特集
1000BASE-Tへの移行で気になるコストと性能(前編)

1. 100BASE-TXから1000BASE-Tへの移行を考える

デジタルアドバンテージ
2003/02/26


10BASE-Tから100BASE-TXへの移行を振り返る

 1000BASE-Tの話をする前に、一世代前、つまり10BASE-Tから100BASE-TXへの移行がどのように進んだのかを振り返ってみよう。移行が始まったのは1996年中ごろのこと。実は7年も経っていないことになる。1996年当時の雑誌をひもといて見ると、100BASE-TXのPCIカードは2万円前後、8ポートのスイッチング・ハブは18万円前後という、いまでは考えられない価格だ。現在、大手周辺機器ベンダの販売価格は、PCIカードが約2000円、スイッチング・ハブが約5000円であることを考えると隔世の感がある。

 当時の10BASE-Tから100BASE-TXへの移行シナリオは、「解説:ギガビット・イーサネットへの移行を準備しよう」と同様、複数のクライアントからのアクセスが集中するサーバと基幹スイッチング・ハブの間(いわゆるビッグパイプ)を先行して100BASE-TXによって高速化するというものであった。その後、100BASE-T対応のネットワーク・インターフェイスや100BASE-TX対応ハブの低価格化が進むに従って、順次クライアントPC側でも100BASE-TXが使われるようになった。1998年ごろになるとLANの主流は、100BASE-TXになっていたように思う。当時はインターネット・ブームに後押しされたネットワークの普及により、100BASE-TX対応のスイッチング・ハブの低価格化が急速に進んだことも移行を加速させた。また、企業向けクライアントPCを中心に、100BASE-TXインターフェイスの標準装備が進んだことも理由として挙げられるだろう。

 さらに、10BASE-Tから100BASE-TXへの移行が順調だった背景として、当時のLAN環境を振り返る必要もある。日本ではLAN環境の整備が遅れたこともあり、1996年時点ではメインフレームと専用端末を接続するような社内LANが一般的であった。日本ではOSにネットワーク機能が標準搭載されたのがWindows 95からであったこともあり、社内LAN自体が整備されていない企業の方が多かった(それまではLAN ManagerやNetWareなどのネットワーク・クライアントのインストールが別途必要であり、ネットワーク対応の敷居は高かったといわざるを得ない)。つまり、100BASE-TXの普及期から、本格的な社内LANの整備が始めたところも少なくかった。こうした企業にとって、新規にLANを構築するのであれば、10BASE-Tに対して導入時は多少コスト・アップになっても、将来のスケールアップに対応可能な100BASE-TXを選択する、というのは自然な流れであった。

 すでに10BASE-Tを導入している企業にしても、100BASE-TXは10BASE-Tに対して上位互換となっていたので、取りあえず可能なところ(新規に導入するクライアントPC)から100BASE-TX化しておく、ということができた(100BASE-TXインターフェイスを装着して、10BASE-TXネットワークで使うことができた)。当時のクライアントPCは、ネットワーク機能を標準装備したモデルは少なかったので、前述と同じ理由で、将来的なスケールアップを見越して、カードを差すのならば100BASE-TX対応にしておこうという意識が強かったようだ。前述のように100BASE-TX対応のPCIカードは2万円前後と高価であったが、10BASE-T対応のカードにしても企業向けのブランド品では1万5000円前後もしたので、この価格差は導入の障害とはならなかった。

1000BASE-T移行のシナリオ

 では、100BASE-TXから1000BASE-Tへの移行はどうなるのだろう。すでにサーバについては、最新の製品ならば、ほぼ1000BASE-Tを標準装備している。企業向けのデスクトップPCでも1000BASE-Tを標準装備している機種が増えつつある。また、Intelのロードマップによれば、2003年後半にリリースされるクライアントPC向けチップセットから本格的に1000BASE-Tのサポートが開始される。つまり、新規導入に限っては、自動的に1000BASE-T化されることになる。イーサネット・ケーブルについては、多くの企業がカテゴリ5で敷設済みと思われることから、そのままで1000BASE-Tに移行できる(1000BASE-Tではエンハンスト・カテゴリ5が望ましいといわれているが、規格上はカテゴリ5で利用できる)。

