特集:変貌するリッチクライアント
Yahoo WidgetやGoogle Gadgetにみる
CGUIの萌芽


野村総合研究所
技術調査室 
田中 達雄
2006/6/9

 リッチクライアントを取り巻く環境

 現在のリッチクライアントを取り巻く環境を見渡すと4つの変化が影響を与えていることが分かる(図3を参照)。特に2005年までは技術や製品に関する影響が目立ったが、成長期に入った現在は、適用分野や利用者の変化も大きく影響し始めている。

図3 リッチクライアントを取り巻く環境「出所:野村総合研究所」

 利用者の変化

 ここでは1つの例を示して利用者の変化について解説する。図4は米国金融企業の公開情報に基づいてチャネルごとの顧客コンタクト割合の傾向を示したグラフであるが、1998年と2005年の顧客コンタクトの割合の大きな変化が見て取れる。

 1998年は、コールセンターへのコンタクト割合も高く、コンタクトセンターのオペレータには、短時間で多くの処理をこなす処理効率が重視されていた。また消費者には、簡単に処理できる簡易性が重視されていた。

 それに対して2005年には、Webからのコンタクト割合が急増し、コールセンターへのコンタクト割合は減少している※(これにはいくつかの理由があるが、金融企業側が多くの処理をWebから利用可能にしていることもその一因となっている)。

図4 利用者が求めるエクスペリエンスの変化「出所:野村総合研究所」

 消費者側では、いままでコールセンターのオペレータに頼んでいた処理を消費者自らが処理するようになり、簡易性だけでなく、効果的、発見性、自己解決力などもユーザーインターフェイスに求められるようになってきた。

 またコールセンター側では、より複雑な処理や質問、アドバイスを求める消費者への対応が求められるようになり、単に処理効率だけなく、解決力、発見性、コミュニケーション性がユーザーインターフェイスに求められるようになってきた。

 このように消費者、企業ユーザーどちらに対しても必要とするユーザーエクスペリエンス(ユーザーインターフェイスを通じたユーザー体験)に変化が表れている。この傾向はインターネットの普及や消費者マインドの変化とともにますます強まり、競合他社との差別化を図るうえで大きな役割を果たすことになるだろう。


 ユーザーエクスペリエンス(ユーザー体験)とは

 今後競合他社との差別化を図るうえで重要となるユーザーエクスペリエンスとは何かを定義しておこう。ユーザーエクスペリエンスとは、ユーザーがユーザーインターフェイスを通じて感じる印象や体験、機能を指しさまざまな要素が含まれる(図5を参照)。

 従来、企業ユーザーには効率性が、消費者にはエンターテインメント性や簡易性が求められていたが、現在、これらは複合的で個人ごとに多様化していく。5月18日に野村総合研究所が発表(参照:リリース)したCGUI(Consumer Generated User Interface)は、こうした利用者の変化に即した必然的な現象として予測したものである。

CGUI(Consumer Generated User Interface:ユーザーによるUI生成, )とは:

CGMとは、ブログやSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)など、インターネットの利用者自らが情報を作り公開することを意味します。この動向を踏まえて、NRIでは利用者自らがユーザインターフェースを作り、公開すること。

ただし、サービスの供給側がWeb APIというインターフェースを公開していることが必要。


図5 ユーザーエクスペリエンスの種類「出所:野村総合研究所」

 利用者が求めるユーザー体験の方向性は、幅、深さ、パーソナル化の3つの方向性がある。それぞれ重要な要素であり、今後のリッチクライアントには、これらを実現する能力が求められることになる(表1)。

 リッチクライアントの中には、幅広いユーザーエクスペリエンスを実現可能なオールマイティなものと実現幅が狭い特化型のものがある。両者の優劣は現時点では、ユーザー企業の事情によって異なるが、将来的にはユーザーエクスペリエンスの多様化に伴いオールマイティなリッチクライアントが優位に立つとみている。

ユーザーエクスペリエンスの実現幅 現実の自由度 技術の複雑性 必要なスキル 利用者の再教育コスト
広い 高い 複雑 高い 低い
狭い 低い シンプル 低い 高い
表1 ユーザーエクスペリエンス実現幅と長所短所「出所:野村総合研究所」

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 INDEX

Yahoo WidgetやGoogle GadgetにみるCGUIの萌芽
  Page1<SOA、Web 2.0、SOX法とリッチクライアントの関係>
もう一度、リッチクライアントとは/これまでのリッチクライアント
Page2<リッチクライアントを取り巻く環境>
利用者の変化/ユーザーエクスペリエンス(ユーザー体験)とは/Webを取り巻く環境の変化/情報発信者の多様化
  Page3<Web 2.0による影響>
CGMとの比較ではCGUI領域はまだまだこれから





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