解説

2度目の船出となる「Itanium 2」は成功の階段を上るか?

デジタルアドバンテージ
2003/07/05

解説タイトル


 2003年6月30日(米国)、IntelはItaniumプロセッサ・ファミリ(IPF)の第3世代製品となる開発コード名「Madison(マディソン)」で呼ばれていた「Itanium 2」を発表した(インテルの「ハイエンド・サーバ向けプロセッサ製品群を大幅に強化」)。第3世代製品とはいえ、製品名は2002年7月8日(米国)に出荷が開始された開発コード名「McKinley(マッキンリー)」と同様、Itanium 2から変更はない。これは、Pentium 4が0.18μmプロセス製造による開発コード名「Willamette(ウィラメット)」から0.13μmプロセス製造による同「Northwood(ノースウッド)」に変わっても、「Pentium 4」の製品名を変更しなかったのと同じである。Itanium 2という製品名は、2004年に出荷予定の「Madison 9M」まで継承されることが明らかにされている。これは、Itanium 2が、McKinleyからMadison 9Mまでハードウェア/ソフトウェアの両面において互換性を維持していることが最大の理由だ。なお、2005年出荷予定のMontecito(開発コード名:モンテシト)では、デュアル・コアとなるが、ソケットならびにソフトウェアの互換性は維持される。

 今回発表となったItanium 2のラインアップは以下のとおりである。6Mbytesの3次キャッシュを内蔵するItanium 2-1.50GHz/6Mが約50万円である。これは、McKinleyコアの3Mbytesの3次キャッシュを内蔵するItanium 2-1.0GHz/3Mとほぼ同じ価格である。また、Itanium 2のエントリ・モデルとなる3Mbytesの3次キャッシュを内蔵するItanium 2-1.30GHz/3Mは約16万円となっている。Itanium 2-1.0GHz/3Mと3次キャッシュの容量は同じで動作クロックが向上しているので、単純に考えれば1.3倍程度の性能向上が実現しているはずだ。つまり、性能が向上していながら、1年で価格が1/3になったことになる。

 一方、今回同時発表となった32bitのサーバ向けプロセッサであるIntel Xeon MPと比べると、ほぼ価格が横並びとなっていることが分かる。トランザクション性能では、Itanium 2の方が高いことから、プロセッサ単体のプライス・パフォーマンスで比較するとItanium 2が得なことが分かる。ただ、システム価格となると、各サーバ・ベンダともItanium 2をIntel Xeon MPのさらに上位モデルと位置付けており、まだ若干Itanium 2搭載サーバの方が高めとなっている(システム構成が異なることも多い)。

製品名 価格(1000個受注時)
Itanium 2-1.50GHz/6M 49万6400円
Itanium 2-1.40GHz/4M 26万4000円
Itanium 2-1.30GHz/3M 15万7200円
Intel Xeon MP-2.80GHz/2M 43万3700円
Intel Xeon MP-2.50GHz/1M 23万2600円
Intel Xeon MP-2GHz/1M 13万8300円
表区切り
Itanium 2とIntel Xeon MPのOEM価格(プロセッサ単体の価格)

Itanium 2を取り巻く環境

 McKinleyとMadisonの違いは、製造プロセス(0.18μmと0.13μm)、動作クロック(1GHzと1.5GHz)、内蔵3次キャッシュの容量(3Mbytesと6Mbytes)の大きく3点である。パッケージ形状や対応チップセットに変更はない。発表会の席上、Intelのエンタープライズ・プラットフォーム事業本部エンタープライズ・マーケティング&プランニング・ディレクタのアジェイ・マルフォトラ(Ajay Malhotra)氏は、これら3点の変更のほか、細かな修正も行われていると述べたが、データシートなどには機能面での追加や変更の記述はないことから、製造面もしくは性能面に関連した変更と思われる。

 このように実際には、McKinleyとの違いはそれほど多くないにもかかわらず、多くのサーバ・ベンダがMadisonに期待を寄せている。実際、Dell ComputerのようにMadisonコアから本格的にIPFサーバを投入するベンダもいる(Dell Computerは、Itanium搭載サーバを一度リリースしたものの、Itanium 2搭載サーバは販売しなかった)。これは、開発コード名「Merced(マーセド)」で呼ばれた初代Itaniumが正式出荷されてまる2年が経ち、先行したHewlett-PackardやNEC、日立製作所などの努力もあり、IPFに対応したミドルウェアやアプリケーションが揃ってきたことが大きい。Intelによれば、すでに400以上のアプリケーションがIPFに対応しているという。