 1000BASE-Tへの移行は、10BASE-Tから100BASE-TXへの移行時とは、LANの状況がかなり異なっている。しかし、100BASE-TXと互換性があることや、クライアントPCに標準搭載されるイーサネット・コントローラが順次1000BASE-Tに置き換わっていくことを考えると、基本的な移行シナリオはそれほど変わらないだろう。つまり、これらから新規導入するサーバやクライアントPCから順次1000BASE-T化し、ある時点でスイッチング・ハブを1000BASE-T対応に置き換えるというのが自然なストーリーとなりそうだ。すでに導入済みのサーバやクライアントPCについては、リプレイスまでの残り期間や用途に応じて1000BASE-T対応のイーサネット・カードを追加すればよい。むしろ、100BASE-TXへの移行時に比べて、イーサネット・カードやスイッチング・ハブの価格が安価になっていることから、より移行がスムースに進むかもしれない。

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1000BASE-T対応のメルコ製スイッチング・ハブ「LSW-GT-8W」
全8ポートが1000BASE-Tに対応した価格2万3500円のスイッチング・ハブ。付属の金具によりラックマウントにも対応している。

 問題は、スイッチング・ハブをいつ1000BASE-T対応に置き換えるか、である。まず、トラフィックが集中するサーバ周辺から1000BASE-T対応にするというのは分かりやすい導入法だ。クライアントPC側においても、100BASE-TX対応よりも1000BASE-T対応の数が増えた時点で、スイッチング・ハブのリプレイスを検討すべきかもしれない。また、16ポートや24ポートといった企業向けの1000BASE-T対応スイッチング・ハブの価格に値ごろ感が出てきた時点が、もう1つのタイミングといえるだろう。8ポートのスイッチング・ハブは、安価な1チップのスイッチ・コントローラが登場したことを背景として、3万円程度(ポート単価で3750円)と安価になっている。ところが、全ポートが1000BASE-T対応の16ポート/24ポート製品となると、機種が少ない上に30万円前後(ポート単価で1万2500円)といまだに高価だ*1。16ポート/24ポート製品が10万円を切るようになると、税制上で一括償却が可能になったり、企業によっては部署内で決算ができたりするため、一般に企業導入が進むことになる。もちろん安価な8ポート製品をカスケード接続することによって、足りないポート数をカバーするという方法もあるが、ハブ内での遅延により事実上、接続段数の制限(機種によって段数は異なる)があるので注意したい。サーバ周辺に8ポートのスイッチング・ハブを導入し、16ポート/24ポートが10万円を切るようになった時点で1000BASE-Tに切り替えた方がよいだろう。

*1 16ポート/24ポート製品の価格が、8ポート製品に対して大幅に高いのは、企業向けという製品の性格から管理機能などが強化されていることや、キャッシュの容量が大きいこと、といった理由もある。

1000BASE-T移行にかかるコストを計算する

 1000BASE-Tの移行へのストーリーが見えてきたところで、移行にかかるコストを考えてみよう。新規導入のサーバやクライアントPCから順次1000BASE-T化するという前提ならば、必要になるコストはリプレイスが必要となるスイッチング・ハブの価格ということになる。8ポートのスイッチング・ハブでリプレイスが可能なLANならば約3万円×台数で済む。さらに導入済みのサーバやクライアントPCも1000BASE-T対応とするとなると、インターフェイス・カードの費用として、サーバ用で約1万円、クライアントPC用で約4000円が台数分だけ追加となる。例えば、サーバが1台、クライアントPCが19台の環境を、8ポートのスイッチング・ハブ3台を用いて、すべて1000BASE-Tに移行すると仮定した場合、その費用は17万6000万円となる。今後、1000BASE-T対応機器の価格がさらに安価になることや、新規導入で1000BASE-Tが標準装備したサーバやクライアントPCが増えることを考えると、このコストは下がり続けることになるだろう。

 1000BASE-Tの導入コストについては分かったが、1000BASE-Tがこうしたコスト増に見合ったパフォーマンスを提供してくれるかどうかも気になるところだろう。次ページからの後編では、さまざまなケースを想定して1000BASE-Tネットワークの性能テストを実施し、この疑問について検証していくことにする。


 INDEX
  [特集]1000BASE-Tへの移行で気になるコストと性能
  1.100BASE-TXから1000BASE-Tへの移行を考える
    2.1000BASE-Tの実力を計測する
    3.1000BASE-Tへの移行のメリット
 
 「System Insiderの特集」


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