乾燥地帯で特に高い冷却効果

Windows Azureを支えるコンテナ型DC、気化熱冷却に進化

2009/11/20

 マイクロソフトは米国ロサンゼルスで行われたPDC2009の展示会場で、第4世代にあたる同社の最新のコンテナ型データセンターを披露した。年明けに正式にローンチするクラウドコンピューティングのプラットフォーム「Windows Azure Platform」を支える物理的なユニットの1つだ。

 冷却水と電源、ネットワークポートだけを外部から供給すれば稼働するコンテナ型データセンター自体は、サン・マイクロシステムズ、IBM、HP、デルなど各社が取り組んでいて珍しくない。全世界の規格がほぼ統一されているため港湾施設、輸送システムなど既存インフラを活用した運搬で有利なことや、内部の熱設計を完全にコントロールできることなどがコンテナ型が採用される理由だ。

chicago.jpg シカゴにあるマイクロソフトのデータセンターに設置された初代コンテナ型データセンター

 マイクロソフトのデータセンターを支えるハードウェアも、コロケーションによるサーバ設置からスタートし、専用ラック、コンテナ型と進化してきた。コンテナ型としては2世代目となる「IT PAC」は気化熱を利用した空冷方式に変わったほか、アルミフレームを採用して1人の作業員が4日間で組み立てられるほど簡素化されているなど、大きく進化しているようだ。

 会場で解説をする担当者の話によれば、従来のコンテナ型では冷却水の循環のために外部にポンプや冷却ユニットなど特殊な装置が必要だった。IT PACでは、これを一般的な水道水とホースで置き換えたという。そのカラクリは、コンテナの側面から吸引する空気に対して吸入部付近で滝のように水を滴らせ、その気化熱により温度を下げるという空冷方式にある。このため、テキサス州の砂漠など乾燥地帯ほど冷却効率はよく、逆にシンガポールのように湿度が高い地域では若干不利となるという。ただ、この方式のメリットは、温度、湿度を完全にコントロールできることにあり、IT PACの内部は常に摂氏マイナス1度から32度、湿度20から80%が維されるという。

flow.jpg 左側の吸引部で水滴を垂らし、冷却や加湿などの調整を行うという
hose.jpg 従来の大がかりな循環装置や冷却装置を不要とし、簡易なホースと水道水で冷却を実現したという

 展示会場ではシステムの負荷に応じてフラップを開閉し、周囲で会話ができないほどの大きな音を立てて猛烈な勢いで空気を吸引したり、再び静かに稼働するという様子をデモンストレーションしていた。

 マイクロソフトは現在、Windows Azureの商用サービスインを控え、IT PACなどを用いて各地にデータセンターを構築中だ。2010年には北欧、西ヨーロッパ、南アジア、東アジアなどに次々にデータセンターを施設・稼動させるという。日本向けサービスでもパートナーとの協業でIT PACの導入を検討しているほか、2、3年後には、大口顧客向けにコンテナとAzureの組み合わせをオンプレミス向けに販売する構想もあるという。

map.jpg Windows Azureを支えるデータセンターとして、2010年には世界各地に拠点を増やすという

(@IT 西村賢)

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