第10回 読者調査結果
読者の見るハイパフォーマンス・コンピューティングの行方とは?

アットマーク・アイティ マーケティングサービス担当
小柴 豊
2003/09/10


 ここ数年、科学技術計算やデータマイニングなど、高度な処理能力を必要とする「ハイパフォーマンス・コンピューティング(HPC)」分野の成長ならびに進化が著しい。歴史あるスーパーコンピュータも健在だが、Itaniumプロセッサ・ファミリ(IPF)AMD Opteronといった64bitプロセッサ、ブレード・サーバなどに見られるように、高性能と低コストの両立を目指した技術/製品が続々と登場している。こうした汎用的な技術を組み合わせることで、これまで高価であったハイパフォーマンス・コンピューティングを安く実現するのがトレンドとなっている。では、さまざまな高性能技術の中で、今後主流となっていくものは何なのだろうか? System Insiderフォーラムが実施した第10回読者調査の結果から、ハイパフォーマンス・コンピューティングにかかわる読者の意見を聞いてみよう。

多様化する高性能システムのサーバ構成

 まず、読者がかかわる高性能システムのサーバ構成について、現在の導入状況/今後の導入予定・検討状況を聞いた結果がグラフ1だ。現在は「UNIXサーバ」の導入率がほかを大きく引き離しており、UNIXが高性能サーバの中核を担っている模様だ。一方、今後の予定では「Itanium搭載サーバ」「PC/IAサーバによるHPCクラスタ」「ブレード・サーバ」といった、インテル・アーキテクチャによるハイパフォーマンス・コンピューティング実現技術が、UNIXと同等に検討されていることが分かった。これを見ると、いままで「フロントエンドはIAサーバ、バックエンドはUNIX」といわれていた定説が崩れ、今後の高性能サーバ構成は多様化が進むように思われる。

グラフ1 高性能システムのサーバ構成(N=138 複数回答)

HPCクラスタ構築時の通信方法

 グラフ1で見たとおり、台頭する高性能IAコンピューティングの中で、現在最も利用が進んでいるのが「HPCクラスタ」だ。クラスタリングは低コストなIAサーバを必要に応じて拡張できる柔軟性を持つが、システム全体の性能を高めるためには、サーバ間通信の高速化が必須といえる。そこでHPCクラスタを導入/検討している読者に、サーバ間通信で今後採用が見込まれる規格をたずねたところ、該当者の半数以上が「ギガビット・イーサネット」および「10ギガビット・イーサネット」を支持していることが分かった(グラフ2)。

 その反面、サーバ向け高速I/O規格として期待された「InfiniBand」の採用予定率は、ターゲット・ユーザーの1割にも満たなかった。InfiniBandは、転送速度/CPU占有率などの技術面でギガビット・イーサネットに対する優位性を訴えているが、Intel/Microsoftの相次ぐ開発中止などにも影響されてか、ユーザー需要を掘り起こすのは困難なようだ。

グラフ2 HPCクラスタ構築時の通信方法(HPCクラスタ利用意向者 N=53 複数回答)

グリッド・コンピューティングの認知/取り組み状況

 ところで、今後の高性能コンピューティング環境を考える上で、その動向が最も気になる最新概念といえば、「グリッド・コンピューティング(以下グリッド)」ではないだろうか。

 そこで高性能コンピューティングにかかわる読者に、グリッドについての認知/取り組み状況を聞いた結果が、グラフ3だ。さすがに「すでに導入を進めている/導入を完了している」読者は全体の1%止まりだったが、「導入予定がある/評価中」「検討を始めている/情報収集中」まで含めると、全体の30%弱が、グリッドについて何らかのアクションを起こし始めていることが分かった。では読者はグリッドについて、今どのような情報を求めているのだろうか。次にその内容を見てみよう。

グラフ3 グリッド・コンピューティングの認知/取り組み状況(N=138)

