サン・マイクロシステムズ会長ダン・ミラー氏インタビュー

「イノベーションを続けているのはアップルとサンだけ」、日本サン会長

2007/01/18

 現在コンピュータ業界全体でイノベーションを続けている企業は2社しかない。1つはiPodを提供する会社。もう1つはエンタープライズ分野のサン――。サン・マイクロシステムズ日本法人の会長で米サン・マイクロシステムズのシステム担当上級副社長も兼務するダン・ミラー氏が同社の基本戦略を語った。

sun01.jpg サン・マイクロシステムズ 会長で米サン・マイクロシステムズのシステム担当上級副社長も兼務するダン・ミラー(Dan Miller)氏

――昨年7月の人事で日本法人の代表取締役社長から代表取締役会長に就任しましたが、職務内容の変更は?

ミラー氏 メインの仕事としては、グローバルサーバビジネスを監督しています。ただ、これまで日本法人の社長として膨大な時間とエネルギーを投資してきましたので、日本のサンの社員やお客様との関係を維持していきたいと思っています。

――米国では業績が好調です。日本についてはいかがでしょうか。

ミラー氏 米国では過去3四半期の業績でIBM、HP、デルより高い成長率となっていて、年率10%の成長を遂げています。日本ではやや遅れていますが、景気動向は日本と米国で数年の差がありますから、いずれ日本もこのトレンドに追随すると思っています。私が3年半前に日本に来たときには、日本サンの業績は落ち込んでいましたが、いまは完全に回復しました。

――業績回復の理由は何だとお考えですか?

ミラー氏 基本に立ち返ったからだと思います。特にR&Dを続けたことが有効でした。

 4、5年前のことですが「サンはR&Dに投資しすぎている」とか、「イノベーションに固執しすぎている」という批判を頂きました。しかし、私はこれは正解だったと思います。現在市場でリーダシップを持つことができたのは、R&Dへの投資を続けたおかげだったと思います。

 現在コンピュータ業界全体でイノベーションを続けている企業は2社あると思っています。1つはiPodを提供する会社。もう1つはエンタープライズ分野のサンです。

――業績回復にはx86サーバ製品の好調さが貢献しているのでは?

ミラー氏 おっしゃるとおりです。3年前にAMDとともにx86サーバのWebインフラビジネスに参入し、四半期ごとに5割以上の成長を遂げています。確かにサンの成長はハードウェアが大きな部分を支えているのですが、われわれの最大の強みはSolarisです。

 現在サンはx86ベースとRISCベースの2つの命令セットのラインを持っています。RISCは、SAPやオラクルといった大型のエンタープライズアプリケーション向けで、AMDを使ったx86サーバはWebインフラやHPCビジネス用途となっています。もちろん1つの命令セットで済めば最もシンプルなのですが、それではすべてのコンピューティングニーズに対応できません。

 例えば今週、新幹線に乗ったとき「これでどこにも行ければいいな」と思ったのですが、東京都内全域に新幹線を走らせるわけにはいきません。ある場面では自転車がもっとも有効な交通手段になるケースもあります。コンピューティングについても、こうした用途別製品ラインナップは重要です。交通手段の比喩(ひゆ)でいえば、われわれはタクシーから新幹線までを提供していますが、自転車を作らない、ということになります。なぜなら、これ以上、どうやって自転車をよくしていいのか分からないからです。

――自転車というのは、例えばx86ベースのLinuxサーバでしょうか。

ミラー氏 ええ、Linuxは市場で一定の地位を占めていると思いますが、あくまでもテスト環境や小規模向けです。大規模なエンタープライズ用途やミッションクリティカルなサービスではSolarisに軍配が上がると思います。実際、昨日は大手製造業、今日は電話会社の方とお会いしましたが、ミッションクリティカルと言えば、やっぱりSolarisだと言っていただいています。

 ガソリンに例えると、x86サーバとRISCサーバの関係は、こうなると思います。ガソリンというのは提供企業によって質は変わりません。しかし、油田開発や精製過程といった面では、まだ非常に多くのイノベーションが起こっています。x86サーバはコモディティ化したガソリンのようなものです。

 似たようなたとえですが、地元のガソリンスタンドで使うコンピュータなら、HP、デル、IBMなどから安いコンピュータを調達するでしょう。でも、石油会社が油田開発のために衛星システムや掘削機、地震観測といった最新技術を用いるとなれば、そのシステムにはサンの製品を選んでいただけると思います。

――具体的にイノベーションとは?

ミラー氏 例えば、CMT技術(Chip Multithreading Technology)です。マルチコアCPUは2〜3年前にはあまり受け入れられていなかったのですが、現在は非常に普及が進んでいます。われわれはすでに8コアで各コアが4スレッドを並列実行するという32スレッド同時実行可能なUltraSPARC T1をリリースしていますが、今後64スレッドへ移行しようとしています。一方インテルは、やっと2コアや4コアのプロセッサを出したばかりです。この点で、われわれの立場は有利だと考えています。また、次世代プロセッサとして“Rock”と呼んでいるものがあります。この世代交代によって10〜15倍の性能アップを見込んでいますが、通常のコンピュータの性能アップが十数%程度であることを考えると、これは非常に大きな性能の進歩です。

 こうしたイノベーションを進める一方で、標準化あるいはコモディティ化されたボリューム製品を提供することも重要だと思っています。Javaが好例ですが、イノベーションが起こると、次にその標準化が起こります。しかし、そこからさらに別のイノベーションが起こります。そうしいたサイクルのサイクルのスタート地点にイノベーションがあるわけで、われわれは、こうしたサイクル全体に関わって行きたいと考えています。

(@IT 西村賢)

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