなくLinuxプラットフォーム全体のモバイル機器への普及を後押しすることなるかもしれない。

(@IT 西村賢)

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