グリッド・コンピューティングに関する情報ニーズ

 グラフ4は、読者がグリッドに関してどのような情報に興味があるのか、複数回答で聞いた結果だ。「グリッドの技術概要や用途」「クラスタリングなどの手法と比べた長所/短所」といった基本的/概論的項目が上位に挙げられた。このことから、「グリッド」という言葉だけが先行し、その内容やメリットまではよく理解されていない現状がうかがわれる(3年前に「Webサービス」が注目されたときと、似たような状況かもしれない)。グリッドの健全な発展のためには、その将来イメージを示すだけではなく、同技術で現在できること/できないことや、具体的なシステム構築時のコストパフォーマンスなどを明確にする必要がありそうだ。

グラフ4 グリッド・コンピューティングに関する情報ニーズ(グリッド興味者 N=124 複数回答)

64bitプロセッサ搭載サーバの導入状況

 高性能コンピューティングに関するトピックとして、次に64bitプロセッサ搭載サーバ製品の動向を見てみよう。2003年は、4月にAMDからAMD Opteronが、7月にはIntelからIPFの第3世代となる開発コード名「Madison(マディソン)」で呼ばれていたItanium 2が出荷されている。これにより、x86系の64bitプロセッサのメイン・プレイヤーがほぼ出揃ったことになる。そこで読者に、RISCも含めた64bitプロセッサ搭載サーバの導入状況をたずねたところ、現在はSun Microsystemsの「UltraSPARC」搭載サーバを筆頭に、全体的にRISC搭載サーバが優位であるようだ(グラフ5)。しかし、今後の導入予定・検討状況となると、全体の50%弱がIPF、同20%弱がAMD Opteron搭載機を検討しており、x86系64bitプロセッサ陣営への期待が高いことが明らかになった(グラフ5)。

グラフ5 64bitプロセッサ搭載サーバ製品の導入状況(N=138 複数回答)

64bitプロセッサ搭載サーバ選択時の重視点は?

 では今後64bitプロセッサ搭載サーバが導入される際、製品選択の決め手となるのは、どのようなポイントなのだろうか。複数回答でたずねたところ、読者のおよそ70%が「価格」と並んで「信頼性/安定性/可用性」を挙げた。半面、「クロック周波数」の重視率は14%にとどまった(グラフ6)。64bitプロセッサといえば、そのパフォーマンス面が強調されがちではあるが、ハードウェア進化が著しい現在、もはやベンチマーク競争に大きな意味が見出せない状況となっているようだ。

グラフ6 64bitサーバ製品選択時の重視点(N=138 複数回答)

 またグラフ6の4位に挙げられた「Windowsの対応状況」についてもポイントとなりそうだ。Microsoftは、64bit版Windows Server 2003を発表したが、これはいまのところEnterprise EditionとDatacenter Editionのどちらも英語版(日本語の取り扱いは可能)に限られている。この点に関して読者からは、「Windows Server + SQL Serverでシステムを組んでいるが、現在使用できる2Gbytesのメモリでは完全に不足している。しかし、使用ユーザー数は5名以内なので、現在のMicrosoftの64bit OSライセンス体系では非常に無駄である。早くStandard Editionもラインアップに加えて欲しい。64bitへの移行は、Standard Editionの登場以降になる」という声が寄せられている。64bitサーバ導入をスムーズに進めるためにも、ユーザーの利用機会を増やすようなOS/アプリケーションの対応が待たれるところだ。記事の終わり

  調査概要
調査方法
System Insiderフォーラムからリンクした Webアンケート
調査期間
2003年6月30日〜7月23日
有効回答数
312件(うち高性能システム関与者138件の回答を集計)
  
  関連記事 
注目のHPCを理解するためのキーワード
2004年のサーバ・プラットフォームを先取りする
x86互換の64bitプロセッサ「AMD Opteron」の実力と課題
サーバ・クラスタリングで注目される高速I/Oテクノロジ「InfiniBand」
グリッドコンピューティングはどの程度現実的なのか?
 
「System Insider 資料」


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