業績好調でゴキゲンな会長が語るサンの戦略
「リーナスのオムツが取れる前からサンはオープンだった」マクニーリ氏講演
2006/12/06
サン・マイクロシステムズ会長のスコット・マクニーリ(Scott McNealy)が、ご機嫌だ。NECが主催するユーザー向けイベント「C&Cユーザーフォーラム」の基調講演に姿を見せたマクニーリ氏は、「会長職は気楽。政府関係者やパートナーと関係を維持するのが主な仕事。面倒なことはCEO任せ」とリラックスした様子で発言するやいなや、満員となった会場の聴衆に向けて、ゴルフクラブを振ってみせた。あちこち出張する身で最近ゴルフをしていないので、ちょっとスイングしてみたかったのだそうだ。運よく黄色いボールを受け取った聴衆は、サンのノベルティグッズと交換して、これまたご機嫌の様子だった。
マクニーリ氏の機嫌がいいのも当然だ。
2006年は、ここ数年不調続きだったサーバ事業が好調。仮想化によるサーバ集約などが原因で競合他社が市場の伸びの鈍化に苦戦するなか、順調にシェアを拡大。第3四半期、第4四半期と続けて前年同期比15.8%の売り上げという高い成長率を達成したのだから機嫌が悪くないほうがおかしい。さらに、先月の11月13日のマクニーリ氏52歳の誕生日に、サンはJavaをGPL化。長らく紆余曲折のあったJavaだが、携帯電話への搭載で普及に弾みが付き、いまやJava搭載端末は10億台。GPL化と相まって、「地球上の全員が1台」という数字も見えてきた。
60億人全員が一斉にスイッチオンしたら
笑みの絶やさないマクニーリ氏が心を痛めるのが、ITが地球環境に対して突きつけるエネルギー問題だ。現在、地球上の4人に3人はインターネットにアクセスする手段を持たない。このデジタルデバイドの問題を解決できたとして、その先にあるのは深刻なエネルギー問題だ。「想像してみてください、60億人全員が明日の朝起きて一斉にスイッチをオンにしたらどうなるか。グリーンランドの氷河が全部溶けるかもしれません」。
その一方、ブログ、SNS、マッシュアップといったユーザー生成コンテンツは1秒間に400GBという猛スピードで増えている。一般的なサイズのデータセンターでは1日に原油90バレル分ものエネルギーが消費されており、こうしたデータ量の爆発を支えるには、莫大なエネルギーが必要になるという。
マクニーリ氏が訴えるのは、高集積で低消費電力のサーバ導入と、シンクライアントの復権だ。同社の64ビットマルチコア・プロセッサ「UltraSPARC T1」は1つのCPUで32のスレッドを同時に実行できる。1スレッドあたり2ワットと処理能力当たりの消費電力が低いのが特徴。後継モデルでは64スレッドに倍増し、1スレッドあたり1ワットと、x86系プロセッサの数十分の1というレベルにまで下げる。サーバ集約と同時に、アプリケーションの表示機能だけに特化したシンクライアントを導入することで消費電力は大幅に抑えられる。米ベライゾン・コミュニケーションズの例では「あまりに突然電力消費量が落ちたので、電力会社が調査に行ったほど」とマクニーリ氏。電力供給不足で停電に悩まされるカリフォルニア州では、低消費電力のサーバを採用するだけで電力会社から一定のキャッシュバックを受けられるという。
リーナスのオムツが取れる前からサンはオープンだった
もう1つ、マクニーリ氏が強調するサンの基本戦略が「オープン」だ。
JavaのGPL化や、UltraSPARCアーキテクチャのオープン化など、サンは、ここのところ次々と自社のソフトウェア/ハードウェア技術のオープン化を進めている。マクニーリ氏は「リーナスのオムツが取れる以前から、サンはオープンだった」と冗談を交えつつ、その重要さを指摘する。時代の趨勢に押される形でサンがSolarisをオープンソース化したのは2005年だから、これは微妙な発言だが、同氏の“オープンネス”に対する信念は本物だ。同氏は、製薬会社の人たちに薬の製造法をオープンにしてはどうかと進言して驚かせてみたり、カリフォルニアの学校教科書をオープンな場で議論して作成するオンラインプロジェクトを立ち上げたりもしている。
「最新技術も18カ月もすれば古くなります。手入れがよければ40年間乗れる車とは違う」。技術トレンドが変わったとき、重要なデータがベンダ固有のアプリケーションやデータベースに依存していると「出口に障壁(Barriers to Exit)」ができる、と同氏はリスクを指摘。技術をオープンにすることで相互運用性が高く、将来も異なるベンダやアプリケーションで代替可能なものにしていけるとオープン化のメリットを語った。
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