[Analysis]
「シリコンバレーで起業」の有利さ
2007/06/26
IT業界における米国企業の多さには慣れているつもりだが、フレッシュなアイデアと実行力を兼ね備えた米国発のベンチャー企業と接する機会があると、改めて「こうした企業はなぜ、まだ日本から出てこないのだろう」と思うことがたまにある。IT業界で米国発だとか日本発だとか気にすることはないのかもしれない。しかし日本人としては、このことを完全に無視するわけにもいかない。
最近、リアルコムが、日本人のシリコンバレーでの起業を支援するプロジェクトを立ち上げると発表したが、これは改めていろいろと考えさせられるニュースだった。
日本でなくシリコンバレーで起業するほうが有利である理由は何か。さまざまな答えがありそうだが、最大の理由はおそらく、ITベンチャーへの投資環境の違いだろう。以前のITバブル期まではいかなくとも、豊富な資金力をバックとして活動する数々のエンジェルやベンチャーキャピタル。彼らの支援を得るには、斬新な素晴らしい技術に加え、成功に導けるだけの経営体制も求められる。米国のベンチャー企業に聞くと、人脈も重要な要素で、実績のある人がどのようにかかわっているかがベンチャーキャピタルの投資判断を大きく左右するという。
日本のIT業界でも勇気を持って起業し、一定の成功を収めている人たちがいる。しかし日本のベンチャーは、必要投資額の少ないタイプのビジネスに偏っているようだ。特に、通信機器をはじめとしたITハードウェア関連で、日本のベンチャー企業の存在感が低い。
これについては、日本におけるITベンチャー投資がレイトステージに集中しており、資金を集めてからものをつくるというサイクルが回りにくいとの指摘も聞く。最終的にはベンチャー企業に投資する側の“技術に関する目利き”の部分が弱いこと、そしてIT業界における起業を支え、支援する人材の層がシリコンバレーに比べて薄いことが指摘できる。この2つの点は、今後経験値が上がることで改善されていくと期待できる。しかし最後に残る大きなハードルがある。
そのハードルとは、日本のIT市場の硬直性と国際展開の難しさだ。米国企業なら、十分な規模を持ち、新しい製品の受容性が比較的高い米国の市場をまず相手にし、実績を積んでから国際展開を始めるというシナリオが自然に描ける。IT業界に関しては、残念ながら「米国で勝てれば世界で勝てる」は現在でも正しいケースが多いからだ。しかし、本国の市場において新興ベンダへの受容性が低く、十分な市場規模を当てにできないならば、海外に出ていくしか選択肢はなく、その際には大きな困難が予想される。
いうまでもなく日本では、部品や素材、検査などの技術で世界的に抜きん出た「オンリーワン」の企業も多い。しかしIT業界においては完成した製品を最終消費者に提供するのが基本的なビジネス構造である以上、「技術さえあれば」が通用しにくい。
とすれば、「シリコンバレーで起業」の有利さは今後もずっと続いていかざるを得ないのかもしれない。
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