特集
Rambusは終えんを迎えてしまうのか?

3. RDRAMの将来性を検証する

元麻布春男
2002/07/20


 あまり知られていないことだが、従来のDirect RDRAMの主流だったPC 800メモリに対して、より高速な「PC1066」の市販がすでに開始されている。Direct RDRAMの将来性を確認すべく、この新しいメモリについて探ってみる。

PC1066メモリを「認識」するIntel 850E搭載マザーボード

 Intel 850Eチップセットは、PC800メモリよりも高速なPC1066メモリを「公式」にはサポートしていない。しかし、前ページのインタビューでトバック氏が「Intel 850Eチップセットについては、PC1066メモリがサポートされたことを嬉しく思っています」と述べているように、「非公式」にはPC1066をサポートしているようだ。Intel 850Eチップセットが公式にサポートし、かつ正常に動作するものとしてバリデーションを行っているメモリは、あくまでもPC800メモリまでであるが、もしPC1066が動作するとしたら、性能が気になるところだ。

市販されているPC1066メモリ
外見は従来のPC800メモリとほとんど変わらない。ただし、表面に貼ってあるラベルには「1066X16」と記されており、PC1066対応でデータ幅が16bitのRIMMであることを表している。

 そこで、Intel 850Eを搭載するIntel純正マザーボード「D850EMV2」(製品情報ページ)に、市販のPC1066 RIMM(上の写真)を実装したところ、このメモリは以下の画面写真のように認識された。 

PC1066メモリを装着したときのBIOSセットアップの表示
これはPC1066メモリをIntel製マザーボード「D850EMV2」に装着したところ。左の写真にあるFSB 533MHzのプロセッサでも、右の写真にあるFSB 400MHzのプロセッサでも、メモリのレーティング(「RIMM1」「RIMM2」の欄)は「OTHER」と表記される。少なくともこの表示は、実装されているメモリが公式サポートのPC800およびPC600のどちらでもない、ということを示していると同時に、PC800でもPC600でもないメモリが実装されることをBIOSが想定している、ということも示している。BIOSが知らない(Unknown)のとは話が違うし、いわゆるオーバークロッキングというわけでもない。そもそもIntelマザーボードのBIOSには、オーバークロッキングのためのオプションは用意されていない。

 これが実際にどのようなメモリ・バス・クロックで動作しているかをユーティリティで確かめたところ、メモリ・バスは533MHzに設定されていることが分かった(下の画面)。つまりD850EMV2は、非公式とはいえ、PC1066をサポートしているのである。もちろん、これはサードパーティによるオーバークロッキングとは異なる。また、Intelが発行しているPentium 4プロセッサの性能に関する公式資料(パフォーマンス・ブリーフのページ)でも、2本のRDRAMチャネルが、Pentium 4のシステム・バスに見合った4.2Gbytes/sならびに3.2Gbytes/sのメモリ帯域を提供できる、と記されている。4.2Gbytes(=1066MHz×2倍クロック×2チャネル)のメモリ帯域を提供するには、PC1066メモリが必要になることはいうまでもない。

ユーティリティによるPC1066メモリの認識状況
これは上のBIOSセットアップ画面(左のFSB 533MHzシステム)のようにメモリが認識されている状態で、Windows XPを起動し、MadOnion.comのベンチマーク・プログラムであるPCMark2002のシステム情報で、メモリについて表示したものだ。メモリのクロック周波数を表す「Frequency」欄は「533MHz」になっており、実装されているメモリがPC1066(クロック周波数は1066MHz=533MHz×2)であることを示している。つまり、D850EMV2マザーボードは、非公式にPC1066メモリをサポートしていることになる。


PC1066メモリがバリデーションされなかったワケ

 どうやらIntel 850Eチップセットは、当初はPC1066メモリをサポートする予定だったと考えられる。にもかかわらず、結局バリデーションされなかったのは、Intel社内のリソースの問題ということのようだ。リソースの問題というのは、いい換えれば「バリデーション作業を行う予算がない」ということであり、同じことがIntel 850Eのサウスブリッジ(I/Oコントローラ・ハブ)が古いICH2に据え置かれた理由としても挙げられている。つまり、IntelとしてはDirect RDRAMのプラットフォームの将来性に疑問を持っており、そうである以上、そこに割く予算はない、ということだと読める。実際、Intelが公式/非公式に明らかにした情報に、Intel 850Eの後継となるDirect RDRAMサポートのチップセットの存在は確認されていない。現在の予定では、IntelにとってIntel 850EはDirect RDRAM対応の最後のチップセット、ということになる。

 では、なぜ自ら将来性を懸念するDirect RDRAMを、いまだにロードマップ上のハイエンドに位置付けているのか。それを理解するためにも、Direct RDRAM搭載システムの性能を確認してみることにしたい。ここで用意したのは、Direct RDRAMをサポートしたプラットフォームとして前述のIntel 850Eチップセット搭載マザーボード「D850EMV2」と、DDR SDRAMをサポートしたプラットフォームとして、Intel 845Gチップセットを用いたIntel純正マザーボード「D845GBV」(製品情報ページ)の2種類だ。組み合わせるメモリは、Direct RDRAMがPC800-40 RIMMとPC1066 RIMMの2種、DDR SDRAMがPC2100 DIMMDDR-266CL2)である。

