連載 PCメンテナンス&リペア・ガイド

第8回 増設前に知っておきたいハードディスクの基礎

1. 標準インターフェイス規格「IDE」の現状

林田純将
2002/06/01


 アプリケーションやデータ、さらにはOSそのものの保存場所として使用されるハードディスクは、年々大容量化かつ高性能化している。しかも、価格も安くなり、コスト・パフォーマンスが向上し続ける傾向にある。そしてビジネス用途でも、音声や動画像など大容量のマルチメディア・コンテンツが次第に利用されるようになってきている現在、低価格かつ大容量のハードディスクを増設する必要性が高まっている。

 また、単なるデータ保存だけではなく、バックアップ用途としてもハードディスクは有望だ。容量1Gbytesあたりの単価で比べると、数Gbytesクラスのリムーバブル・ストレージのメディアより、最新のハードディスクの方が安価なこともあるからだ。

 しかし、少し古くなったPCをメンテナンスしている管理者にとっては、最新のハードディスクを増設したくても、本当にそのPCに組み込むことが可能なのか、またその増設作業にどれほどの手間がかかるのか、など気になることも多いだろう。そこで今回から数回に分けて、デスクトップPCへのハードディスク増設を解説していく。対象とするのは、最も安価に増設できる内蔵IDEハードディスクだ。最初となる今回は、IDEハードディスクのインターフェイス規格と、実際の製品の選択ポイントについて解説する。

ハードディスクは最も単価の安いストレージ・デバイス!?

 デスクトップPCの内蔵ハードディスクの標準規格となっているのはIDE(Integrated Device Electronics)である。現在では、ノートPCも含むクライアントPCに内蔵されているハードディスクは、ほとんどがIDE対応のものだ。その容量は1台で100Gbytesを超える製品も市販されており、2002年前半の標準的な容量である60Gbytes程度のハードディスクは、実売価格1万円前後で販売されている。DVD-RAMのメディアが9.4Gbytes(両面タイプ)のもので1枚あたり2000円から2500円程度であることを考えると、1Gbytesあたりの単価ではハードディスクの方が安価になる。つまり、OSや通常使用するアプリケーションなどの格納先としてだけでなく、バックアップ用としてもIDEハードディスクは十分利用価値のあるメディアなのだ。

DVD-RAM(9.4Gbytes)のメディア(左)とIDEハードディスク(右)
以前に比べDVD-RAMは使いやすくなってきており、またメディアの価格も下がっている。しかし、1Gbytesあたりの容量単価で比較すると、最新のIDEハードディスクの方が安い場合が多く、バックアップ用途としてもハードディスクの方がコスト・パフォーマンスは高い。

ハードディスク・インターフェイスのスタンダードはIDE=ATA規格

 データ保存用にせよ、バックアップ用にせよ、ハードディスクを増設する場合には、まず増設の対象とするPCが採用しているハードディスクとそのインターフェイスが、どういったものであるのか把握する必要がある。そこで、ハードディスク・インターフェイスの規格について説明しよう。

 もともとIDEというのは、CompaqとWestern Digitalが共同で開発したハードディスクのインターフェイス仕様だったが、そのあと、米国の標準化団体であるANSI(American National Standards Institute)ATA(AT Attachment)という規格に標準化した。現在ではEnhanced IDE(E-IDE)Ultra ATA/100などと記されているハードディスクが多いが、これらはすべて「ATA規格」に従っている。そしてATA規格には、現在までに「ATA(-1)」から「ATA-5」までのバージョンを経てきており、広く普及しているUltra ATA/100に対応する「ATA-6」が現在策定中である。また、最新のUltra ATA/133を含む「ATA-7」の策定もすでに始まっている。覚えておきたいのは、どのバージョンのATA規格でも前のバージョンの仕様をほぼ内包していることで、これによりIDEの下位互換性は高く維持されている。

 市販のハードディスクのカタログやスペック表などには「ATA-5対応」などと記述されることは少なく、どちらかといえば「Ultra ATA/100対応」や「Ultra DMA/100対応」と表示されることが多い。ちなみに、メーカーによって「ATA」と呼ぶものと「DMA」と呼ぶ場合がある。正確には、「Ultra ATA/100」規格のハードディスクが採用しているデータ転送の方式が「Ultra DMA/100」だが、ハードディスクを選択する場合には、この2つは同じものを指すと考えてよいだろう。Ultra ATAUltra DMAでは、「100」なら100Mbytes/sといった具合に、その名称に含まれている数字が規格上の最大データ転送速度を表している。

ANSI規格名 通称 最大データ転送速度
ATA IDE 8.33Mbytes/s
ATA-2 Enhanced IDE 16.6Mbytes/s
ATA-3 Enhanced IDE 16.6Mbytes/s
ATA-4 Ultra ATA/33 33.3Mbytes/s
ATA-5 Ultra ATA/66 66.6Mbytes/s
ATA-6 Ultra ATA/100 100Mbytes/s
ATA-7 Ultra ATA/133 133Mbytes/s
表区切り
ATA規格名とIDEの通称との対応
ANSI規格名と通称が1対1に対応していない場合もあるが、おおざっぱには上記のように表せる。現在、市販のIDEハードディスクの主流はUltra ATA/100対応製品だ。

