特別企画
グループウェア動向インタビュー


コラボレーションツール見直しのポイント

唐沢正和

2010/6/28


ITコストの削減や、内部統制をはじめとするコンプライアンス対応などを目的に、企業ではグループウェアやコラボレーションツールを見直す動きが進んでいる。ツール選びの勘所をアイ・ティ・アールの舘野真人氏に聞いた。(→記事要約へ)

コラボレーションツールはどう選ぶ?

 現在、グループウェア/コラボレーションツールとしてIBMの「Lotus Notes/Domino」を活用する企業が多いのではないだろうか。今年3月にITmedia エンタープライズとアイ・ティ・アール(ITR)が実施した調査でも、企業で最も利用されているツールは「Lotus Notes/Domino」という結果が出ている。

- PR -

 ただ、その満足度については、総合的に高い評価を得ているものの、コストや運用管理面、サポートなどにおいては平均以下の評価である。近年の経済不況にともなうITコストの削減、コンプライアンス対応に向けた内部統制や情報保護の観点から、グループウェア/コラボレーションツールの見直しを検討する企業も増えつつあるのが実状だ。

 では、グループウェア/コラボレーションツールのリプレースに向けてのポイントはどこにあるのだろうか。「単にツールを新しいものに入れ替えるだけではメリットは少ない。これからリプレースするならば、従来のような部門レベルでの情報共有にとどまらず、企業全体としての組織のあり方や将来的なビジネスの進め方まで見据えた上で、より大きな視点で考えていくべきだ」とITR シニアアナリストの舘野真人氏は指摘する。

 例えば、チームワークを重視してビジネス展開する企業であれば部門内のコミュニケーションをより強化するツールが求められる。商社のように営業マン一人一人が取引先とつながってビジネス展開していく企業であれば、社外とのコラボレーションを安全かつ円滑に実現できるツールが重要になってくるという。

クラウド基盤でリアルタイムコミュニケーションを実現

 このように多様化するニーズに柔軟に対応するべく、今注目を集めているのが、クラウド環境を基盤にしたSaaS型のグループウェア/コラボレーションツールである。

ITR シニアアナリスト 舘野真人氏

 「SaaS型のグループウェア/コラボレーションツールは、インスタントメッセージングなどのリアルタイムコミュニケーション機能を備えている点がオンプレミスのツールとの大きな違いである。特に、VoIPを活用したボイスチャット機能は、オーラルコミュニケーションとグループウェア/コラボレーションツールとの統合を加速するキーポイントになるだろう」(舘野氏)

 ボイスチャットを利用することで、1つのドキュメントファイルをグループで共有し、意見を出し合いながら修正したり、マインドマップを共同で作成するといった、会話を通じたリアルタイムでのコラボレーション作業が容易に行えるようになる。

 さらに、IP-PBXやWeb会議システム、コンタクトセンターなどの企業内通信サービスをクラウド環境で提供するCaaS(Communication as a Service)を導入することで、メールからドキュメントファイル、リアルタイムの音声会話までをすべて1つのコラボレーション基盤に統合することも可能だという。舘野氏は「日本では、内線の文化が根付いているため、従来のPBXと固定電話が企業から完全になくなることはないが、将来的には、VoIPによるボイスチャットを備えた新たなグループウェア/コラボレーションツールが企業のコミュニケーション基盤の中核を担っていくことになるはず」と強調する。

 グループウェア/コラボレーションツールのリプレースにおける、もう1つの方向性として舘野氏は「デバイス主導で進んでいく可能性もある」との考えを示す。iPhoneやiPadなどの携帯デバイスが普及し、Wi-Fiの通信環境がさらに整備されれば、企業におけるコミュニケーション端末として活用したいというニーズも高まってくるだろう。「これらのデバイスと連携して動作するグループウェア/コラボレーションツールがさらに求められるはずだ」と舘野氏は話す。

 今、グループウェア/コラボレーションツールのリプレースを検討している企業は、運用コスト削減やコンプライアンス対応といった経営課題解決からのアプローチに加え、クラウドやVoIPなど最新ITによるリアルタイムコミュニケーションも視野に入れて、コラボレーション基盤の構築を目指す必要があるだろう。

(編集部よりお知らせ)
来る7月2日に、企業でのグループウェア導入のヒントとなるセミナーイベントが開催されます。今回話を伺ったITRのシニアアナリストである舘野真人氏が基調講演に登壇し、「現在企業の情報活用に何が足りないのか」について解説します。参加登録、詳細情報はセミナー概要ページで。

関連リンク

■要約■
経済不況にともなうITコストの削減やコンプライアンス対応、組織再編成などの観点から、グループウェア/コラボレーションツールの見直しを検討する企業が増えつつある。

グループウェア/コラボレーションツールのリプレースのポイントとして、ITR シニアアナリストの舘野真人氏は、従来のような部門レベルでの情報共有にとどまらず、企業全体としての組織のあり方や将来的なビジネスの進め方までを見据えた上で検討すべきだと指摘する。企業の業種や規模、部門によってコミュニケーションのあり方は異なるため、それぞれに合ったツール選びが不可欠だという。

多様化するニーズに対応するべく、今注目を集めているのが、クラウド環境を基盤にしたSaaS型のグループウェア/コラボレーションツールである。インスタントメッセージングなどのリアルタイムコミュニケーション機能を備えているのがポイントだ。また、iPhoneやiPadなどの携帯デバイスの普及によって、これらを企業におけるコミュニケーション端末として活用したいというニーズも高まってくるという。

企業は、さまざまな場面を想定しながら、最適なコラボレーション基盤の構築を図るべきであろう。
記事の先頭に戻る

この記事に対するご意見をお寄せください managemail@atmarkit.co.jp

キャリアアップ

@IT Sepcial
@IT Sepcial

「ITmedia マーケティング」新着記事

無料で使えるWebフォーム作成管理システム nocoが「ヘルプドッグ フォーム」を提供開始
直感的なUIと豊富なテンプレートでフォーム作成にかかる時間とコストを大幅に削減。フォ...

「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2024年5月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...

ビービット、FPTジャパンホールディングスと共同で生成AI活用PoCを支援する高速・低価格パッケージを提供開始
生成AI活用アイデアの実現性や有用性を迅速に検証し、サービスの方向性・実装を判断する...