「過去のHPはハードウェア会社、いまは……」

IT業界:7つの「過去といま」

2007/05/30

 日本ヒューレット・パッカードは5月30日、プライベートイベントの「HP WORLD Tokyo 2007」を都内で開催した。米HPのエグゼクティブ・バイス・プレジデントで、チーフ・ストラテジー&テクノロジ・オフィサーのシェーン・ロビソン(Shane V. Robison)氏は、IT業界を取り巻く「過去といま」を説明したうえで、HPが新しく掲げたテーマである「Business Technology」の有効性を訴えた。

hp01.jpg 米HPのエグゼクティブ・バイス・プレジデント シェーン・ロビソン氏

 BTは「IT自体がビジネスである」(ロビソン氏)の考えを基に、ビジネスの結果を最大化することを目的にITを組み立てることが特徴。買収した旧マーキュリー製品、OpenView製品の統合製品ブランド「HP Software」をマッピングした「Business Technology Optimization」、企業の意思決定を支援する「Business Information Optimization」で構成する。

 HPが経営寄りのIT戦略を打ち出す背景には、企業を取り巻くIT環境の変化がある。「IT自体がビジネスである」という側面はもちろん、エンドユーザーが主導する開発の隆盛や、IT予算に対する運用管理コスト比率の増大、プロジェクト成功率の低下などもある。ロビソン氏はIT環境が変わりつつあることを7つの「過去といま」を挙げて説明した。

 1つ目の「過去といま」はコンシューマ向けITとエンタープライズ向けITの差がなくなってきたことだ。過去にはその差は明確だったが、「SNSやマッシュアップを中核のビジネスツールとして使う企業が増えてきた」(ロビソン氏)ことで、「2つの世界は重なってきた」と見る。企業のCIOの間には、まだコンシューマITを色眼鏡で見る向きもあるが、ロビソン氏は「長期的な成功のためにはコンシューマITとエンタープライズITの結合を受け入れないといけない」と話した。

 2つ目はITシステムを使う目的の変化だ。ITを使う目的は過去は個人の生産性の向上だったが、いまは「コラボレーションとコミュニケーションにフォーカスしている」とロビソン氏は語る。「新たに作成するよりも、必要なものを見つけるほうが重要になっている」とも説明し、ITの役割変化を説明した。

 3つ目はハードウェアとソフトウェアの区別がなくなってきていることだ。HPが発表したデータウェアハウス(DWH)の専用サーバ「HP Neoview プラットフォーム」のように、ビジネス上の目的のために最適なハードウェア、ソフトウェアを柔軟に組み合わせる例が出てきている。ブレードサーバも標準技術を押さえたうえで、独自のハードウェア、ソフトウェア技術を組み込み、製品に特徴を持たせるケースが多い。標準技術に則りながらもハードウェア、ソフトウェアを一体にすることで総合的なメリットを生み出す考えだ。

 4つ目はネットワークを使う主体の変化だ。従来は「デバイスをネットワークにつなぐことが目的だったが、いまはユーザーをどうやって価値あるサービスにつながせるかが問われている」とロビソン氏は語る。さらに5つ目としてロビソン氏はSOAについて語った。これまで語られてきたSOAは「単なる流行言葉だった」と指摘、そのうえで「ようやく採用が始まってきた」と話した。

 6つ目、7つ目の変化はHP自身と、HPの今後の戦略についてだ。ロビソン氏は「HPは過去はハードウェアの会社だったが、いまはソフトウェアに真剣に取り組んでいる」と強調。さらに「かつてはITはビジネスをサポートするものだったが、いまはビジネスにパワーを与えるものだ」とHPの新戦略にからめて説明した。

(@IT 垣内郁栄)

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