 上表を見ると、6回のバージョン・アップを経てATAの最大データ転送速度は、実に16倍も高速化されていることが分かる。

 なお、現在のATA規格には、ATAPIと呼ばれる仕様も含まれており、規格名も「ATA/ATAPI」と併記されることが多い。もっともATAPI自体はCD-ROM/DVD-ROM/CD-R/RWドライブなどをIDEインターフェイスで接続するための規格であり、IDEハードディスクとは直接関係がない。つまりIDEハードディスクを選ぶ場合は、ATA規格だけに注目すればよい。

PCと搭載ハードディスクのインターフェイス規格を見分ける方法

 PC側のインターフェイス(IDEホスト・コントローラと呼ばれる)や搭載ハードディスクのインターフェイスについては、対応規格を正確に割り出すのはそれほど簡単ではない。どちらも製品名や型番が不明な場合があるし、それが判明しても、対応するスペック表が見つからない場合もあるからだ。

 おおざっぱではあるが、PC側の対応規格を見分ける方法の1つに、搭載ハードディスクの接続に使われているケーブルの種類を見ることが挙げられる。現在市場に流通しているIDEハードディスクのケーブル(IDEケーブル)は、Ultra ATA/33以前のハードディスクに使用する40芯タイプのものと、Ultra ATA/66〜133に使用される80芯タイプのものに分けられる。この2種類のケーブルの違いについては、「PC Hints:IDEケーブルの40芯/80芯タイプはどちらを選ぶべきか?」を参照していただきたい。もし、搭載ハードディスクに接続されているフラット・ケーブルが40芯タイプであれば、PCおよび搭載ハードディスクのインターフェイスはUltra ATA/33以前のものだ。一方、80芯タイプのケーブルならば、Ultra ATA/66以降に対応したPCおよび搭載ハードディスクである、ということになる。

2種類のIDEケーブルとそのコネクタ
が40芯タイプで、が80芯タイプだ。どちらのケーブルが搭載ハードディスクに使われているかによって、インターフェイス規格がおおざっぱに把握できる。

 ただし、IDEケーブル自体には相互に互換性があるため、Ultra ATA/33のハードディスクとUltra ATA/66〜100のハードディスクは、どちらも40芯、80芯の両方のケーブルを利用できる。つまり、Ultra ATA/33にしか対応していないPC(40芯ケーブルを使用)にも、Ultra ATA/100のハードディスクを増設することともできるのだ。実は、現在市場に出回っているハードディスクは、そのほとんどがUltra ATA/100対応なので、ATA規格において下位互換性がほぼ保障されていることを考えれば、各ハードディスクとPCそれぞれのインターフェイス規格が同一である必要はない。つまり、相互接続性だけを考慮するなら、それぞれのATA規格にはそれほど神経を使わなくてもよい。ただし、PC側がUltra ATA/33対応の場合、増設するハードディスクがUltra ATA/100対応でも、実際にはUltra ATA/33として動作するため、その最大性能は発揮できないことは覚えておきたい。

対応インターフェイス 使用ケーブル 動作モード
Ultra ATA/100 40芯ケーブル Ultra ATA/33
Ultra ATA/100 80芯ケーブル Ultra ATA/100
Ultra ATA/133 40芯ケーブル Ultra ATA/33
Ultra ATA/133 80芯ケーブル Ultra ATA/133
表区切り
IDE(ATA)のケーブルの種類と動作モードの関係
現在流通しているハードディスクはUltra ATA/100以上に対応している。これらを40芯ケーブルで接続すると、Ultra ATA/33、つまり最大33Mbytes/sでしかデータを転送できなくなる。

デスクトップPC向けハードディスクは3.5インチ・タイプ

 IDEハードディスクでは、上述してきたインターフェイスだけではなく、外形サイズ(フォーム・ファクタなどとも呼ばれる)も標準化されている。種類としては、ハードディスク内部の記録ディスク(プラッタ)のサイズにより、2.5インチ・タイプと3.5インチ・タイプの2種類に大別される。基本的に2.5インチ・タイプはノートPC用で、3.5インチ・タイプはデスクトップPC用だ(ごく少数ではあるが、省スペース・デスクトップPCなどでは、2.5インチ・タイプを採用している製品もある)。デスクトップPCに増設するハードディスクは、3.5インチ・タイプから選ぶことになる。

3.5インチIDEハードディスク(左)と2.5インチIDEハードディスク(右)
2.5インチ・タイプは3.5インチ・タイプのちょうど半分の面積を占める(厚みは半分以下)。デスクトップPCには、高速かつ安価な3.5インチ・タイプの方を選べばよい(2.5インチ・タイプもデスクトップPCに搭載できなくはないが、特にメリットはない)。
 

 INDEX
  [連載]PCメンテナンス&リペア・ガイド
  第8回 増設前に知っておきたいハードディスクの基礎
  1.標準インターフェイス規格「IDE」の現状
    2.増設用ハードディスクは何をもって選ぶ?
 
「PCメンテナンス&リペア・ガイド」

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