佐々淳行氏が語るIT時代の危機管理

2006/7/22

初代内閣安全保障室長 佐々淳行氏

 SAP BUISINESS SYMPOSIUM'06(主催:SAPジャパン)で講演した佐々淳行氏(初代内閣安全保障室長)は、企業経営における危機管理のポイントを自らの豊富な経験をもとに紹介した。

 企業の危機管理を考えるときに最も重要な要素は「情報」である。ゆえに情報技術に関する深い知識と現場の業務知識を備えた人々(=佐々の講演の聴衆)が企業の危機管理を担う役割は非常に大きい。佐々氏は聴衆に向かって「トップに対する翻訳官になってほしい」と訴える。

 10年前と比較すれば、ITリテラシーを有する企業経営層の数は格段に多くなった。しかし、それでも大多数の企業経営層は情報技術の動向に疎い。佐々氏は「経営層の役割は、高度な専門機器を使いこなすことではなく、専門知識と技術を持つ優秀なスタッフをいかに使いこなすかにある」し、現在、企業の中枢を担う30〜40代に対し、専門の技術用語をうまく「翻訳」して、トップに伝えるプレゼンテーション能力を磨くべきだと話した。

 そして、トップに伝えるべき情報は「良い情報」よりも「悪い情報」であるべきだとした。現場の悪い情報をトップにあげる仕組みを構築することは、企業が直面する危機を管理うえで喫緊の課題である。雪印食品の倒産やシンドラーエレベータの問題はトップに情報が届いていなかったことに大きな要因があると佐々氏はいう。

 また、危機管理においては、ハイテクノロジとローテクノロジを混在した環境を構築すべきだと提言した。

 いささか古い話だが、佐々氏が内閣安全保障室長に就任した当時、ホワイトハウスなどを視察して、その情報通信システムの先進性に驚倒したという。当時の合衆国大統領レーガン氏は自他ともに認めるコンピュータ嫌いで、重要事項の決定を行うミーティングルームはコンピュータの影もない仕様で設計された。ただし、その横の「サポートルーム」と呼ばれる部屋には常時70人ほどの専門スタッフが待機しており、レーガン大統領が押すボタン(「彼には3つのボタンしか押させなかったらしい」と佐々氏はいう)によって、米国中のあらゆる場所と通信可能なシステムを構築していた。このような最新鋭のシステムに加えて、必ず代替の(オルタナティブな)通信システムが用意されていた。例えばアナログ電話がそれにあたるだろう。

 「ITを過信してはいけない」とし、ハイテクのオルタナティブソリューションとしてのローテクの大切さを、佐々氏はあらためて強調した。

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佐々淳行Webサイト

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