マイクロソフトの知的財産戦略、「GPLには問題がある」

2005/1/14

マイクロソフト 執行役 法務・政策企画本部 統括本部長 平野高志氏

 米IBMが知的財産戦略の抜本的な転換(ソフトウェア分野における500件の特許を無償公開することを含む)を発表したのが1月11日(現地時間)。自社技術の利用を促し、市場の裾野を広げることで、情報サービス事業の拡大を目指す同社に対し、マイクロソフトはあくまでソフトウェアの知的財産を保護するという立場を貫く。

 同社の認識では、知的財産は新製品を生み出すための「根源」であり、技術革新は、商用ソフトウェアの世界における知的財産権に関する十分に確立された制度の下で実現する。このため、知的財産権の検討を経ないことが多いオープンソースソフトウェアの存在は、同社にとって悩ましい存在であり、ソフトウェアのオープンソース化を積極的に進めるIBMの知財戦略を容易に是認できない立場にある。マイクロソフト 執行役 法務・政策企画本部 統括本部長 平野高志氏は他社についてコメントする立場にはない、と前置きをしたうえで、「IBMがそれで何を狙っているのか正直にいって分かりかねる」とコメントする。

 確かに、オープンソースソフトウェアの多くが採用するライセンス「GPL」(GNU Public Lisence)は「開発者及びディストリビュータのためのロイヤリティを基礎とした知的財産権との連携を阻止することが意図されている」(平野氏)という目的をもつことは事実だ。そのため、「既存の知的財産権との連携を念頭においたプロセスが欠如」(平野氏)しているため、結果的にソフトウェア産業の活性化を阻害する遠因になるとマイクロソフトはほのめかす。

 米SCOがUNIXの知的財産権問題でIBMをはじめとしたベンダと訴訟合戦を繰り広げているという状況は、オープンソースソフトウェア独特の開発プロセスが生み出した1つの現実であることに変わりはない。そのため、マイクロソフトは、組み込み製品を除く同社製品の顧客が知的財産権の紛争に巻き込まれた場合、訴訟費用と(裁判所の決定した)損害賠償額を「青天井で」(平野氏)補償する。顧客に対する特許、知財に関する限界のない補償制度を設けているのはマイクロソフトだけで、他社は補償範囲に限定を設けていたり、補償そのものがないのが実状だと同社では説明する。

 マイクロソフトは知的財産権について極めて伝統的な立場を貫いている。この立場はオープンソースによる開発プロセスにはなじまないものだ。しかし、例外なくソースコードの開示を拒むことはせず(シェアードソース・プログラムのように限定付きでソースコードの開示を行っているケースがある)、また技術の標準化に対しても積極的にノウハウを提供している。知財戦略について、IBMとの立場が明確に異なるのは、両者のビジネスモデルの違いが大きく影響していることは明らか。ソフトウェア業界の知財問題については、今後さらに議論がされることになるだろう。

 なお、マイクロソフトが2004年7月から2005年6月までで出願を目指す特許数は3000件(前年は2000件目標)で、登録済み特許数は4000件である。

(@IT 谷古宇浩司)

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