第1回 進むRFID標準化と実証実験


河西 謙治
株式会社NTTデータ
ビジネスイノベーション本部
ビジネス推進部
課長
2006年5月10日
WebがWeb2.0へとシフトするのと同様に、RFIDもRFID2.0へと進化する可能性を秘めている。標準化されたRFIDの仕様や開発事例を引きながらRFID2.0のポテンシャルを探る(編集部)

 普及期のRFID1.5、来るべきRFID2.0時代に備えよ

 日本においてRFID(無線ICタグ)への取り組みが本格化してきたのは、後述する関連省庁の実証実験が活発化してきた2003年ごろからであった。それから3年、標準化活動、実証実験を通じた技術検証、システム実装における課題抽出とその解決などの取り組みがさまざまな形でなされてきた。その結果、一部業務に限られてはいるものの、徐々に実務への適用も始まってきている。

 この3年間の標準化へ向けた動きや実証実験への取り組みを、仮にRFIDの黎明期として「RFID1.0」と位置付けよう。さらに、最近の新たな兆候として、

  • RFIDの高機能化:UHF帯使用による読み取り距離の長距離化や各種センサー機能とのハイブリッド化など
  • 適用分野の広がり:in B(企業内でのクローズドな利用)中心から、in G(街中や空港での場所情報提供など)、BtoC(マーケティングツールとしてエンドユーザーがICタグやリーダを保有)へ

といった、RFID1.0の枠組みを超える新たな動きが始まりつつあり、これからの数年間は、RFIDの高機能化と適用分野の広がりに基づくRFIDの普及期として「RFID1.5」と位置付けられるだろう。

 そして、その先には来るのが「RFID2.0」である。現在、注目を集めている「Web2.0」のキーワードである「マッシュアップ」「ロングテール」「集合知の利用」といったインターネットにおけるパラダイムシフトと相似形の革新がRFIDにおいてももたらされるだろう。

 例えば、RFIDはデータ収集のフロントシステムから、個々のシステムが共通プラットフォームを通じてネットワーク化されることにより「ID情報インフラ」へ進化する。収集されるデータも、静的な情報から、リアルタイムに複数プレーヤーをまたがる情報の蓄積へと進化し、フィルタリング技術の活用などによって、個々の企業内では実現し得ない集合知の共有が可能となる。共有された集合知は、ほかの情報とマッシュアップ的に活用され、さらに対象プレーヤーのすそ野拡大(コンシューマなどへの普及)によりロングテール的な収益モデルが登場する。

 今日、まさにRFID2.0というべきモデルが期待されており、この礎となる取り組みもわずかではあるが目に付き始めている。

 本連載では6回にわたって、RFIDを取り巻く標準化動向や技術動向、開発事例を基にした分野別ソリューション(物流、製造、セキュリティなど)を通じ、RFID2.0に向けたRFIDの可能性と課題を浮き彫りにするものである。

 活発な2つのRFID標準化

 RFID2.0に入る前に、RFID1.0の最新動向をふかんしてみよう。標準化については、EPCglobalとユビキタスIDセンター(T-Engineフォーラム)が活発な動きを見せている。

●EPCglobal

 EPCglobalは、GS1(流通業界の標準化団体である欧EANと米UCCが統合し2005年1月に発足した団体)が所有する非営利法人であり、RFIDにかかわる標準化および普及促進を推進する団体である。

 EPCとはElectronic Product Codeの略で、ICタグに記録する商品コード体系である。これは、EPCヘッダ、EPCマネージャナンバー(企業コード)、オブジェクトコード(商品種別コード)、シリアルナンバー(個品番号)で構成されている。このうち、EPCマネージャナンバーとオブジェクトコードは国際標準の商品コード体系であるGS1が定めるGTINに準拠しており、利用企業から見て既存の商品体系と互換性を持ちつつ、シリアルナンバーによる個品の認識を可能にしている。

 EPCglobalは、流通業界の標準化団体が母体という成り立ちからFMCG(First Moving Consumer Goods:日用雑貨)の分野をファーストターゲットとし、Walmartにおける取り組みは世界的にも最も有名なRFID適用事例の1つとなっている。2005年からはヘルスケア&ライフサイエンス(HLS)とトランスポート&ロジスティクスサービス(TLS)のワーキンググループ(WG)が具体的な活動を開始した。TLSのWGは神戸で開催され、日本企業も中心メンバーとして参画している。今後、航空機製造、自動車、アパレルの各分野が具体化しつつあり、さらに将来的には、エレクトロニクス、化学といった分野が視野に入っているようである。

 最近の動向としては、Class1Generation2(C1G2/Gen2タグ)というUHF帯を使った低価格かつ使い勝手の良いタグの仕様策定と普及促進が本格化している。Gen2タグは2006年中には市場に本格的に出てくる予定である。

 システム導入においても「EPC Appliance」として、標準的なソリューションパッケージが用意されている。ユーザー企業がスクラッチでシステムを開発する必要性を極力減らすために、Webサイトでの各種情報やナレッジベース(ノウハウ集)の提供、認定ベンダ(米国のみ)の指定といった、システム構築を支援する仕組みの整備が進み始めている。

●ユビキタスIDセンター

 ユビキタスIDセンターは、T-Engineフォーラム(組み込み型リアルタイムシステムの開発用プラットフォームであるT-Engineアーキテクチャの研究開発、標準化を推進する非営利任意団体)内に設定された、「モノ」や「場所」を自動認識するためのID体系「ucode」の構築、およびucodeを利用するための基盤技術の確立と実証実験の推進を行う組織である。

 日本でのRFID利用の大きな特徴である多様な分野での適用検討および実証実験は、ユビキタスIDセンターの取り組みにおいて顕著である。食の安心安全(トレーサビリティ)や、1つのICタグを流通管理、品質管理、店舗での商品情報提供サービスまでに多角利用する実験、自律移動支援プロジェクトにおける多数の実証実験、専用端末であるユビキタス・コミュニケータの開発、さらにはアジア圏の各国との協力事業の推進といった、EPCglobalとは異なった観点でのRFIDの実社会への適用に向けた活動を進めている。

 
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Index
進むRFID標準化と実証実験
Page1
普及期のRFID1.5、来るべきRFID2.0時代に備えよ
活発な2つのRFID標準化
  Page2
RFID1.5に向けた実証実験の活発な推進
  Page3
バーコードの課題を突破するRFIDの高機能化
  Page4
2006年はどのような年になるのか


RFID2.0時代に備えるRFID入門 連載インデックス


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