再建目指すカネボウ、モバイル活用は先進的

2004/2/19

 産業再生機構への支援を要請するなど、最近話題のカネボウ。しかし、カネボウは全国7000人の女性販売員に活用されるモバイルソリューションを展開したことでも有名だ。マイクロソフトが主催したセミナー「営業革新エグゼクティブセミナー」で、カネボウの化粧品事業本部 吉住進二氏が同社のモバイル活用を説明した。

カネボウの化粧品事業本部 吉住進二氏

 カネボウは化粧品の販売網として全国にチェーン店を組織。そのチェーン店で商品を販売する「ビューティカウンセラー」(BC)の「技能、能力によって会社の売り上げが左右される」(吉住氏)という状況で、BCの商品知識や販売戦略への理解、カウンセリングスキルなどを、どう向上させるかが課題になっていた。

 BCは接客などメインの仕事のほかに、商品やファッショントレンド、販促など最新情報の入手と、メークアップなど技術の習得、本部への報告などの業務がある。しかし、報告などはBCにとってどちらかというと後ろ向きの業務で、「負担を軽減したいと思っていた」(吉住氏)という。また、メークアップなどは月に1、2度の集合研修で習得することが多かったが「効率的ではない」という思いがカネボウ本部にはあった。

 そこで吉住氏らが立てた方針は、「全国のBCに最適なコンテンツを分かりやすく、ダイレクト、スピーディ、タイムリーに伝達する仕組みの構築が必要」という内容。これまで本部からBCへの一方通行で、その効果もイマイチだったコミュニケーションを、映像ベースにして情報交換ができるようにすること。本部から支社、チェーン店、BCへと情報が階層的に流れるのではなく、本部からダイレクトにBCに伝わること。売り上げが伸びている販売店の事例や旬の話題など、BC間での情報共有を活発化させることなどに開発の視点が置かれた。

 ITに親しんでいないBCも多いと考えられたことから、情報配信の受け皿にはマイクロソフトのモバイルプラットフォーム「Pocket PC」に対応した富士通のPDA「Pocket LOOX」を採用。トップからのメッセージや新商品情報、メイクアップテクニック、売り場の好事例などをコンテンツとして各BCに配信した。コンテンツは映像がほとんどで、テレビ感覚で見られるようにした。コンテンツはデータセンターからPocket LOOXに夜間に配信し、BCは必要なときに見られる。コンテンツはPocket LOOXのInternet Explorerで閲覧し、Pocket LOOXのほかの機能は利用できない。ボタンをクリックするだけで利用できるようにしたことで、BCに対するトレーニングを不要にし、わずか3週間で全国展開できたという。

 モバイル導入によって、BCはメインの業務である接客に集中できるようになった。カネボウのトップからは「販売に必要な情報をスピーディに伝達・徹底できるようになった」「POSデータでは分からないマーケットの動向が把握できた」など評価する声が上がり、現場からは「好事例やカリスマBCの裏技を参考にして売り上げアップにつながった」「いつでもどこでも学習でき、自信を持って商品を推薦できるようになった」などの声があった。

 吉住氏は「技術よりも情報をどう使うかがポイント。行動やワークスタイルを変えていく方法を考えていく必要がある」と述べた。カネボウの再建は、さらなるITの活用にかかっているといえるだろう。

(編集局 垣内郁栄)

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