レガシーが元気な日本はITガバナンスが必要、コンピュウェア

2004/11/18

 日本コンピュウェアは11月17日、「ITの可視化」をテーマとしたプライベートイベント「Compuware World」を都内で開催した。会場にはさまざまな製品デモ展示コーナーが開設されていたほか、「ユーザー事例トラック」など3トラック計12セッションの分科会が開かれた。ここでは、米コンピュウェア社上級副社長アンディ・タイタス(Andy Titus)氏のオープニングスピーチと、経済ジャーナリスト財部誠一氏が行った基調講演を紹介する。

米コンピュウェア社上級副社長アンディ・タイタス氏

 タイタス氏はまず、同社の製品開発コンセプトが「可視化」であると強調。これらは、同社の3つの柱である開発生産性、品質保証、性能管理に加え、2004年4月にチェンジポイントを買収したことによって手に入れた4つ目の柱「ITガバナンス」にも生かされているという。ITガバナンスソフトウェア「Compuware IT Governance by Changepoint」(ITG)と「Changepoint PSA」(PSA)の日本語版は、2005年4月に発売される予定だ。

 ITGとPSAは業務プロセスを自動化できるほか、プロジェクト管理や顧客管理などをまとめて管理可能にするソフトウェア。また、社内の業務を可視化できるため、経営陣が予算や人員配分する際のプロセスを効率化できるとしている。タイタス氏は、「ITGとPSAにより、当社は経営陣向けの武器を手に入れた」と語っている。

 タイタス氏は「新製品開発など新たな利益を生む業務は21.8%であり、残り78.2%はサポートやメンテナンスなどの既存価値の維持業務となっている」というガートナーの調査結果を例示した。この数字を受けて同氏は「メインフレームやレガシーはまだまだ元気でいるだろう」と指摘。「特に日本においては変えることは難しいうえに、年々メンテナンスが困難になっていっており、現状維持作業が増えている」と分析し、ITガバナンス導入の必要性を強調している。

 日本市場について、同氏は「世界第2位の市場であると認識している。昨年より、日本やアジアのローカライゼーションに力を入れており、エンジニアをトレーニングして国際基準を教えた。ITガバナンス製品についても早急に日本語対応させ、ITガバナンスの日本での浸透を目指したい」と抱負を語った。

■不景気の3大要因は間違い

 続いて行われた基調講演では、冒頭に財部氏が「経済はサラリーマンと経営者が1番詳しい。学者はまったく分かっていない」と断言。「2003年10〜12月と2004年1〜3月は6%強という物すごい成長率だった。このような突然の大成長を95%の有識者が予想できなかったろう」と続け、「マスコミを中心として、不況、不況と騒ぎ過ぎている。実際にはもっと楽観して良いのではないか」と日本の経済状況を独自の視点で分析した。また、ここ数年叫ばれている不景気の3大要因である「不良債権」「中国生産」「デフレ」を、「どれも主たる原因ではない。変化についてこれなかったことが原因だ」と解説している。

 財部氏はこの問題の説明として、自動車業界とハイテク業界を例に出し、「ベルリンの壁崩壊後、世界は180度変わった。このあと、現地販売分を現地生産に切り替え、増収増益を続けている自動車業界と、それがつい最近までできずにつぐれかかったハイテク業界がすべてを物語っている」と示した。そして、「『商売の原点は商品やサービスを売ることだ』という基本を忘れていないか?」と問題提起し、「松下電器産業は2002年に業績がどん底でつぶれる1歩手前だったが、『ヒット商品を作れ』という社長命令の下で組織改革した。その結果がDIGAやLUMIXなどのシェア1位と、業績の急回復につながっている」と解説した。

 「売り上げの増加」に続く、2本目の事業回復の柱である「コスト削減」については、同氏は「合理化や人員整理はもう限界だろう」と結論づけている。そして、問題解決策として、「ITによる業務改革が必要だ。松下電器の工場では、ボトルネックだった製品チェックを、開発段階から専用ソフトウェアを導入し組み込む改革によって解消した。このような、いままでの常識を裏返すような改革が必要であり、ITをうまく使えばそれも可能だ」と例を挙げて説明した。

 財部氏は、「商品を売るためのIT投資を考えるべき。もう不景気は言い訳にならない。ITによって組織は変えられる。情報戦略中心のビジネスモデルの提案をしてほしい。ITを役立てるはずだ」と語り、講演を締めくくった。

(編集局 大津心)

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