 また、先進的な企業や研究機関などがIPFを採用し、その事例が紹介され始めたことで、次に続く採用企業が現れてきたことも理由として挙げられる。さらに、Itanium 2対応したWindows Server 2003やSQL Server 2003が6月末に正式出荷となったことも追い風になっている。

 一方で、Itanium 2の登場によってハイエンド・サーバ市場で追い上げられるRISCプロセッサはどのような状況にあるのだろうか。まず、PA-RISCとAlphaの両方を抱えるHewlett-Packardは、IPFへの移行を宣言しており、これらRISCプロセッサに大幅な投資を行う予定がない。つまり、大幅な性能向上など発展的な将来は期待できない。長期的な視野に立つと、ソフトウェアなどの開発投資が無駄になる可能性もある。これからPA-RISCやAlpha搭載サーバを新規に導入する場合には、この点を十分に検討する必要があるだろう。IBMは、POWER4の4倍以上の性能を実現するPOWER5を発表したが、サーバへの採用は2004年からとなる(IBMの「POWER5の開発について」)。Itanium 2の最大のライバルとなるUltraSPARCは、次世代プロセッサの「UltraSPARC IV」の出荷が、2003年後半から2004年前半に延期されている。サーバのベンチマーク・テストの代表ともいえるTPC-Cの結果を見ても、7位に富士通のPRIMEPOWER 2000(SPARC64 GP-563MHzを128個搭載)が入っているのみで、Sun Microsystemsの名前はトップ10に見当たらない。性能面において、Itanium 2はUltraSPARCを始めとするRISCプロセッサを凌駕したといえるだろう。

Intelが発表したRISCプロセッサとItanium 2の性能比較
このように最も高速なRISCプロセッサに対して、Itanium 2はすべてのベンチマーク・テストで高い成績を発揮している。
 
インテルが発表会で示したIDCの調査結果
出荷台数ベースではIAサーバが全サーバ中80%を占める一方で、出荷金額では50%以下でしかないという。この背景には、単価が高いハイエンド・サーバ市場において、RISC/UNIXサーバが圧倒的に強く、単価の安いエントリ・サーバ市場でIAサーバが強いことを意味する。2005年には、Itanium 2搭載サーバにより、出荷金額ベースでもIAサーバがRISC/UNIXサーバを抜くと予想している。

 懸念材料としては、いまのところIPF対応の64bit版Windows Server 2003がEnterprise EditionとDatacenter Editionの英語版でしか提供されないことだ。2003年末に発表が予定されている開発コード名「Deerfield(ディアフィールド)」で呼ばれるデュアルプロセッサ向けItanium 2/低電圧Itanium 2では、フロントエンド・サーバやアプリケーション・サーバとしての利用が想定されている。こうしたサーバにEnterprise EditionやDatacenter Editionというのは、あまりにもオーバースペック(特に価格面で)である。より広くIPFが普及するためには、64bit版Windows Server 2003の広範囲なサポートは必須だろう。

IPFとIntel Xeon MPのロードマップ
開発コード名「Deerfield(ディアフィールド)」で呼ばれていたItanium 2のデュアルプロセッサ対応版は、消費電力の違いにより通常版と低電圧版の2種類が提供される。Itanium 2の最大消費電力が130Wなのに対し、低電圧版Itanium 2では65Wになる予定だ。また、デュアルプロセッサ対応版の価格は、非常にアグレッシブなもの(Intel Xeonに対抗する価格)になるといわれている。
 
コラム
IA-32との互換性をソフトウェア・エミュレーションへ移行

 Itanium 2の記者向け説明会の席上、インテルは、2003年第4四半期にも「IA-32 Execution Layer(IA-32 EL)」と呼ぶ、x86命令のソフトウェア・エミュレーション機能の提供を各OSベンダに行うことを明らかにした(「解説:市場完全制覇への階段を登るIntelのサーバ・プロセッサ戦略」参照)。

