ジュニパー、中小企業市場を開拓して企業向けを50%に

2006/5/26

 ジュニパーネットワークスは5月25日、タイの首都バンコクで日本のパートナー向けイベント「J-Partner Summit」を開催。日本のパートナーに向けたメッセージを語った。

■パートナーサポートを強化してエンタープライズの売り上げを50%に

エンタープライズ分野の売り上げを現在の30%程度から50%まで引き上げたいと語った米ジュニパーネットワークス フィールドオペレーション担当上級副社長エディ・ミンシャル氏

 2日前に行われた「Carrier Partnaer Summit」に引き続き登場した米ジュニパーネットワークス フィールドオペレーション担当上級副社長エディ・ミンシャル(Eddie Minshull)氏が同社のエンタープライズ市場向け戦略などを説明した。まずミンシャル氏は、パートナーについて「パートナー企業は2つとして同じ扱いができない。言語の違いから始まり、ルートの違い、取り扱う顧客の業種の違いなど、その素性がすべての企業で違うからだ。当社はそれらの違いを受け止めるべく、パートナーと緊密にかかわっていく」と述べた。

 同氏はその証拠としてサポート要員の数を挙げた。同社の4100人強の社員のうち、12%がサポート要員であり、インフラの9%を加えた21%がアウトプット要員として働いているという。このように、パートナーサポートの強化によってパートナーのビジネス規模を拡大し、同社が現在力を入れているエンタープライズ市場の売り上げを、現在の約30%から半分の50%にまで引き上げたいとした。

 さらに同社が2日前に発表したパートナー向けの新しい支援プログラム「エンタープライズ・エンゲージメント・イニシアティブ」(EEI)によってパートナーを支援する。ミンシャル氏は「EEIには今後、非常に大きな投資をしていく。特にパートナーへのトレーニングが重要だ。パートナーが当社のロードマップなどをきちんと認識していることが、売り上げの増加につながるだろう。当社もパートナーもお金をかけることで、きちんとした制度を作っていきたい」とコメント。

 同社がEEI成功のために挙げた4つの戦略「利益の拡大」「チャネルプログラムへの投資」「ビジネスを簡単にする」「パートナーをサポートするチーム作り」を実施することでEEIを確実に成功させ、エンタープライズ市場の売り上げを上げていきたいとした。

■多角化で売り上げ10倍、200億ドルも可能に〜リンドホルム氏

 続いて、ジュニパーネットワークス CMO(チーフ・マーケティング・オフィサー) ジェフ・リンドホルム(Jeff Lindholm)氏が登壇し、同社のマーケティング戦略を明らかにした。リンドホルム氏は、まず「ローカルマーケットに根付いたパートナーとの協力が重要だ」と説明。なぜなら、商習慣などは各国、各地域で異なり、それぞれの地域などで浸透している。今後、同社が狙う中小企業市場に浸透していくためには、ローカル独自の風土などに根付いたパートナーが重要であるとした。

 一方、エンタープライズ市場における重要度では、まず官公庁や金融市場を挙げ、キャリアパートナーなどを通じて浸透を図る。続いて、フォーチュン5000などに入る大企業を中心に、最後に中小企業へという段階を経て注力していくという。そして、エンタープライズ市場の目標を「ここ2年で3倍の売り上げを狙う。いまは20億ドル規模の売り上げだが、多角化によって200億ドルにまで売り上げを伸ばすこともできるだろう」(リンドホルム氏)と語った。

■最も重要なのは、パートナーのマージンをしっかり確保すること

パートナーのマージンをしっかり確保して不満の噴出を抑えたいと語るジュニパーネットワークス ワールドワイド・チャネル担当副社長 フランク・ビタグリオ氏

 次に行われた報道関係者向けの説明会では、ジュニパーネットワークス ワールドワイド・チャネル担当副社長 フランク・ビタグリオ(Frank J.Vitagliano)氏が同社のチャネル戦略について語った。

 ビタグリオ氏はジュニパーに入社してまだ2カ月であり、その前は30年以上IBMでローエンドサーバなどのチャネルビジネスに携わってきた。同氏は、ジュニパーとIBMの違いについて「最大の違いは、ダイレクトセールと100%パートナーを経由する点だろう。IBMは直販を行うため、できればパートナーを介さず売りたい営業部隊と、パートナーの間で衝突が起きていた。ジュニパーはこの点、100%パートナーを介すため、このような争いが起きない。逆に、一層パートナー戦略が重要となる」と説明した。

 そのパートナー戦略だが、重要なのは「パートナーがきちんとマージンを確保できるようにすること。パートナーがぶつかりあい、価格競争になってマージンを確保できなくなるような事態は避けなければならない。従ってセグメントごとにパートナーの数をコントロールし、パートナーの数を急激に増やすようなことはしないだろう」と語った。実際、数社を買収した2004年度は、買収企業が持っているパートナーも合わさったためにパートナー数が急増したが、2005年度は「せいぜい10%増程度だろう。今年も大規模な合併がなければその程度を想定している」と説明した。

 また、今後のパートナーの利益構造としては、「現在のハードウェアやソフトウェア売り上げのマージンによるメリットよりも、ハードウェアやソフトウェアを絡めた独自のサービスを提供することによる利益の方が大きくなるのではないだろうか」と予測。ジュニパーがエンタープライズ向けのルータやハブ製品を持たない点については、「パートナー企業の製品と連携したり、買収を通じて補うことでギャップを埋めることも検討している。しかし、当社はR&Dに多額の投資をしているので、自社開発も選択肢の1つとして考えられるだろう」(ビタグリオ氏)と語った。

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