エッジ追求で黒字化する富士通、「コモディティは追わない」

2005/3/4

 富士通は、2004年度のネットワーク事業が2001年度以降で初めて営業黒字に転換することを3月3日に明らかにした。富士通のネットワーク事業は2000年度には7780億円の売り上げがあったが、ITバブルの崩壊を受けて急降下。2002年度には3697億円まで落ち込んだ。その後、事業のスリム化や集中でなんとか回復。2004年度は売上高3950億円で2%の営業利益率を見込む。

富士通の取締役専務 伊東千秋氏

 富士通の取締役専務 伊東千秋氏は「(事業の回復で)ようやくネットワーク事業をこうしていきたいという話ができるようになった」と語り、2007年度には売上高4600億円、営業利益率5%を目指す考えを示した。

 2007年度に向けての富士通ネットワーク事業の基本方針は、「リーディングエッジを求めて、付加価値が高いビジネスを他社より先にやっていくこと」(伊東氏)。伊東氏は「コモディティでボリュームを追求するビジネスは富士通にはまったく向かない」とも述べ、事業の選択と集中を続けて、強みが発揮できる先行分野に注力する方針を説明した。

 富士通がリーディングエッジと認識しているのは、光システムやアクセス技術、モバイルシステム、キャリア向けIPシステム、企業ネットワークなど。

 光システムの富士通の主戦場は米国。ブロードバンド化や、電話、インターネット、映像の“トリプルプレー対応”でSBC、ベライゾンという米国の2大キャリアとの取引を拡大させてきた。「この2つからかわいがられているのが、とてもよい」(伊東氏)。富士通は今後もSBC、ベライゾンを中心にプロダクトを提案し、2007年には米国での光システムのシェアを2004年の28%から30%まで伸ばすことを目指す。

 アクセス技術では、国内において光ファイバに集中投資する方針。NTTやKDDIなどが進める既存電話ネットワークの光ファイバ化、IP化に合わせて、専業子会社の富士通アクセスを活用する。また、新しいワイヤレス技術であるWiMAXにも注目。WiMAXは最大70Mbpsのデータ通信が可能で、50キロまでの通信に対応。伊東氏はWiMAXについて、「キャリアはブロードバンドのラスト・ワンマイル問題の解決策として注目する。また携帯電話のインフラとしても利用が可能」と指摘した。富士通ではWiMAXチップや無線多重技術、高効率アンプを開発し、ビジネスにつなげる考え。国内外のキャリアとWiMAXの共同実験を行うことも検討する。

 モバイルでは3GのW-CDMA市場が欧州で本格化することに合わせて、2000年に合弁会社を設立しているアルカテルとの結びつきを強める。2GのGSMからW-CDMAへの移行などで協力する方針。2006年にもサービスが開始されると見られる中国の3G携帯電話についても協力する。

 キャリア向けのIPシステムでは、米シスコシステムズとの協業が鍵になる。富士通とシスコは2004年12月にハイエンドルータの共同開発で合意した。これまで日本のキャリアに対して製品を開発してきた富士通のルータ技術と、高性能を売りにするシスコの技術を統合し、世界のキャリアで通用するハイエンドルータを開発する。富士通の経営執行役 中村隆氏は「シスコ製品の品質を向上させるため、顧客からの要望を受け付ける仕組みを日本で作ることを検討している」と述べた。伊東氏は「機会があるなら、世界の一流ベンダとこれからもアライアンスをしていきたい」と述べていて、リーディングエッジを追求するために積極的に協業をしていく方針を示した。

 企業ネットワークの拡販では、製品とネットワークサービスの統合的な提供が課題になる。複雑化するネットワークの問題に対してワンストップでの解決先を求める企業が増えているからだ。富士通は2月1日付で「FENICS」などネットワークサービスを提供する部隊と、ルータなどネットワーク機器の部隊を統合した600人規模の組織を立ち上げた。顧客のニーズに応じてサービスと製品を組み合わせた柔軟なソリューションを提供するのが目的。伊東氏は「ノウハウを含めてパッケージ化し、顧客にスピーディに提供する」と説明した。

 伊東氏はネットワーク事業の今後について「機能はこれからどんどんソフト化していくのではないか。そのソフトを動かすためのプラットフォームは汎用サーバが使われる。富士通のサーバ・ビジネスと連携を図れるだろう」と述べ、ネットワーク事業の進展が富士通全体のビジネスを潤すとの考えを示した。

(@IT 垣内郁栄)

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