 現在、Itanium/Itanium 2では、x86命令との互換性を維持するため、専用のデコード・ユニットを実装している。このデコード・ユニットに関しては、ItaniumからItanium 2になっても変更はなく、今後も大幅に手を入れることはないとしている。この部分をソフトウェア・エミュレーションに切り替え、IPFにおけるx86命令の性能向上と拡張性を実現しようというのが、IA-32 ELの目的である。IPFでは、現在ストリーミングSIMD拡張命令(SSE)までしか対応していないが、IA-32 ELを用いれば、SSE2ならびに開発コード名「Prescott(プレスコット)」で呼ばれる次期デスクトップPC向けプロセッサで追加される命令に対しても容易に対応可能だ。また、IPFにおいてx86命令を実行するためには、モードの変更を行う必要があり、そのペナルティが大きかった。IA-32 ELでは、事前にx86命令がEPICに変換済みのため、実行時にペナルティが発生しない。つまり、32bit/64bitの命令が混在しているような環境においても、IPFの性能を十分に発揮できることになる。

 なおインテルでは、IA-32 ELを用いることで、Itanium 2-1.5GHz/6MでIntel Xeon MP-1.5GHz相当の性能を実現するとしている。ただ、今後IPFの性能が向上し、エミュレーション技術の進歩により、IA-32 ELによるx86命令の実行性能は大幅に向上するという。もちろん、Intel XeonなどのIA-32プロセッサ系列も、性能は向上し続けるため、IPFがIA-32プロセッサの性能を追い抜くのはかなり先の話となるだろう。それでも、x86命令の実行性能が改善されるのは、IPFの普及の追い風になるのは間違いない。

Itanium 2搭載サーバの導入時期は?

 では、ユーザーとしてItanium 2搭載サーバをどのように捉えればいいのだろうか。現在、RISC/UNIXサーバを採用している場合、サーバのリプレイス時期もしくは大規模な拡張を行う時期に、Itanium 2搭載サーバを検討すべきだろう。特にPA-RISCやAlpha、MIPSを搭載しているサーバの場合、新製品の投入は2005年ごろまでとなる。中長期的には、これらサーバ向けのソフトウェア資産は無駄になってしまう可能性が高い。移行プログラムなどを活用し、早期にItanium 2搭載サーバへの移行を検討した方がいいだろう。POWERやUltraSPARCの場合、IBMとSun Microsystemsが投資保護をうたっているだけに、既存のアプリケーションや運用ノウハウが無駄になることを考慮すると、Itanium 2への移行は悩ましい。ただ、Itanium 2+Linuxへ移行することで、導入コストならびにランニング・コストが大幅に軽減するという事例も紹介されている。中長期的に考えれば、Itanium 2への移行にメリットがあるかもしれない。

 これから新たにハイエンド・サーバの導入を行う場合、用途などにもよるがItanium 2搭載サーバを勧めたい。RISC/UNIXサーバを導入する特別な理由があるならば別だが、性能・コスト、サーバ・ベンダの数など多岐に渡ってRISC/UNIXサーバよりも優位にある。唯一、実績という点では、これからという面もあるが、それも時間の問題だ。最低限、Itanium 2搭載サーバとの比較検討を行ってみる必要ある。

 最後に2003年7月2日現在、Itanium 2搭載サーバを発表している主なベンダを示す。このほか三菱電機が、日本HPからOEM供給を受けてItanium 2搭載サーバを販売することを表明している。2005年には、富士通が参入することも表明している。記事の終わり

ベンダ名 Itanium 2搭載サーバのシリーズ名
沖電気工業 OKITAC9000シリーズ
デルコンピュータ PowerEdge 3250
日本IBM eserver xSeries 450/382
日本SGI SGI Altix 3000シリーズ
日本コンピューティングシステム Type ITD-2U/Type ITD-4U
日本電気 NX7700シリーズ/Express5800/1000シリーズ/TX7シリーズ
日本HP HP Integrityサーバ
日本ユニシス ES7000/130
日立製作所 日立アドバンストサーバHA8500シリーズ
ぷらっとホーム Trus64 シリーズ
表区切り
Itanium 2搭載サーバを発表している主なベンダ
 
日本HPの「HP IntegrityサーバSuperdome」 日立製作所の「日立アドバンストサーバHA8500シリーズ」 NECの「NX7700」
Itanium 2の発表会後に開催された日本HP、沖電気工業、NEC、日立製作所、三菱電機のHP-UXを採用する5社共同の発表会で展示されていた各社のサーバ。
 
  関連記事
市場完全制覇への階段を登るIntelのサーバ・プロセッサ戦略
 
  関連リンク
ハイエンド・サーバ向けプロセッサ製品群を大幅に強化
POWER5の開発について
 
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