解説

IDF 2003 Fallレポート
4つのTでIntelがサーバとPCを変革する

3. サーバもPCI Expressへ移行

元麻布春男
2003/10/09

解説タイトル


サーバ向けロードマップを更新

 さて、ロードマップをあいまいにしたデスクトップやモバイルと異なり、エンタープライズ・プラットフォーム事業部は、キッチリとロードマップの更新を行った。まず下図はIPFのロードマップだ。Montecitoがいつになるかは書かれていないが、Montecitoを先送りし、Madison 9M(開発コード名:マディソン9M)を2004年にリリースすることを発表した際に2005年と語られており、現時点でそれに変更はないものと考えられる。ポール・オッテリーニ社長の基調講演で明らかになったマルチ・コアのTanglewood(開発コード名:タングルウッド)だが、現時点ではいつ登場するのか明らかにされてはいない。が、Montecitoの2年後、2007年ごろというところだろう。

IPFのロードマップ
2004年以降は、Future(将来)となっており、年が明らかになっていないが、IntelはMontecitoを2005年に出荷することをすでに明言している。

 今年はこれまでハイエンド・サーバ向けだったIPFをデュアルプロセッサ構成のボリューム・ゾーン向けにまで下ろしてきた。しかし、ボリューム・ゾーン向けのIntel純正チップセットがないこと、OSサポートが限られていることなどから、急速な普及には至っていない。ただし、Intelもこれは承知しており、エンタープライズ・プラットフォーム事業部の事業部長でもあるマイク・フィスター(Mike Fister)上級副社長は、2004年末にPCI Expressベースの新しいチップセットをリリースする計画があることを明らかにした。また、64bit版Windowsの入手性の悪さ、さらには日本語版そのものが存在しない現状についても、特にワークステーション向けを重点にMicrosoftに働きかけを行っているということであった。

 一方、エンタープライズ向けのIA-32プロセッサだが、そのロードマップを下図に示した。次に登場するのは、3次キャッシュ容量を増やしたIntel Xeon MPだが、2004年の比較的早い時期にデュアルプロセッサ対応のIntel Xeonとして開発コード名「Nocona(ノコナ)」で呼ばれるプロセッサがリリースされる。Noconaは、デスクトップPC向けのPrescottに相当する90nmプロセス製造によるプロセッサで、Intel Xeonとしては初めて800MHz FSBに対応する。このNoconaについては、テクニカル・セッションこそ特に用意されていなかったものの、展示会場ではIntel製チップセットによる初めてのPCI Expressのデモが、Noconaと対応チップセット(Lindenhurst/Tumwater)で行われていた(そしてこれがPrescottベースのデモがないことを余計に不自然に感じさせる)。

Intel Xeonのロードマップ
今回のIDFでは、2004年以降に登場予定のプロセッサの開発コード名が明らかになった。マルチプロセッサ向けのIntel Xeon MPには、デュアル・コア採用の「Tulsa(タルサ)」と呼ばれるのプロセッサが2005年ごろにリリースされる予定だ。またデュアルプロセッサ向けのIntel Xeonには、動作クロックを向上させた「Jayhawk(ジェイフォーク)」がリリース予定となっている。

 Noconaに少し遅れて、Intel Xeon MPシリーズにも90nmプロセス製造による開発コード名「Potomac(ポトマック)」で呼ばれるプロセッサが追加される。現時点でPotomacにどのような機能が追加されるのかは明らかになっておらず、単に動作クロックの引き上げと、キャッシュの増量のみが明らかにされている。これはその次のデュアルプロセッサ対応の「Jayhawk(開発コード名:ジェイフォーク)」も同様だ。一方、「Tulsa(開発コード名:タルサ)」については、今回のIDFでデュアル・コアのプロセッサになることが明らかにされた。ロードマップには製造プロセスが記載されていないが、90nmプロセスのJayhawkにそれほど遅れずに出てくることから、90nmプロセス製造であると考えられる。これまでの事例からいって、デュアルプロセッサ向けより先にマルチプロセッサ向けのプロセッサが、65nmプロセス製造を採用するとは考えにくいことからも予想できる。

 次の図は、IA-32プロセッサに対応したチップセットのロードマップだが、2004年中ごろに、すべての市場セグメントに対し、Intel純正チップセットが提供されることになる(Lindenhurst-VSはLindenhurstの廉価版)。Intel Xeon MP向けのTwin Castle(開発コード名:ツイン・キャッスル)チップセットはPotomacとTulsaに、Intel Xeon DP向けのLindenhurst、Lindenhurst-VS、Tumwaterの各チップセットはNoconaとJayhawkに対応する。これら2004年にリリースされるチップセットは、すべてPCI ExpressとDDR-IIメモリに対応したものだが、DDR-IIメモリだけでなく既存のDDRメモリにも対応している。おそらく上述した2004年末にリリースされるIPF向けの新しいチップセットも、同様の機能を備えているものと考えられる。

IA-32プロセッサ対応チップセットのロードマップ
この図を見ると、2004年にはすべてのセグメントでPCI Expressが採用されることが分かる。将来を考えると、ここ1年ほどはPCIカードへの投資は控えた方がいいかもしれない。

 次にクライアントPCの姿を変えると思われるPCI Exporessと新マザーボード規格「BTX規格」の現状を紹介する。


 INDEX
  IDF 2003 Fallレポート
  4つのTでIntelがサーバとPCを変革する
    1.発表間近のPrescottが展示されなかったIDF
    2.Intelが注力する「4つのT」とは
  3.サーバもPCI Expressへ移行
    4.PCI ExpressとBTX規格がクライアントPCを変える
 
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