ノートPCのディスク環境まるごとアップグレード

3.コピーに必要な機材をそろえる

澤谷琢磨
2001/07/14

 ここでは、ハードディスク間のコピー作業に必要なハードウェアとソフトウェアの選び方や購入について解説しよう。

新しいハードディスクの購入ルートを検討する

 購入する機材の中で最も重要なのは、もちろん新しいハードディスクだ。ノートPCに使われているのは、デスクトップPC向けの3.5インチ・タイプよりずっと小さい2.5インチ・タイプのハードディスクである。まずは、この2.5インチ・ハードディスクを入手するルートを検討してみよう。これによってハードディスクの選び方も変わってくる。

 2.5インチ・ハードディスクを入手するルートとしては、

  1. PCショップで販売されているバルク品*1を購入する
  2. 周辺機器ベンダがパッケージ化した製品を購入する
  3. ノートPCのベンダが用意している純正オプションを購入する

の3つがある。1は最も安価に購入できるが、交換対象のノートPCにおける動作保証や動作確認はなく、実際に動かない可能性もほかのルートより高い。2はやや割高だが、ノートPCでの動作確認情報(保証ではない)を公開しているベンダもあり、1より安心して購入できる(メルコによるストレージ製品の動作確認リストの例)。残る3は、もちろん間違いなく動作することが保証されるが、1に比べるとかなり割高なことが多く、また容量の種類も少なく選択の自由度が低い。

*1 バルク品とは、ビニール袋やエアキャップなど簡素な包装で店頭販売されている商品のこと。品質保証はショップが規定するなど、一般的な化粧箱入りの商品とは販売方法が異なる。

 2や3のルートで購入するなら、この後に述べる2.5インチ・ハードディスクを選ぶポイントなどは、特に気にする必要はない。動作保証あるいは動作確認のリストから、自分のノートPCに適合する製品を購入すればいいからだ。選択の余地は容量ぐらいしかないので、迷うことはないだろう。

 本稿では、価格を優先して1のルートで購入することを想定し、自分のノートPCに適した2.5インチ・ハードディスクを選ぶ方法を解説する。

ハードディスクの「厚さ」に要注意

 デスクトップPC用の3.5インチ・ハードディスクを購入する際には、容量と性能(スピンドル回転速度)、価格のバランスのみ考えれば十分な場合が多い。それに対し、ノートPCでは、サイズや発熱など制約が強いため、ほかにも考慮すべきことがいくつもある。

 注意点の筆頭は、ハードディスクの「厚さ」である。ノートPCに使われている2.5インチ・ハードディスクの外形寸法のうち、幅や奥行きはほぼ共通だが、厚さだけは共通ではない。2.5インチ・ハードディスクには、厚みの異なる製品が何種類もある。従って、交換する新しいハードディスクとしては、元のハードディスクと同じ厚さか、より薄いもので、かつ大容量のものが必要となる。

 そこでまず、ノートPCに内蔵されている元の2.5インチ・ハードディスクの厚さを調べよう。これはノートPCを分解してハードディスクを取り外さなくても、Windows 2000上からハードディスクのベンダ名と型番を確認することで簡単に調査できる(下の画面)。具体的な方法は、「連載:PCメンテナンス&リペア・ガイド 第1回」の「2.デバイスやディスク・ドライブの詳細を探る」を参照していただきたい。

デバイス・マネージャでハードディスクを表示したところ
ハードディスクのアイコンの横に並ぶ文字列のうち、先頭の「IBM」はベンダ名を、また残りの文字列「DJSA-220」は型番を表す。こうしてベンダ名と型番が分かれば、Webサイトから外形寸法などのスペックを入手できる。

 製造ベンダが分かったら、ハードディスク・ベンダのWebサイト(下表参照)にアクセスし、調べた型番から、該当するハードディスクのスペックシートを探し出す。その中に記してある厚さ(英語では「Height」)が、もし9.5mmかまたは12.7mm(12.5mm)ならば、新しいハードディスクは比較的容易に入手できるので安心だ。17mmや19mm厚ならば、より薄い9.5mmや12.7mm(12.5mm)厚のハードディスクで代用できる可能性が高い(これを確認するには、実際にハードディスクを取り出してみるしかない)。やっかいなのは8.45mm厚の場合で、現在のところこの厚さの大容量ハードディスクは登場しておらず、また入手性もよくない。最大容量も10Gbytes程度と今となっては少し物足りない。ノートPC側のサイズに余裕があれば、1mm以上厚い9.5mm厚のハードディスクでも物理的には装着できるかもしれないが、耐衝撃性や放熱などの問題もあるので、残念ながら適当な製品が発売されるまで、作業は延期した方が無難だろう。

