新ブランド『IBM Rational』の勝算

2003/5/28

日本アイ・ビー・エム 常務執行役員 ソフトウェア事業担当 堀田一芙氏

 日本IBMから買収後初となるRationalブランドの製品が発売される。ブランド名は「IBM Rational」。新製品は、アジャイル開発を支援する開発ツール「IBM Rational Rapid Developer」とIDEと連携できるワークベンチ「IBM Rational XDEファミリー」、および開発方法論「RUP」(Rational Unified Process)の機能強化版である。

 Rationalブランドは、「WebSphere」「DB2」「Lotus」「Tivoli」という4大ブランドの上位に位置する開発環境を包含することになる。日本アイ・ビー・エム 常務執行役員 ソフトウェア事業担当 堀田一芙氏は「サービス事業を誘発するミドルウェア群が本格的にそろってきた」とコメントした。ラショナルブランドを組み入れることで、同社のソフトウェアビジネスは、開発の初期段階からシステム間の統合まで文字通り“一気通貫”で行うことが可能となったのだ。一方で、同社はハードウェアのビジネス、コンサルティングビジネスという両翼も備えている。1社独占の囲い込みと揶揄(やゆ)される可能性はさらに高まるが、同社ではそれぞれの製品あるいはソリューションを支える技術基盤を「オープン」で築くと表明することで、1ベンダの独占状態という非難をかわす道を確保している。

 ミドルウェア群と開発環境(独自の開発方法論も含む)を手に入れることで実現するビジネスのあり方こそ、東京三菱銀行を第1号の顧客とした「エンタープライズ・アーキテクチャ」と呼ぶ手法に基づく大規模なサービスである。従来のアウトソーシングと異なるのは、システム構築の投資を経営の視点から厳しく審査し、長期的なスパンで顧客企業に対し、システム構築、運用という観点からかかわっていく点だろう。顧客企業の経営戦略に対して、「ほとんどパートナーとして」(東京三菱銀行 常務取締役 システムサービス部門長 兼 オペレーションサービス部門長 田中將介氏)参加することになる。

 大規模かつ長期間の開発案件において、Rationalブランドの製品が果たす役割は、実は“サービス事業者”としてのIBMにとってこそ有効に作用するのではないだろうか。もちろん、中期的な視野でみれば、同社のビジネスパートナー、長期的な視点でみれば、顧客企業ということになるだろうか。製品開発のスピード向上、品質の向上を目指すRational製品は、UMLを活用したモデルベースの開発スタイルを推進するうえで、リーディング・エッジとなる位置付けを持っている。開発スタイルの変化という事態に対し、市場全体はいまだ緩やかな変化を意識し始めたといった段階だが、数年先を考えれば、IBMにとって高い買い物ではなかったという結論が出るかもしれない。ミドルウェア、開発工程という日の目を見なかった分野にこそ、ビジネスを成功させる鍵が潜んでいることにIBMが気付いたこと、そしてそれが実際のビジネスで動き始めたことには大きな意味があるだろう。

 なお、同日、DB2ブランドからは企業向け情報統合ソフトウェア「DB2 Information Integrator 8.1」を7月11日に出荷すると発表した。

(編集局 谷古宇浩司)

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