[Analysis]

米国で投資されるWeb 2.0企業の条件

2007/04/16

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 技術投資の動向を把握するためには、定期的かつ定量的なリサーチが欠かせない。ビジネスや技術動向は口コミやWebサイトからの情報で入ってくるが、生資料を定量化することにより得られるベースがあるとないのとでは伝聞情報に対する理解度も変わってくるからだ。

 そのため私は半年に1度、起業の動向と、3年程度経過した企業の動向、そして、5年以上経過した企業と3フェイズの調査/分析を行う。今回は最近行った分析のなかから、米国における2006年4月以降に「シード」または「ファースト」の資金調達を行った164社(VentureSourceに掲載されたソフトウェア/ITサービスの会社より抜粋。半導体デバイスは含まない)の動向と特徴ある起業を見てみよう。

投資分野
投資件数
IT Consumer Services
51
Connectivity&Communications Software
23
IT Business Services
19
Business Applications Software
18
Multimedia Networking Software
9
Network&Systems Management Software
9

細分化するコミュニティ、サーチ

 上記の表は、カテゴリコード別にトップ6位までの投資分野である。7位以下は、カテゴリごとに3社以下であるため割愛してある。2006年の起業を特徴付けるのはなんといっても、「IT Consumer Services」分野における細分化されたコミュニティサイト向け投資だろう。

 この中には2004年設立でありながら2006年に500万ドルを超える初期投資を受けたPatientLikeMeのようなサイトもある。要は、後発であっても参加する動機付けが明確で、かつ、良好な広告ターゲットとなるニッチ分野の隙間を埋める形の起業が目立つということだ。

 もちろんこれらの会社は、すでに巨大コミュニティとなったMySpaceなどの大手に買収されることも想定しているはずである。同じように被買収を想定した領域としては同じように「IT Consumer Services」のサーチポータルがある。買収想定先はもちろんGoogleと、その競合MSNだ。Lijit Networksのように、自分との関係性からサーチ対象を見つけやすくしたり、Polar Roseのような顔面認識を応用した画像サーチまで多岐に渡っている。

歴史を繰り返すモバイル

 一方、「Connectivity&Communications Software」分野は主にモバイルの起業で占められている。モバイルでは、PCの歴史がそのまま繰り返されていることが特徴だ。メール、ブログをそのまま読めるようにする Flurryや、ボイスベースのソーシャルネットである Jaxtr。他にもSNSやコンテンツマネジメント、そしてゲームなど、PCベースのWebと同じトレンドがプラットフォームを変えてモバイルでも繰り返されている。

 「Network&Systems Management」は主にセキュリティ起業で占められている。法人向けのアカウント偽装対策ソフトウェア企業のGuardian Analyticsなど、サービス提供者側のニーズを反映したものが目立つ。特に変化への対応が求められる領域らしく、セルフヒーリングをうたったエンタープライズセキュリティ企業、Revive Systemsが目新しい。

 「Multimedia Networking Software」分野でのビデオ関連のコンテンツ管理ソフトの起業は一段落したようだが、サービス事業者の乱立に伴う帯域圧迫を見越し、Rinera Networksのような、高負荷対応型配信システムが再度登場してきている。基本的にはPeerCast的PtoPシステムなのだが、PtoPとはいわずにCVDS(Coordinated Video Distribution System)といっているところがほほえましい。

 Web開発の領域では、エンドユーザーマッシュアップを狙ったTeqlo、プログラミングフリーのWeb2.0 OSを展開するXcerionなど、サイトの構築から既存システムの結合技術へと進展している様子がうかがえる。

1人でできた

 さて、2000年のITブームを境にファンドは大型化し、ベンチャーも大規模なチームで起業することが普通となってしまった。しかし、ここに来てその動向に揺り戻しが来ているようだ。Xobniがその代表事例だ。

 Xobniは、2007年3月26日にKhosla Venturesから426万ドルの投資を受けている。しかし、そもそも、それまではMatt Brezina氏たった1人の会社に過ぎなかった。しかもほぼ1年前に1万ドルの投資をY Combinatorから受けたきり、同氏はアプリケーション制作に没頭していたのだ。Web起業の現場では大規模開発から個人への揺り戻しが起きているのだ。

 小さくて単純な仕組みでも、Webサービスと結びつけ、マスユーザーの情報を集積することが高度な価値を持ち、ビジネスとしての利益を生み出せるようになったことが背景にあるだろう。日本でも字幕.inのような事例も出つつある。

 事例としては小さいが、Xobniが2006年の最大のシンボルといえるかもしれない。そこの優秀なあなた。自分流のユニークなシステム作ってみませんか?

(イグナイトジャパン ジェネラルパートナー 酒井裕司)

[著者略歴]

学生時代からプロエンジニアとしてCG/CADのソフトウェア制作に関わり、その後ロータスデベロップメントにて、1-2-3/Windows、1-2- 3/Mac、Approach、Improveの日本語版開発マネージメント、後に本社にてロータスノーツの国際化開発マネージメントを担当後、畑違いのベンチャーキャピタル業界に転職した異色のベンチャーキャピタリスト。2005、2006年度 IPA 未踏ソフトウェア創造事業のプロジェクトマネージャ



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