最適ネットワーク機器選択術

コラム
USBによるイーサネット接続

島田広道
2000/07/07

 従来、デスクトップPCをイーサネットに接続するならPCIやISAのスロットに、またノートPCの場合はPCカード スロットに、それぞれ装着できるイーサネット カードを利用するのが普通だった。しかし、最近になって新しいイーサネットの接続形態が現れた。それがUSBイーサネット アダプタである。

USBイーサネット アダプタが便利な場面とは?

 まずは、どんなユーザーにとってUSBによるイーサネット接続が便利なのかを考えてみよう。以下、どのPCもUSBが利用できるという前提で話を進める。

 まず思いつくのは、PCの拡張スロットがまったく空いていない場合だ。当然、スロットに装着するタイプのネットワーク カードは利用できないが、USBならハブでポート数を増やせるのでUSBイーサネット アダプタなら利用できる。

 その点でUSBイーサネット アダプタが活躍しそうなのは、拡張性の低いノートPCである。特に薄型サブノートPCでは、PCカードスロットが1つしかないことが多く、USBも活用しないと同時に接続できる機器は非常に少なくなってしまう。たとえば、すでに携帯電話やPHSと通信するPCカードを導入している場合、イーサネット カードもPCカードで接続すると、両方同時に利用することはできなくなってしまう。各種のメモリ カードもPCカード アダプタを用いてPCカード スロットに装着するのが一般的だ。そこでUSBイーサネット アダプタを選べば、同時に両立できる。

USBイーサネット アダプタの例
これは10BASE-Tと100BASE-TXの両方に対応したコレガ製のUSBイーサネット アダプタ「FEther USB-TX」。大きさは67.8(W)×55.4(D)×25.3(H)mmと小さい。電力はUSBケーブルから供給を受けるので、電源アダプタは必要としない。

 また毎日持ち歩くノートPCなら、PCカードよりUSBイーサネット アダプタのほうが向いている場合もある。机上でノートPCを使うときには、イーサネットだけではなく、マウスやプリンタなども接続しているかもしれない。この際すべてのデバイスをUSBインターフェイスで接続すれば、ちょっとしたポート リプリケータのようにすべてのデバイスを接続したり、取り外したりできる。こうすると、外出時にノートPCを持ち出すときは、USBケーブルと電源ケーブルをノートPCから外すだけで済む。一方、PCカードでイーサネットを接続した場合は、ほかのケーブルと併せてPCカードも着脱する必要があり、少し手間がかかってしまう。

 以上のように、USBイーサネット アダプタは主にノートPCで役に立つといえる。

USBイーサネット アダプタのメリット/デメリット

 実際のUSBイーサネット アダプタは、以上の写真のような製品である。これを用いるメリットとデメリットについて、さらに詳しく探ってみよう。

■セットアップはPCカードなみに手軽

 USBイーサネット アダプタのメリットの1つは、セットアップの手軽さである。外付け機器なので、PCIやISAのカードのようにPCのケースを開けて作業する必要はない。しかもUSBはホットプラグに対応しているので、PCが稼働している状態でUSBの空きポートにUSBイーサネット アダプタを接続すれば、後はOSがプラグ アンド プレイで自動的にアダプタを検出するので、ユーザーが適切なデバイス ドライバを指定して組み込めばよい。またUSBイーサネット アダプタを取り外すときには、OSからアダプタの機能を停止させた後、USBポートよりケーブルを引き抜けばよい。いったんデバイス ドライバを組み込めば、再度アダプタを装着するだけで自動的にネットワーク接続が回復する。PCIやISAのカードのようにPCの電源を切る必要はない。こうした機能は、すでにPCカードで実現されているものだが、セットアップの手軽さという点ではPCカードとUSBデバイスは同等だといってよいだろう。

■ほかの機器と共存しやすい

 PCIやISA、PCカードでは、スロット数を後から増やすことはできない(特殊な増設ユニットを用いれば不可能ではないが、一般的ではない)。これに対して、USBはハブを用いて最大127台まで同時にPCに接続できるという特徴がある。それだけUSBイーサネット アダプタはほかのUSBデバイスやほかのインターフェイス デバイスと共存しやすいわけだ。また、USBデバイスを何台PCにつなげても、消費されるシステム リソースはUSBホスト コントローラの分だけで済む。PCIやCardBus同様、USBでも各デバイスが消費するIRQを合計1つに抑えることが可能である。

■転送レートは速くはない

 USBイーサネット アダプタというよりUSBのデメリットとして、転送レートが遅いことがまず挙げられる。現行のUSBリビジョン1.1では、最大転送速度は12Mbits/sなので、原理的に10BASE-T程度の性能しか発揮できず、100BASE-TXの性能はまったく活かせない。しかも12Mbits/sというのは仕様上の最大理論速度であり、製品レベルの最大転送速度はもっと遅い可能性もある。実際、仕様表に最大転送速度8Mbits/sと記載されていたUSBイーサネット アダプタもあった。また、USBの仕様上、ハブなどを介して複数のUSBデバイスをPCにつなげた場合、12Mbits/sという最大転送速度を複数のUSBデバイスで分け合うことになるので、USBイーサネット アダプタと別の高速なUSBデバイスを併用すると、さらに速度が落ちる場合もある(*1)。