ベンダ 製品情報ページのURL
IBM http://www.storage.ibm.com/hardsoft/diskdrdl/
prod/travelstar.htm
東芝 http://www3.toshiba.co.jp/storage/stspecj.htm
日本IBM http://www-6.ibm.com/jp/oemj/storage/product/
25hdd8a/25hdd8ai.html
日立製作所 http://www.hitachi.co.jp/Prod/comp/storage/dk25/
index-j.html
富士通 http://hdd.fujitsu.com/drive/mobile.html
2.5インチ・ハードディスクの製造ベンダ一覧

ハードディスクのネジ穴の位置にも要注意

 次に確認することは、ハードディスク側に設けられているネジ穴の位置だ。ネジ穴は、ノートPCにハードディスクそのものを固定したり、防護用カバーをハードディスクに取り付けたりするのに重要な役割を果たす。しかし、最新製品だけならともかく、少し前の世代の製品まで含めると、2.5インチ・ハードディスクのネジ穴の位置は完全に統一されているとは言い難いようだ。つまり、最低限固定に使われるネジ穴だけでも、新旧ハードディスクで同じ位置に合わせなければならない。

ハードディスクのネジ穴
赤枠がネジ穴である。このように両側面に2つずつ、また底面に4つ設けてある製品が多いようだ。この位置が違うと、最悪ハードディスクを固定できなくなる。

 確実にネジ穴の位置が合う製品を選ぶには、元のハードディスクのネジ穴位置をメモしておき、ショップ店頭で新しいハードディスクを実際に見て確認することだ。

元のハードディスクより高速回転の製品は避けた方が無難

 一見すると無縁のように思えるかもしれないが、ディスク交換では消費電力の問題も無視できない。消費電力の増大は、バッテリ駆動時間にダイレクトに影響するうえ、発熱量の増大も招くからだ。薄型のノートPCの場合は特にそうだが、PC内部で実際に発生する熱量が設計時に見積もられた量より多いと、放熱不足による温度上昇がパーツの故障を引き起こす可能性がある。そこで注意しなければならないのは、ハードディスクのスピンドル回転速度だ。これが速いほど消費電力も増加するからである。多くのノートPCでは、4200RPMのハードディスクを搭載しており、また流通している製品も4200RPMがほとんどだが、5400RPM前後の高性能品も少ないながら販売されている。少しでも性能が高い方がいいからと、回転速度の速い製品を選ぶのは故障を招く原因ともなるので避けた方が無難である。

 ハードディスクのスペックシートには、消費電力も記載されているので、新旧ハードディスクの消費電力を、カタログ値で比較することも可能である。ただし、ハードディスクの製造ベンダごとに消費電力の測定方法/条件が異なる場合があるほか、スペックの項目も一致しない場合がある。新旧ハードディスクのベンダが異なる場合は、カタログ値の比較をあまり過信しない方がよい。

 なお、調べた限りでは、2.5インチ・ハードディスクの記録容量と消費電力の増減は、あまり連動していない。つまり大容量だから消費電力が大きいとは限らない。

容量はどうする?

 残る問題はハードディスクの容量である。これは予算に応じて選ぶことになるが、すでに10Gbytesのディスクが1万円台前半と十分に値下がりしており、10Gbytes未満は単位容量当たりの単価が高くなるので、あまりお勧めしない。2001年7〜9月は、価格も考慮すると10G〜30Gbytesの製品が狙い目だろう。最新の小売価格(PCショップのバルク品)を確認するなら、サハロフ秋葉原レポートのHDDの欄が便利だ。

 基本的に、同じ容量なら、製造ベンダが異なっても価格はそれほど変わらない。ただ、同じ容量でも旧製品と新製品では、無視できない価格差が生じることがある。新製品の方が、性能が高かったり騒音レベルが低かったり、といったメリットがあるので、まずはスペックの違いを確認するとよいだろう。

