サイボウズ元社長が米国で起業

新コラボサービス「LUNARR」が地球の“表と裏”でベータ開始

2008/02/07

 サイボウズ元社長の高須賀宣氏がCEOを務める米LUNARRは2月7日、新しいコンセプトのコラボレーションサービス「LUNARR」のベータ版を日米で同時に発表した。2007年10月に発表したアルファ版のコンセプトを継承し、新機能を追加しながらもユーザーインターフェイスをシンプルにした。高須賀氏は「日本人としてGoogleやAmazon.comのようなグローバルな会社を作りたい」と意気込む(アルファ版公開時の記事)。

lunarr01.jpg 米LUNARR CEOの高須賀宣氏。会場には元同僚、サイボウズ社長の青野慶久氏の姿も

 LUNARRはWebブラウザを使うコラボレーションサービス。現在は招待制。「ドキュメントという1つのテーマでメールをまとめる」(高須賀氏)というコンセプトで、現在のメール主体のコラボレーションの問題点の解決を目指す。メールを使ったコラボレーションではドキュメントの添付が多いが、そのドキュメントのバージョン管理が課題。同じ内容のドキュメントがメールサーバ上に複数存在することになり、効率が悪くなることもある。LUNARRは「ドキュメントの表と裏」という考えを導入し、コラボレーションをシンプルにする。

 LUNARRではドキュメントの実体はサーバ上に1つしか存在しない。画面上でドキュメントの右上をクリックすると、ドキュメントが“裏返り”メールの送受信画面が現れる。1つのドキュメントに関連する複数のメールを1画面で確認できるようになっている。ドキュメントのレビューをほかのスタッフに依頼する場合は、このメール画面を使ってドキュメントを送信する。ほかのスタッフはドキュメントを確認してメールに返信する。

 メールは複数存在することになるが、参照するドキュメントは1つしかない。ドキュメントとメールを常に連携させることで、コラボレーションの質とスピードの向上を図る。高須賀氏は「ドキュメントの表はパブリック、裏はプライベート」と説明した。メール画面ではドキュメントを共有するスタッフやドキュメントの変更履歴も確認できる。

 この基本コンセプトはアルファ版と同じ。ベータ版ではドキュメントの作成機能を強化し、ユーザーがより日常的に使えるようにした。ベータ版で利用できるドキュメントの作成機能は3つ。1つはWebページやWebアプリケーションのスナップショットを取り込む機能だ。取り込んだWebページはオンラインで編集したり、HTML形式で保存ができる。2つ目はファイルのアップロード機能。ローカルにあるMicrosoft Office文書や動画ファイル、音声ファイルをLUNARR上にアップロードして、ほかのスタッフと共有できる。

 特にOffice文書は、LUNARRにアップロードされるとFlashフォーマットに自動的に変換され、OfficeがないスタッフでもWebブラウザで閲覧できるようになる。Microsoft ExcelやPowerPointのファイルに対応する。これらのファイルの編集は一度ローカルにダウンロードして行う。しかし、Microsoft Wordのファイルについてはオンラインで編集できるワードプロセッサ機能を用意した。

lunarr02.jpg LUNARRでExcelファイルを表示。Flash形式に変更され、扱いやすくなる。右上の“ドッグイヤー”をクリックすると裏のメール画面になる

 3つ目はオンラインでドキュメントを作成できるスクラッチ機能。Wikiに似たツールとドキュメントのテンプレートがあり、オンラインでドキュメントを作成できる。また、ベータ版では既存のメールクライアントとの連携機能を追加し、LUNARRのメールとメールクライアントが同期できるようにした。

 ドキュメントの登録機能を用意することでLUNARRは既存の作業プロセスに容易に入り込めるようにした。しかし、高須賀氏は「(ドキュメント機能を)あんまりがんばるつもりはない。どんなドキュメントであろうと表と裏をくっつけるのがわれわれの役目」と話し、「ドキュメントとコミュニケーションを結合させることでベネフィットが得られる」と強調した。

 高須賀氏が狙うのは企業の情報システム部などによる一括導入ではなく、最新技術に敏感な一部ユーザーによる先行導入だ。企業の枠を超えてLUNARRの利用が広がれば、いずれ大きな流れになる。インスタントメッセージやSNSなど個人ユーザーが先行して利用し、結果的に企業や個人のコラボレーションを大きく変えた技術の存在が高須賀氏の頭にあるようだ。

 LUNARRは2009年に有償化して本格的な売込みを目指す。招待制にも関わらず昨年10月のアルファ版公開後、1200人が利用。ベータ版公開で2009年2月までに10万人のユーザー獲得を目指す。

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(@IT 垣内郁栄)

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