元麻布春男の焦点

明らかになるItanium 2の性能とプラットフォーム
――発表間近のItanium 2に迫る――

1. 大幅に性能が向上するItanium 2

元麻布春男
2002/06/25


 2002年夏の正式リリースを控え、Itanium 2(開発コード名:McKinley)関連の情報がかなり豊富に得られるようになってきた。さすがに、最も注目される「いつ(発表日)」や「いくら(価格)」といった情報は直前あるいは当日まで秘密にされるようだが、チップセットの情報、さらには得られるべき性能といった情報まで公開され始めている。また、IDFを始めとする各種のイベントでは、「参考出品」というただし書き付きではあるものの、Itanium 2を搭載した実機のデモンストレーションが「普通に」行われている。ここでは、こうしたItanium 2関連の情報をまとめておくことにしよう。

Itanium 2の改善ポイント

 Itanium 2は、Intelの64bitマイクロアーキテクチャに基づく第2世代のプロセッサ製品だ。つまり「第2世代のItaniumプロセッサ・ファミリ製品」ということになる。McKinley(マッキンリー)という開発コード名が与えられていたItanium 2の最大の特徴は、将来にわたる共通したプラットフォームの提供と、2001年5月30日にリリースされた第1世代のItanium(開発コード名:Merced)に対する大幅な性能向上の2点にある。

 下図は、最近IntelがItaniumプロセッサ・ファミリのロードマップとして公開しているものだ。この図の要点は、この夏にリリースされるItanium 2は、将来のMontecito(開発コード名:モンテシト)まで続くItaniumプロセッサ・ファミリの共通プラットフォームに対応した最初のプロセッサになる、ということだ。つまり、Itanium 2、Madison(開発コード名:マディソン)、Deerfield(開発コード名:ディアフィールド)、Montecitoの各プロセッサはピン互換性を維持する。図では、この共通プラットフォームがいつごろまで維持されるかを明記しなかったが、現時点では2005年までは維持される予定だ。Itanium 2のプラットフォーム(チップセット)には、Intelだけでなく、Hewlett-Packard、日立製作所、IBM、日本電気など多くのサードパーティが開発投資を行っている。一定期間にわたる共通プラットフォームの保証は、こうした投資の有効性を保護すると同時に、プラットフォームの成熟度を高めることにも寄与するものと思われる。

Itaniumプロセッサ・ファミリのロードマップ
Itanium 2からMontecitoまで同じプラットフォームが利用できることが約束されている。
 

ワン・ポイント
■Madison(マディソン)
0.13μmプロセスを用い、3〜6Mbytesのオンダイ・キャッシュを備えた第3世代のItaniumプロセッサ・ファミリ。小規模なマイクロアーキテクチャの改善も行われるという。すでに動作するシリコンが存在することをオッテリーニ社長が明言している。

■Deerfield(ディアフィールド)
Madisonと同じ0.13μmプロセスによる第3世代のItaniumプロセッサ・ファミリ。Madisonより容量の小さいオンダイ・キャッシュを備える。廉価版であると同時に、省電力版でもある。Madisonが、ItaniumやItanium 2がターゲットにしているのと同じアプリケーション(大型データベース、大規模科学計算など)をターゲットにしているのに対し、Deerfieldは若干異なる市場をターゲットにしたものと考えられている。

■Montecito(モンテシト)
90nm(0.09μm)プロセスによる第4世代のItaniumプロセッサ・ファミリ。しかるべき規模でのマイクロアーキテクチャの改善、あるいは追加が予定されている。Madisonの後継と、Deerfieldの後継の両方を兼ねるともいわれているが、詳細は不明。

 もう1つのポイントである高性能化について、IntelやそのOEMであるサーバ・ベンダは、Itanium用にコンパイルされたバイナリ(すなわちItanium 2用に最適化、あるいは再コンパイルされていない既存のバイナリ)ベースで、1.5〜2倍の性能を達成したとしている。そして、この高性能は以下の4つのポイントにより実現したとする。

  1. コア・クロックの引き上げ
  2. システム・バス帯域幅の拡大
  3. キャッシュ・システムの改善
  4. マイクロアーキテクチャの改善

 まずプロッセッサ・コアの動作クロック引き上げだが、Itaniumでは800MHzにとどまっていた最高動作クロックが、Itanium 2では1GHzに引き上げられる(25%の向上)。システム・バスも、64bit幅266MHz(133MHzベース・クロックのダブル・データ・レート)から、128bit幅400MHz(同200MHz)に向上した。データ転送レートでいうと2.1Gbytes/sから6.4Gbytes/sと、3倍向上したことになる。

レーテンシが大幅に改善された内蔵キャッシュ

 キャッシュ・アーキテクチャの改善で最も目立つのは、オン・ダイ化された3次キャッシュの存在だ。Itaniumでは、4Mbytesの3次キャッシュが搭載されていたものの、プロセッサ・パッケージ内に封入された外部メモリによるものであったため、プロセッサ・コアからキャッシュ・メモリへのアクセス時のレーテンシ(遅延)が20クロックと大きかった(帯域幅は11.7Gbytes/s)。Itanium 2では、容量こそ3Mbytesに減少しているものの、3次キャッシュがオン・ダイ化されたことで、レーテンシが12クロックへと大幅に縮小している。キャッシュ・メモリの帯域幅も32Gbytes/sと拡大された。

