今後は組み込みの専用機から業界標準汎用サーバへ移行!?

「テレコムこそがサンのビジネスの中核」

2006/11/30

 x86サーバが出荷実績を伸ばすなか、徐々に市場を蚕食されているRISC系Unixサーバだが、サン・マイクロシステムズは再び高処理性能のRISC系プロセッサを掲げてテレコム市場でのプレゼンスを増している。11月30日、米サン・マイクロシステムズのテレコム製品担当者が来日し、同社のテレコム向け製品の技術動向とサンの戦略について語った。

sun01.jpg 米サン・マイクロシステムズ プロダクト・マーケティング・ディレクター マーク・バトラー氏

 「テレコムこそがサンのビジネスの中核」と宣言するのは、米サンのNetraシステム・グループ プロダクト・マーケティング・ディレクターのマーク・バトラー氏。同氏によれば、サンは全世界のテレコム市場で41%のシェアを持つという。

 サンはエンタープライズ向けサーバとして「Sun Fire」シリーズを、テレコム市場向けに「Netra」シリーズをラインナップする。Netraはパケット処理のための統合プラットフォームで、それまで別々に実装されることが多かったGPU(General-purpose Processing Unit)とNPU(Network Processing Unit)を1チップ上に統合したプロセッサ「UltraSPARC T1」を搭載する。今のところ、キャリアが新サービスを提供するためにシステムを構築するには、多量のパケットをリアルタイム処理する必要性からNPUは不可欠だ。ただ、現在使われているネットワーク機器では、DSPやASIC、FPGAといったチップレベルの実装を用いた専用の組み込みサーバを用いているため、キャリアが新サービスを企画しても、実装に2、3年かかるということもあり得るという。GPUとNPUを統合したテレコム向け汎用プラットフォームは、こうした煩雑さを解消する。

 GPUとNPU機能の統合だけでなく、コンピューティングパワーの集約も進んでいる。Netraに搭載されるプロセッサ「UltraSPARC T1」は、4ウェイマルチスレッド対応のコアを8コア搭載。高速処理でボトルネックとなるメモリバスも4チャンネル搭載する。「最大32個のSolarisやLinuxを1プロセッサで起動できる」(バトラー氏)といい、サーバ機能の物理的集約によって維持・管理コスト削減に貢献すると話す。これは1ラック(12ブレード)あたり1152スレッドという集約度で、たとえばインテルのデュアルコアCPU、デュアルソケット対応のテレコム向けブレードサーバを用いた場合の144スレッドに比べ、約8倍の集約度となる。消費電力や設置容積の増大は、都市部に多いデータセンタなどでは無視できない問題だと、同氏は指摘する。

sun02.jpg サン・マイクロシステムズ 産業営業統括本部 産業第一営業本部 ネットワークシステムビジネスデベロップメント キャリアグレードプラットフォーム担当 中島隆行氏

 テレコム業界では標準化が進んでおり、Netraは次世代通信機器の標準規格「ATCA(Advanced Telecommunication Computer Architecture)」に対応する。ATCAではフォーム・ファクタや相互接続のための技術仕様が規定されており、同規格に準拠した機器であれば相互運用が可能だ。日本国内でキャリア向けプラットフォーム製品を担当する中島隆行氏は、オープンな規格を用いることで多くのパートナーと組み、組み込み専用機から業界標準準拠の汎用サーバとオープンソースを用いたソリューションへの移行を促したい、と話す。これまでブラックボックスだったテレコム向けネットワーク機器を“ホワイトボックス”とすることで、実際にシステムを構築するネットワーク機器ベンダーや、SI事業者は時間とコストを削減でき、エンドユーザーにとっては透明性が増すというメリットがあるという。

 すでにサンはNEC、アルカテル、ルーセント、ノキアといったネットワーク機器ベンダーとパートナーシップを築いており、今後はこうしたパートナーやSI事業者を通してNetraシリーズの販売を進めていくという。

(@IT 西村賢)

情報をお寄せください:



@ITメールマガジン 新着情報やスタッフのコラムがメールで届きます(無料)