[Analysis]

ライブドアショックで分かった東証の弱点

2006/01/24

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 ライブドアに対し、1月16日に東京地検特捜部と証券取引等監視委員会による強制捜査が入り、同社の株価は5日連続でストップ安の売り気配が続いている。18日午後には、東京証券取引所(東証)が「売買注文が急増してシステム障害が発生する危険がある」として、東証1部、2部、マザーズの全銘柄の取引を強制的に停止する前代未聞の事態に陥った。こういった事態は世界的に見ても前例がなく、日本の証券取引を揺るがしかねない事件だ。なぜこのような事態に陥ったのだろうか。

 強制捜査が発覚した翌々日となる18日、IT関連企業株に売り注文が殺到し、午前の取引を終えた時点での約定件数が350万程度に増加。「約定件数が400万件を超える場合には、株式の全銘柄について取引を停止する」と事前通告したうえでの取引停止となった。

 東証は、2月をめどにシステム増強を終える計画で段階的にシステムの拡張を行っており、1月10日に注文受付ファイルの拡張やクラスタサーバの増設など実施し、1日当たりの注文件数の限度を750万件から900万件に増強、約定件数の限界も450万件まで拡張したばかりだった。ところが18日の約定件数は、午前中で350万件、午後に入って400万件を超え、システムが正常に動かなくなる恐れがあるとして、売買停止に追い込まれた。このとき東証は、「売買の注文を出す際に、細分化せずにまとめて発注するよう」に投資家や証券会社に要請した。なぜ、東証はこのような要請をしなければならないのだろうか。

 常時接続回線の普及やインターネット取引を中心とし、手数料の安い証券会社の登場によって、投資家は以前よりも手数料を気にせず取引が可能になった。金額や約定回数に関係なく、手数料を月額固定で提供している証券会社もある。極端な話、株価が購入時より1円でも上がった時点で売ることができれば、利益を出すこともできる。これを繰り返し、数分に1回の割合で約定していれば、1日当たり数百回約定させて利益を出す投資スタイルも十分あり得る。このようなスタイルの投資家が数万人いると、東証の約定回数は400万件を優に超えてしまうだろう。

 このような例は極端過ぎるとしても、株式のインターネット取引では従来の証券会社と電話でやりとりをして売買を行っている方法と比較して、約定回数が増えるのは当然だろう。こういった、証券会社や投資家の努力で生まれた新しい投資スタイルを、東証が抑制するような先の要請は、東証自らが新しい株式投資の可能性を否定しているように思える。

 ライブドアショックから1週間ほど経過した22日、東証は1月30日に予定されていた売買システムの増強を1週間前倒しし、1日の約定件数の上限を500万件、取引停止を発動する目安となる約定件数を400万件から500万件に引き上げた。しかし、投資家を安心させ、東京株式市場を円滑に運営するためには、1割程度の増強では不十分だろう。

 株取引のインフラである東証は、実際の約定数の数倍のキャパシティを持つべきであり、それこそが今回の事件で東証が失った信頼を回復させ、再び個人投資家や外国人投資家が安心して投資できる環境を提供できるといえる。今後、東証の抜本的な改革が大いに望まれる。

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