 加えてItanium 2では、1次キャッシュ(容量はItaniumと同じ32Kbytes)のレーテンシが2クロックから1クロックへと改善される。これにより、15〜25%の性能向上が得られるだけでなく、ロード遅延ペナルティの削減により、コンパイラのスケジューリングが簡易になるとしている(逆にいえば、Itaniumはスケジューリングの難しいプロセッサであった)。と同時に、2次キャッシュのレーテンシも12クロックから、5クロックへと向上している。また、容量もItaniumの96Kbytesから256Kbytesへと拡大された(帯域幅は64Gbytes/s)。いい換えればItanium 2の3次キャッシュは、Itaniumプロセッサの2次キャッシュ並みの短いレーテンシを実現しているということになる。2次キャッシュの容量拡大は、プロセッサの動作クロックの向上に伴い、分岐予測の失敗に対するペナルティが大きくなるのをカバーするためであるという。

Itanium 2で改善されたマイクロアーキテクチャ

 マイクロアーキテクチャの改善という点では、命令発行ポートの追加と実行ユニットの追加、の2つが大きなポイントだ。Itaniumプロセッサ・ファミリが採用するEPICアーキテクチャでは、同時実行可能な命令を3つ組み合わせた「バンドル」を単位に処理が進められる。ItaniumもItanium 2も、1クロック当たり最大2バンドルの処理能力を持っているため、最大1クロックあたり6命令の処理が可能ということに変わりはない。

大きな図へ
EPICアーキテクチャが採用するバンドル
図のように3つの命令+テンプレートで構成されたバンドルを単位として命令の実行が行われる。テンプレートには、バンドル内の命令の依存関係などが記述される。

 バンドルに収納された命令は、2バンドルを単位にDispersal Window(ディスパーサル・ウィンドウ)と呼ばれる命令発行ステージに進み、そこで命令発行ポートを経て命令実行ユニットへと送られる。もし、Dispersal Window内にある2つのバンドルの全命令が発行されてしまえば、次の2つのバンドルがバッファから読み込まれる(2バンドル・ローテーション)。しかし、もしどちらかのバンドルの命令が発行できない場合は、2バンドル・ローテーションを行うことができない。2バンドルのうち、最初のバンドルの命令発行が完了しない場合、それが完了するまでDispersal Windowの更新は止まってしまう。また、2番目のバンドルの命令発行が完了しない場合、2番目のバンドルが次のサイクルで最初のバンドルとなり、2番目の位置にバッファからバンドルが1つだけ読み込まれる(シングル・バンドル・ローテーション)。

 つまり、Itaniumプロセッサ・ファミリで高性能を得るには、バンドル内の命令をどんどん発行し、どんどんバンドル・ローテーションさせていくことが重要ということになる。Itanium 2で命令発行ポートと実行ユニットが増えた理由は、もちろんバンドル・ローテーションの促進にある。Dispersal Windowでバンドル内の命令は、ある種の分散ネットワークで命令発行ポートへと導かれるが、どのバンドルのどの命令スロットからも、クロスバー・スイッチのように等しく同じように命令発行ポートを利用できるわけではない。キャッシュ、実行ユニット、命令ポートなど、プロセッサ内のどのリソースにどれだけのシリコンを割くかというのは、プロセッサの性能全体から見るべき問題であり、完全なクロスバー・スイッチの採用はシリコンの利用効率的に必ずしも最善ではない、ということがこうした偏ったネットワークを採用する理由になっているようだ。

命令スロット(左側)と実行ユニット(右側)の関係
この図のようにすべての命令スロットが、すべての実行ユニットに命令を発行できるわけではない。
 
  MII MLI MMI MFI MMF MIB MBB BBB MMB MFB
MII                    
MLI                    
MMI                    
MFI                    
MMF                    
MIB                    
MBB                    
BBB                    
MMB                    
MFB                     
 
  Itanium 2が発行可能なバンドルの組み合わせ
  ItaniumとItanium 2の両方とも発行可能なバンドルの組み合わせ
表区切り
2つのバンドルの発行可能な組み合わせ
このようにItaniumに比べてItanium 2は発行可能なバンドルの組み合わせが増えてはいるものの、すべての組み合わせが可能なわけではない。

 Itanium 2では、命令ポート数をItaniumの9ポートから11ポートに増やし、実行ユニットの数そのものを増やしたことに加え、分散ネットワークのチューニングを、新しいアプリケーション・プログラムをベースに更新している(命令スロットと命令発行ポートの関係を見直している)。つまりバンドル・ローテーションが停止しにくくなっており、Itanium 2の大幅な性能向上に寄与している。

  関連リンク
Itanium 2の性能に関するニュースリリース
 
 

 INDEX
  明らかになるItanium 2の性能とプラットフォーム
  1.大幅に性能が向上するItanium 2
    2.大規模システムも可能にするItanium 2のチップセット
 
 「System Insiderの連載」

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