Insider's Eye

Windows XP RC1 日本語が登場

.RC1に見るHailStorm始めの一歩

デジタルアドバンテージ 小川誉久
2001/08/03

 マイクロソフトは、同社が提供する無料メール・サービスのHotmailやインスタント・メッセージングのMSN Messengerを利用する際の認証を始め、他社も含めたインターネット上の情報サービス向け認証サービスを提供することを目的として、Passportと呼ばれるサービスを提供している。Windows XPでは、あらかじめ設定しておくことによって、Windowsシステムへのログオンと同時に、このPassportにも自動的にサインインできる機能が追加されている(詳細は「Insider's Eye:Windows XP日本語版クイックツアー 4.初心者を意識したユーザー管理」を参照のこと)。

 このための設定を行うウィザードは、以前のベータ2では単に「Passport」と呼ばれていたが、今回のRC1からは、これが「.NET Passport」と名前が変更されている。

.NET Passportウィザード
Windows XPのユーザー・アカウントとPassportアカウントを連動させ、XPへのログオンと同時にPassportへのサインインも透過的に行えるようにするのがこのウィザードの役割である。ベータ2までは単に「Passport」と呼ばれていたものが、今回のRC1からは「.NET Passport」に変更された。将来のMicrosoft .NETやHailStormに向けた第一歩が、このWindows XPで始まるということだろう。

 マイクロソフトが将来の新しい情報環境に向けて現在開発を進めるMicrosoft .NET(マイクロソフト・ドットネット)では、ネットワークが現在よりもいっそう透過的なものになり、ネットワークの存在を強く意識することなく、クライアントからネットワークの先にあるアプリケーションやコンテンツを利用できるようになる。マイクロソフトは、将来のビジネスのターゲットをこうした「オンライン・サービス」に絞っており、将来バージョンのOfficeは、パッケージを販売してローカル・ハードディスクにインストールしてもらう伝統的な形態ではなく、ネットワークを経由した購読サービス(subscription service)に切り替えると宣言している。しかしこれでビジネスを成立させるには、ユーザー認証や課金のメカニズムが欠かせない。来たるべき.NET時代において、こうしたサービスを可能にするのが将来のPassportの役割である。「Passport」の呼称が「.NET Passport」に変更された背景には、Windows XPを次世代の新しい情報環境に向けた足がかりにしたいという意思の現れだろう。

 さらにマイクロソフトは、各種個人向けの統合情報サービス(Webサービス)と、それらを利用するためのネットワーク上の情報ストレージとを提供し、個人情報に基づく高度な情報サービスを利用可能にするHailStorm(ヘイルストーム)と呼ばれる計画も進行中である。具体的にこのHailStormは、myContacts(住所録管理)やmyCalender(スケジュール管理)、myInbox(電子メール)などのコンポーネント(マイクロソフトは「ファシリティ」と呼んでいる)で構成されており、ユーザーはこれらHailStormのサービスを利用することで、個人情報などをネットワーク上で管理し、どこからでも参照できるようにすると同時に、ソフトウェアがこれらの情報にアクセスできるようにする(もちろんこの際でも、個人情報に対するアクセスには、本人の許可が必要である)。これにより例えば、myCalenderの情報を使って、旅行予約Webサービスがスケジュールの空きを見て出張プランを練るなどが可能になる(HailStormの詳細については、マイクロソフトが公開しているドキュメント「HailStorm入門」を参照されたい)。

 Windows XP RC1日本語版には、日本語対応されたMSN Explorerが搭載されていた。このMSN Explorerは、マイクロソフトが運営しているインターネット情報サービス、MSN用のフロントエンドとして開発されたもので、Hotmailやメッセンジャーなど、MSNの各種サービスを統合的に操作できる分かりやすいインターフェイスを提供する。原稿執筆時点(2001年8月上旬)では、MSN Explorerの日本語対応版はインターネット上では公開されてない。しかしWindows XP RC1日本語版をインストールしてみると、MSN Explorerの日本語版が搭載されていた。これを実行してみたところ、米国でもまだサービスが開始されていないカレンダー機能などを実際に使うことができた。

RC1日本語版に搭載されたMSN Explorer
インターネット上ではまだ公開されていないMSN Explorer日本語版が搭載されていた。試しに起動すると、日本語版のカレンダー・サービスなどを利用することができた。

 簡単に触ったところでは、このサービスでは、スケジュールの管理(カレンダー)やToDoの管理(仕事)、メッセンジャーを利用した通知(通知)、メモの記録などを行える。簡単に言えば、Office製品の1つである個人情報管理ソフトウェアのOutlookに相当する機能が利用できるわけだ。実際、画面の[インポート]の部分からは、Outlookデータのインポート機能(PCに保存されているOutlookデータをMSN Explorer側に転送して利用する機能)が用意されていた。まだWebサービス化はなされていないものの、個々のサービス自体は、HailStormが目指すサービス・コンポーネント(サービス・ファシリティ)に相当するものである。

 このことから想像するに、Windows XPでは、このMSN Explorerを通じてWebアプリケーション版の個人情報サービスを浸透させ、しかるべきタイミングでこれをWebサービス版のHailStormに移行させるものと思われる。HailStormについては、2001年10月末に米国で開催されるプログラマ向けカンファレンスのMicrosoft Professional Developers Conference(PDC)2001で大々的に情報が公開されると噂されている。逆に言えば、それまでは、HailStormに関する新情報は得られそうにないと踏んでいた。しかし意外なところで、HailStormの一端に触れることができた。

関連記事(Windows 2000 Insider内)
Windows XP日本語版クイックツアー 4.初心者を意識したユーザー管理
 
関連リンク
HailStorm入門
  

 INDEX
  [Insider's Eye]Windows XP RC1 日本語が登場
    1.チューニング・フェーズに入り、パフォーマンスはベータ2から向上
  2.RC1に見るHailStorm始めの一歩
    3.XPの真価はセキュリティ機能にあり?
 
「Insider's Eye」


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