[WebSphere 2002 Tokyo開催]
分散コンピューティングとWebサービスとの微妙な違いは?

2002/6/14

 IBMがマイクロソフトと共に、“Webサービス”という言葉とコンセプトを市場に提示してからはや2年。Webサービスは着実に浸透し、その技術も発展してきた。現在、Webサービスはブームが一段落し、実際の利用を検討する段階に入りつつある。

 そのIBMで標準化活動に携わる東京基礎研究所 丸山宏工学博士が6月13日、開催中の自社カンファレンス「WebSphere 2002 Tokyo」において、改めてWebサービスについて、その定義や仕組みについて分かりやすく解説した。

 丸山氏は、米国やインド、ヨーロッパと世界をベースとしたIBMのグローバルなWebサービス推進ネットワークにおいて、日本で主にセキュリティ分野を担当している。丸山氏はWebサービスを、「XML、SOAP、WSDL、UDDIを使い、記述、公開、検索、呼び出しできる、自立し、自己記述的なアプリケーション」と狭義に定義し、その目指すところを以下のように述べた。「ビジネス環境がめまぐるしく変化する現在、システムにおけるビジネスプロセスの組み込みや変更に、従来のように1年もかけるわけにはいかない。サービスとして提供されているWebサービスを(半)自動的にビジネスプロセスに統合することにより、1週間や1カ月に短縮できる」(丸山氏)。電気や水のように、サービスとして安定して提供されるコンピューティングという点で、Webサービスもグリッドコンピューティングも同じゴールを目指すという。

 丸山氏は、そのWebサービスを実現する技術についての最新動向を紹介した。例えばUDDI。どんなWebサービスがあるのかを検索・発見できる技術で、2000年9月に同社とマイクロソフト、アリバの3社が策定した。現在、参加企業数は300社以上で、名前検索の“ホワイトページ”、業種検索の“イエローページ”、さらにはインターフェイス検索の“グリーンページ”と、3方法での検索が可能となるよう、ロゼッタネットやebXMLなどの業界団体とも協力して標準化を進めている。また、最新バージョンであるUDDI 2では、信頼性についても取り組みが進められた。これまで、UDDIに登録しているWebサービスの信頼性を保証するものがなかったが、“checked”分類体系を新たに導入、オーソリティの確認により、ある程度ではあるが信頼性の問題が改善されたという。最新バージョンは、日本IBMとマイクロソフトが共同で日本語訳を行った仕様書も入手可能という。

 さて、このように離陸に向け着実に準備を整えているWebサービスだが、「CORBAやRMIのようないままでの分散プログラミングとどう違うのか?」という基本的な疑問が根強くある。丸山氏はこれについて、「非集中化」という言葉を用いて答える。「CORBAやDCOM、RMIなどの分散プログラミングは、暗黙の了解として社内や組織内で使われ、インフラや設定、運用スケジュールなどは一元的に管理されているというのが条件だった。それに対し、“非集中化”プログラミングは、管理やセキュリティ、インフラが異なることを前提として、分散されている」(丸山氏)。そのため、“非集中化”プログラミングでは性能より相互運用性が、スピードよりレーテンシー(反応時間)が優先されるなどの違いがあるという。似て非なるものといえる両者だが、非集中化プログラミング=Webサービスではない。Webサービスは解のごく一部しか提供していないと丸山氏は言う。ちなみに、「非集中化」という言葉は、IBMとマイクロソフトがW3CのWebサービスワークショップで用いた言葉という。「格好の成功例はWWW。集中管理しているものではないが、よく機能している」と丸山氏は付け加えた。

 丸山氏が指摘したWebサービスの特徴で興味深いのが、ソフトウェアの再利用という点から見たWebサービス。「これまではコードの再利用だったが、Webサービスによりコードに付随して言語、プラットフォーム、管理などの再利用も可能」といい、Webサービスで「サービスの部品化が実現する」と続ける。

 最後に丸山氏はIBMの戦略として、相互運用性へのフォーカスを挙げた。IBMも設立メンバーの1社となっているWeb Services Interoperability(WS-I) Organizationを通し、真の相互運用性実現を目指し、プロファイルやベスト・プラクティス、テスト・ケースを提供していくという。「Webサービスの真の狙いはビジネスプロセスの統合・結合。ビジネスプロセスをいかに素早く結合するかという課題は、相互運用性の確保なしに解決しない」と述べた。

(編集局 末岡洋子)

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