すでに約5分の1のオープンソースプロジェクトが採用

GPLv3の本質は前バージョンと「変わらない」と八田真行氏

2007/11/27

 Linuxコンソーシアムは11月22日、「GPLv3を徹底的に理解しよう」というテーマで「LinuxコンソーシアムDay」を開催した。GNU General Public License(GPL)バージョン3の日本語訳を公開した八田真行氏が講演を行い、たとえバージョンが3に上がろうともGPLの目的に何ら揺るぎはないと述べた。

gpl01.jpg 東京大学大学院の八田真行氏

 「ライセンスとしてのGPLの目的は、フリーソフトウェアがフリーソフトウェアであるだけでなく、『あり続ける』ことを『実質的に』守ること。その意味で、バージョン2であろうが3であろうが、本質的に何ら変わりはない」(八田氏)

 そもそもGPLは、「実行の自由」「手元にあるプログラムを改変する(=八田氏曰く「いじる」)自由」「コピーを再頒布する自由」「改良点を公開する自由」というフリーソフトウェアの「4つの自由」を満たすために作られたライセンスと言える。そして、その中心にある概念が「ソースコード」だと八田氏は述べた。

 「ソースコードが実質的に入手できること、実質的に改変できることが重要。つまりバージョン2だろうが3だろうが、ソースコードがフリーであることを確保するために、延々といろんなことが書いてある」(八田氏)

2つの課題に迫られたGPL

 こうした背景の下、「コピーレフト」という概念を持つGPLv2が生まれたのは1991年のことだ。八田氏は、今ではこれが6割以上のフリー/オープンソースソフトウェアに適用されていることに触れ、「好むと好まざるとに関わらず、どこかでGPLと付き合わざるを得ない」(同氏)と述べた。

 「GPLは、できてから16年経っても依然として大きな穴が見つかっていない。これはすごいことだ」(八田氏)。

 しかしながら2006年ごろから、GPLにはいくつかの課題が突きつけられてきた。

 要因の1つはDRMだ。「DRMが普及すると、GPLなのに実質的に改変できないソフトウェアができてしまう」(八田氏)。もう1つはソフトウェア特許で、これも、GPLであるにも関わらず実質的に配布できなくなる可能性がある。いずれにせよ、これらの要因によって、フリーソフトウェアの4つの自由が骨抜きにされる恐れが出てきたのだ。

 「これらはGPLにとっては耐え難い問題であるということが、GPLv3を作成する契機になった」(同氏)。同時に、せっかくバージョンアップ作業に着手するついでに、米国以外で使われている汎用的な言葉を採用するなど国際化が図られているほか、ほかのライセンスとの「両立性」の確保が考慮された。

 GPLv3は、正式版が固まるまでに4つのドラフトを踏まえ、それらに対する提案を取り込む形で2007年6月に公開された。DRM条項1つとっても、ドラフトと正式版とでは大きな変化が見られるという。このプロセスについて八田氏は「ドラフトから比べるとかなり変更が加わっている。いろいろな人の意見を聞いて柔軟に変更してきたということだ」と述べた。

プロジェクトの5分の1がGPLv3を採用

 フリーソフトウェアファウンデーション(FSF)では現在、GPLも含め、3種類のライセンスを公開している。その1つが、11月19日に公表された「GNU Affero General Public License version 3」(GNU AGPLv3)だ。これは、ソフトウェアの配布は行われず、ネットワーク越しにデータのやり取りのみが行われるSaaSのような業態を想定したライセンスである。

 「フレイバーの異なるライセンスを3つ用意することで、v2の穴を塞いだ」と八田氏は述べ、今後は、AGPLv3の普及を進めたいとした。

 さらに「今後、バージョン4は当分の間出てこないだろう」と予想する。「バージョン2から3へというのと同じくらいの大きな変化は、今後5年、もしかしたら10年はないだろう。それだけの寿命を持ち得る文書だと考えている」(同氏)

 6月の正式公開後もとかく議論の的になってきたGPLv3だが、Palamidaが行った調査によると、2007年11月の時点で1151プロジェクトが採用しており、LGPLv3も95プロジェクトで採用されているという。「GPLが適用されているプロジェクトが5000くらいと言われているが、そのうち5分の1くらいがGPLv3に変更したということだ。このことは自分も実感としてある」(八田氏)

 実際にLinuxのTar Ballの中をのぞいて調べたところ、「GPLv2のみ」や「明記なし」といったさまざまな形態がある一方で、4割ほどは「GPLv2もしくはそれ以降」という表現で占められていたという。

 「メディアなどによると『ライナスはGPLv3はイヤだと言っている』という話もある。だが実際には、Linuxの開発にはかなり多くの人が関わっており、その多くが『GPLv2もしくはそれ以降』という表現をとっている」と八田氏は述べ、これらは基本的にGPLv3が適用されていると考えてもよいだろうという見方を示した。

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(@IT 高橋睦美)

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