[Analysis]

やっぱり人の問題が一番難しい

2005/09/06

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 「結局は人の問題」。ジャスダック証券取引所で8月29日に発生したシステム障害を取材してつくづくそう思った。どれだけシステムを整備しても人のミスがすべてを吹き飛ばしてしまう。言葉は悪いが“人の運用管理”や“人のサービスレベル維持”が重要だろう。

 システム障害の原因は、ジャスダック証券取引所の売買システムと会員証券会社のシステムを接続する部分にプログラムミスがあったことだ。ジャスダックと会員証券会社間の接続には「システム間直結接続」という方法を採用していたが、最近は別の接続方法である「JASDAQ-API接続」の利用が多かった。そのためジャスダックは29日、システム間直結接続への回線の割当を減らして、JASDAQ-API接続を増やすシステム変更を行った。しかし、プログラムミスでシステム間直結接続の割当を減らしすぎてしまい、コンピュータがダウンしてしまった。

 システム間直結接続にどの程度の回線を割り当てるかという計算は、特定の計算式で行われている。しかし、この計算式に誤りがあり、誤った数値が算出されていた。「比較的単純なミス」(ジャスダック証券取引所の代表取締役専務 菊一護氏)だ。システムそのものは正しく入力された数値に基づき、正しく稼働していたが、エンジニアの単純な計算ミスで誤った設定になっていたようだ。そのためシステムそのものにミスがあったのではなく、誤った計算式を設定した「運用者の問題」というのがジャスダックの認識だ。

 さらに、問題を複雑にしているのは、この単純なミスを見落としたのが外部委託業者だということ。ある一定以上の規模の開発では社内のシステム部門だけでなく、外部委託先の協力を得て開発を行うことが一般的だろう。しかし、委託元が委託先を完全に管理するのは不可能。開発の経過や成果物をチェックすることはできても、開発に携わるエンジニアのパフォーマンスを監視することをは難しい。開発が業務委託先から孫請けに出されていると、管理はさらに難しくなる。

 ジャスダックがシステム障害を起こすのは今年に入って3回目。ITILなど情報システムと人の運用管理に注目した手法も広がっている。人の問題をどう解決するかはシステム構築の重要な問題だ。人の問題を解決せずに、ジャスダックが信頼を回復するのは難しいだろう。

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