Direct RDRAMテスト環境 DDR SDRAMテスト環境
マザーボード Intel D850EMV2 Intel D845GBV
システムBIOSのバージョン P14(2002年7月中旬の時点で最新版) P04(2002年7月中旬の時点で最新版)
プロセッサ Pentium 4-2A GHz(FSB 400MHz)、
Pentium 4-2.53GHz(FSB 533MHz)、いずれもNorthwoodコア
メモリの種類 PC800 RIMM、PC1066 RIMM PC2100 DDR SDRAM DIMM(DDR-266、CL2)
メモリ容量 256Mbytes
グラフィックス RADEON 8500 64Mbytes
ディスプレイ設定 1024×768ドット/32bitカラー、85Hz
ハードディスク 7200RPMUltra ATA/100対応IDEハードディスク(Seagate製Barracuda ATA IV)
サウンド AC'97 CODEC(オンボード)
表区切り
テストに用いたPCシステム環境

 これらを組み合わせた3種類の環境、すなわち、

  • D850EMV2+PC1066 Direct RDRAM
  • D850EMV2+PC800 Direct RDRAM
  • D845GBV+PC2100 DDR SDRAM(DDR-266)

に、NorthwoodコアのPentium 4-2.53GHz(FSB 533MHz)とPentium 4-2A GHz(FSB 400MHz)の2つを組み合わせた合計6種類の構成で、代表的なベンチマーク・テストとして、SYSmark2002と3DMark 2001 SE、Quake III Demo002を実行した。

プロセッサのグレードで大きく異なるメモリ性能

 ベンチマーク結果の詳細は次ページを参照していただくとして、ここではアプリケーション・ベンチマークであるSYSmark2002の結果を抜き出してグラフにしてみた。

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Pentium 4-2A GHz搭載システムにおける各メモリの性能差(SYSmark2002)
Direct RDRAMとDDR SDRAMの間には、ほとんど性能差がないことが分かる。

 まず、Pentium 4-2A GHzでの結果(上のグラフ)を見ると、PC1066メモリとPC800メモリ、DDR-266メモリで、性能差がほとんどないことが見てとれる。通常、この種のベンチマーク・テストに1〜3%程度の誤差が含まれることを考えると、なおさら性能向上の度合いは小さい。メモリの帯域幅を測定するPCMark2002のMemoryテストでは、Direct RDRAMによるメモリ帯域拡大の効果がDDR-266に比べて8〜10%ほど見られたが、現在DDR-266メモリの価格を1とすると、PC800メモリが約1.5倍、PC1066メモリが約3倍に相当することを考えれば、この程度の性能差では、ハイエンド分野とはいえ、到底生き残ることはできないだろう。

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Pentium 4-2.53GHz搭載システムにおける各メモリの性能差(SYSmark2002)
2A GHzでの結果と比べ、Internet Content CreationとOffice Productivityの両方で、Direct RDRAMの優位性が表れている。

 ところが、Pentium 4-2.53GHzでの結果(上のグラフ)に目を移すと、様子が変わってくる。PC800メモリやPC1066メモリによる性能向上が明らかに現れているのだ。プロセッサの能力そのものが向上したことに加え、プロセッサ・バス(FSB)の帯域幅がPC1066メモリの帯域に見合った4.2Gbytes/sになったことが、このような結果になったものと考えられる。逆にいえば、Pentium 4-2A GHzではPC1066メモリの帯域を十分に活用できないものと思われる。そういう意味では、IntelがハイエンドにのみDirect RDRAMを残していることも分からないではない。

RDRAMの性能は良好だが……

 もちろん、今後もPentium 4の動作クロック周波数の向上は続く。すでにIntelの幹部は2002年内に3GHz動作のPentium 4をリリースすることを公言している。FSBのクロック周波数も、長期的に見れば現在の533MHzから666MHz、800MHzと引き上げられていくだろう。こうしたプロセッサの性能向上に対し、現時点で最も大きなヘッドルーム(今後の性能向上のための余裕)を確保できるのがDirect RDRAMであることも間違いない。

 しかし前述のとおり、Intelはこうした将来のプロセッサに対して十分なメモリ帯域を確保する方法として、すでにあるDirect RDRAMを選ばなかった。前述のとおり、Intelは次期Pentium 4のハイエンドPC向けチップセットで、デュアル・チャネルのDDR SDRAMを採用する予定であり、ハイエンドでもメイン・メモリはDirect RDRAMからDDR SDRAMに変わっていくようだ。どんなに性能が良かろうと、PC1066を購入しようと考えるユーザーは、現時点でのIntelの方針が上記のようなものであることを知っておく必要がある。記事の終わり

  関連リンク 
Intel 850E搭載マザーボード「D850EMV2」の製品情報ページ
Intel 845G搭載マザーボード「D845GBV」の製品情報ページ
Pentium 4の性能に関する資料(パフォーマンス・ブリーフ)
 

 INDEX
  [特集]Rambusは終えんを迎えてしまうのか?
    1.RDRAMの高速化に将来を託す
    2.家電やネットワーク機器で生き残るRambus
  3.RDRAMの将来性を検証する
    4.ベンチマーク・テストの詳細結果
 
 「System Insiderの特集」


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