*1 このような場合、PCIカードのUSBホスト コントローラを増設すれば、各コントローラごとに12Mbits/sの速度が確保されるので、速度の低下を抑えられる。

■USBのあるPCでしか使えない

 ほかのネットワーク接続手段に比べて、利用できるプラットフォームが限定されるのも、USBイーサネット アダプタのデメリットだ。当然のことながら、USBイーサネット アダプタが利用できるのは、ハードウェア/ソフトウェアともにUSBをサポートしたPCだけである。現状ではUSBホスト コントローラを装備し、OSにWindows 98/98 Second EditionあるいはWindows 2000を採用しているPCだけが、USBイーサネット アダプタを利用できるプラットフォームといえる。Windows 95はOSR2以降でUSBをサポートしているが、その対応は限定的なので、USBイーサネット アダプタは使えないことが多い。PC UNIXなどほかのOSについては、今後のUSBサポート次第だろう。

USBイーサネット アダプタの選択ポイント

 ネットワーク カードをラインアップしているメーカーの多くは、すでにUSBイーサネット アダプタを開発・販売している。どのメーカーの製品も、それほど大きな違いはないので、数ある製品から1つを選ぶのは少々厄介だ。

 イーサネットの速度については、主流は100BASE-TXに移っており、10BASE-T対応品は生産を完了しているメーカーすらある。価格も10BASE-Tが3000円台から、また100BASE-TXが4000円台からと、それほど差はない。USB接続では100BASE-TXを選んでも性能面のメリットはないが、これだけ価格差が小さいなら、より新しい100BASE-TXを選ぶほうが無難だ。

 外観からは、USBケーブルが取り外せるタイプと、アダプタがUSBケーブルと一体になっていて取り外せないタイプに分類できる。前者は、USBケーブルを傷めてしまっても交換して解決できるというメリットがある。一方で、後者のほうは一般的にUSBケーブルは短く、またUSBケーブルをなくすこともないので持ち運ぶには便利だ。この違いについては、用途によってどちらかを選ぶことになるだろう。

 確認しておきたいのは、対応するUSBのリビジョンだ。多くの製品は1.1対応だが、なかにはUSBの最初のリビジョンである1.0対応のものもある。ところが、すでに現行の1.1の後継である2.0という新しいリビジョンが公開されており、早ければ今年末から対応製品が出荷されるという。重要なのは、2.0対応製品は1.1との互換性を維持しているが、1.0との互換性は公式には保証されていないことだ(1.0から1.1へのリビジョン アップで変わったのは主にハブ関連であり、USBデバイス側については1.0と1.1でほとんど変化していないはずだが)。順調にいけば、USB製品はいずれ1.1から2.0対応に切り替わるだろう。したがって、製品寿命を少しでも長く維持するために、現時点でUSB製品を購入するなら、イーサネット アダプタに限らず1.1対応のものを選びたい。

 ソフトウェア サポートについては、Windows 2000用ドライバが用意されていることを確認しておきたい。Windows 98/98 Second Edtion用のドライバは、まず間違いなく製品に標準添付されるが、Windows 2000については、ドライバが用意されているとしても、メーカーのホームページからダウンロードしなければならないことが多いようだ。

関連情報
USBの次なる一歩 − 480Mbits/sの高速転送をサポートしたUSB 2.0 −

関連リンク
FEther USB-TXの製品紹介ページ

 
     
 INDEX
  [特集]最適ネットワーク機器選択術
  1. イントロダクション
  2. イーサネットの基礎の基礎
    2-1. イーサネットの基本はCSMA/CD方式にある
      コラム:IEEE802の各種規格
    2-2. イーサネットのフレーム形式とコリジョン ドメイン
    2-3. 現在の主流、100BASE-TXを知る
      コラム:10BASE/100BASE以外のLAN規格
  3.
    3-1. デスクトップPCには100BASE-TX PCIカードが最適
      コラム:できれば避けたいISAイーサネット カード
    3-2. 一般的な100BASE-TX PCIカードの選択ポイント
    3-3. 100BASE-TX PCIカードの付加機能をチェックする
      コラム: イーサネット カードにおけるサーバ用とクライアント用の違い
    3-4. ノートPC用にはPCカードから選ぶ
    3-5. 100BASE-TX CardBusか、10BASE-T 16bit PCカードか?
    3-6. PCカードならケーブルの接続方式がポイント
    3-7. イーサネット ケーブル直結方式は便利か?
    コラム:USBによるイーサネット接続
    3-8. デバイス ドライバは重要な選択ポイント
    3-9. もう1つのソフトウェア サポート − ユーティリティ
      コラム:Linuxのためのイーサネット カード選び
  4.
    4-1. ハブ/スイッチの種類と機能
    4-2. ハブ/スイッチ選択の基礎知識
      コラム:そのほかのネットワーク機器
    4-3. ハブ/スイッチ選択のポイント

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