厚さ 容量 ベンダ名 型番 実勢価格
9.5mm 10Gbytes IBM DJSA-210 1万1000円
東芝 MK1016GAP 1万1200円
15Gbytes 東芝 MK1517GAP 1万3200円
20Gbytes IBM DJSA-220 1万4500円
IC25N020ATDA04 2万300円
東芝 MK2016GAP 1万5300円
日立製作所 DK23BA-20 1万4800円
富士通 MHM2200AT 1万5500円
30Gbytes IBM IC25N030ATDA04 3万1300円
東芝 MK3017GAP 2万4000円
日立製作所 DK23CA-30 2万3800円
12.5mm 30Gbytes IBM DJSA-230 2万8400円
秋葉原のPCショップでの2.5インチ・ハードディスク実勢価格(2001年7月上旬現在の価格)
2001年7月上旬の時点で、秋葉原のPCショップで販売されている10Gbytes以上の2.5インチ・ハードディスクを一覧にしてみた(高速回転型の製品は除いている)。実勢価格は、サハロフ佐藤氏の秋葉原レポート2001年7月7日号から計算した平均値である。IBMのIC25Nから始まる型番は新製品で、騒音レベルを下げる「流体軸受けモータ」が採用されているのが特徴だ。人気が高いため、価格設定も高めである。
 
購入した2.5インチ・ハードディスク
これは、秋葉原のPCショップで購入したIBM製Travelstar 20GN(DJSA-220)という9.5mm厚/20Gbytesの2.5インチ・ハードディスクだ。価格は約1万7000円。ハードディスク単体ではショップによる10カ月保証があるが、ノートPCとの接続互換性に関しては、まったく保証なしである(もっとも、編集部でテストしたノートPCではすべて動作した)。

2.5インチ・ハードディスク用外付け増設キットを購入する

 前述のとおり、本稿のハードディスク・アップグレードでは、2.5インチ・ハードディスクを外付けハードディスク増設キットに組み込んで、PCカード経由でノートPCに接続する必要がある。そうした製品のうち代表的なものを以下に記そう。

ベンダ名 製品名 コメント
プラネックスコミュニケーションズ eXtreme Drive(RX-25Hシリーズ + RX-PCM) RX-25Hシリーズは標準ではUSB接続に対応。PCカード・インターフェイスであるRX-PCMと組み合わせることで、PCカード接続を実現できる。
マイクロテックインターナショナル PortableDrive25(MPD25) USB接続モデル(MPD25U)もある。
ノバック HardDisk Station KIT(NV-HD140P) PCカード・インターフェイス同梱。別売の「USB接続キット(NV-DS200)」で、USB接続にも対応。
主な2.5インチ・ハードディスク用外付け増設キット
実勢価格はおおよそ7000円〜1万5000円程度である。

 このうち本稿では、ノバック製HardDisk Station KIT(NV-HD140P)を選んでみた。この製品は、標準でPCカードのインターフェイスを備えており、これ単体で本稿の用途に対応できる。また、オプションでUSB接続にも対応できるため、アップグレードが済んだら、デスクトップPCでも使える汎用的なUSB接続のストレージとして活用できる、というメリットもある。

試用した2.5インチ・ハードディスク用増設キット NV-HD140P用のUSB接続キット(NV-DS200)
これはノバック製HardDisk Station KIT(NV-HD140P)である(定価は1万2800円で実売価格は7800〜9000円程度)。電源はPCカードより提供される。Windows OSだけではなく、DOS用のデバイス・ドライバが付属するのが特徴である。 これは、NV-HD140PのPCカード・インターフェイスと取り替えることで、USB対応にするためのキットである(定価は7800円で実売価格は6200〜7000円程度)。左側の黒いケーブルは、電源供給用のACアダプタだ。

ソフトウェアの道具立て

 以上でハードウェアの道具立ては完了したので、次はソフトウェア選びに移ろう。必要なのは、これまでも何回か触れてきたハードディスク・コピー用ユーティリティである。この種のユーティリティは代表的な製品だけでも5〜6種類ほどあり、選択の範囲は広く、かつ入手も容易である。しかし、今回の必須条件であるPCカード接続のハードディスクに対応している製品は意外に少ない。これは、ハードディスク・コピー用ユーティリティの多くが、Windows上ではなくDOS上で動作することに関係している。

 Windowsとは違いDOSには、PCカードのコントローラおよび各種PCカードのデバイス・ドライバなど、PCカードをサポートするソフトウェアが含まれておらず、単体ではPCカードを利用できない。これを実現するのが「PCカード・サービス」あるいは「PCカード・イネーブラ」などと呼ばれるソフトウェアだ。これをDOSに組み込むと、DOS上のアプリケーションからでもPCカード接続のデバイスを利用できるようになる。

 本稿のために選んだネットジャパンの「DriveCopy 3.0」というハードディスク・コピー用ユーティリティも、単体ではPCカード接続には対応していない(DriveCopy 3.0の詳細は、「特集:ディスク環境まるごとアップグレード」の「1.ファイル・コピーじゃ引っ越せない」を参照)。しかし、同社の「CardWare 2000 for DOS」というPCカード・サービスと組み合わせれば、PCカード接続のハードディスクにアクセスできるようになる(CardWareの製品情報ページ)。本稿では、CardWare 2000 for DOS(以下CardWare 2000)とDriveCopy 3.0の組み合わせで、ノートPCのハードディスク間コピーを行う。

ネットジャパンの「CardWare 2000 for DOS」 ネットジャパンの「DriveCopy 3.0」
CardWare 2000 for DOSは、DOSレベルでPCカードを利用できるようにするソフトウェアだ。価格は5800円。起動可能なフロッピー1枚だけで提供されるので、そのままノートPCなどをフロッピーから直接起動すれば、PCカードが利用できる状態でDOS(Caldera DR-DOS)が起動する。 2台のハードディスク間で直接コピーできるユーティリティ。価格は6000円。単体ではPCカード接続に対応していないので、本稿ではCardWare 2000とセットで利用している。両者をセットにしたパッケージ「DriveCopy 3.0バリューパック」を選んでもよいだろう(価格は8000円)。なお、新バージョンのDriveCopy 4.0が2001年8月3日にリリースされる予定だ。

 CardWare 2000は、各種ノートPCのPCカード・コントローラをサポートするほか、ATA(IDE)相当のPCカード用インターフェイス標準規格に対応したデバイス・ドライバも同梱されている。そのため、この標準規格に対応したインターフェイスを備えるストレージなら、別途デバイス・ドライバを用意しなくても、CardWare 2000だけで、DOS上からドライブ名を割り当てたドライブとして利用できるようになる(つまりストレージ側にDOS用ドライバが付属している必要はない)。またDriveCopy 3.0が必要とする拡張Int13H*2にも対応している。なお、ATAやSCSI対応のPCカード以外は、サポート対象外となっている。

*2 Int13Hとは、BIOSが提供するディスク・アクセスのためのソフトウェア・インターフェイスのこと。通常DOSアプリケーションは、このインターフェイスを介してディスクにアクセスする。拡張Int13Hとは、旧来のInt13Hに存在していた8.4Gbytes以上のディスク領域にアクセスできないという問題を解決したバージョンを指す。

 CardWare 2000が対応しているノートPCのリストは、ネットジャパンのWebサイトから参照できるので、事前に調べておくとよい。なお、Windows全盛の現在では、単体で配布されているDOS用のPCカード・サービスはほとんどなく、比較的容易に購入できるのはCardWare 2000 for DOSくらいしかないようだ。

  関連記事(PC Insider内) 
PCメンテナンス&リペア・ガイド
 第1回 Windows上で調べられるPCのハードウェア構成
  2. デバイスやディスク・ドライブの詳細を探る
ディスク環境まるごとアップグレード
 1. ファイル・コピーじゃ引っ越せない
 
  関連リンク 
ストレージ製品の動作確認リスト
サハロフ佐藤氏の精力的な調査による秋葉原PCパーツの最新価格情報
2.5インチ・ハードディスク「Travelstar」シリーズの製品情報ページ
ストレージ・デバイスの製品情報ページ
2.5インチ・ハードディスク「Travelstar」シリーズの製品情報ページ
2.5インチ・ハードディスクの簡易仕様などを記したページ
2.5インチ・ハードディスクシリーズの製品情報ページ
2.5インチ・ハードディスクの製品情報ページ
HardDisk Station KIT(NV-HD140P)とUSB接続キット(NV-DS200)の製品情報ページ
eXtreme Driveシリーズの製品情報ページ
PortableDrive25(MPD25)の製品情報ページ
DriveCopyの製品情報ページ
CardWareの製品情報ページ
CardWare 2000 for DOSの対応機種確認リスト
 

 INDEX
  [特集]ノートPCのディスク環境まるごとアップグレード
    1.アップグレード方法を決める
    2.セットアップ前に確認すべきこと
  3.コピーに必要な機材をそろえる
    4.ハードディスクのセットアップ
    5.ハードディスク間コピーの準備と実行
           コラム:PCカードを認識できるDOS起動フロッピーの作り方
 
「PC Insiderの特集」

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