元麻布春男の視点
Pentium 4の新ソケットにまつわるナゾ


元麻布春男
2001/08/31

 米国時間8月27日(日本時間の8月28日)、折から開かれているIntelの開発者向けカンファレンス「Intel Developer Forum(IDF)」に合わせて、Intelは動作クロック2GHzのPentium 4を発表した。2000年11月21日に発表されて以来、Pentium 4のクロックは順調に上がり続けている(インテルの「Pentium 4に関するニュースリリース」)。そのため、単なるクロックアップでは、あまり注目されなくなっているが、今回の発表にはもう1つ目新しい特徴がある。それは、かねてから予告されていた新しいパッケージの採用だ。

パッケージによって熱設計上の消費値が異なるナゾ

Pentium 4の2種類のパッケージ
左がこれまでの423ピン対応のパッケージ、右が新しい478ピンのμPGA478パッケージ。パッケージの大幅な小型化が行われていることが分かる。

 今回発表されたPentium 4は、動作クロック1.9GHzと2.0GHzの2種類だが、これまでと同じ423ピンのソケットに対応したパッケージに加え、478ピンのソケットに対応したパッケージが用意される。μPGA478と呼ばれる新しいパッケージは、ピン数は増えているものの、「μ(マイクロ)」という名称でも分かるとおり、パッケージとしてはむしろ小型になっている。

 今回発表された2つのパッケージのPentium 4は、パッケージこそ違え、いずれも同じ0.18μプロセスによる、同一コアを用いたプロセッサのハズだ。にもかかわらず不思議なことに、423ピン・パッケージと478ピン・パッケージでは、熱設計上の消費電力(TDP)が異なる。423ピンが71.8Wであるのに対し、478ピンは75.3Wにも達する(いずれも2GHz版)。TDPの増大を反映したものなのか、478ピンのプラットフォームには、これまでの423ピンとは若干異なる点も見られる。

 下の写真は、2GHzのPentium 4と同時にリリースされたIntel純正のマザーボード「D850MD」だ。D850MDは、3本のPCIスロットを備えたmicroATXフォームファクタのマザーボードだが、同じコア・デザインを流用し、5本のPCIスロットを備えたATX版である「D850MV」もラインナップされている。いずれにしても、Intel純正のマザーボードであるD850MD/MVは、第1世代の478ピン・プラットフォームのリファレンスと考えてよい。

大きな写真へ
Intel純正のマザーボード
478ピン対応のPentium 4用マザーボード「D850MD」。microATXフォームファクタを採用しており、小型のケースにも実装可能になっている。

 このマザーボードの写真を見て、まず最初に気付くのは、プロセッサ冷却用ヒートシンクのリテンションが変わったことだ。下の写真は、新しい423ピン用のリテンションに、478ピン用のリテンションを重ねて撮ったものだが、明らかに大きくなっていることが分かる。また、ヒートシンクの固定法も、従来の金属製のクリップで留める方式から、プラスチック製クリップに組み付けられたレバーを操作して固定する方式に変わった。ちなみにこれは、リテール・パッケージ(Boxed版)のPentium III-1.0B GHzに添付されているヒートシンクの固定方法とよく似ている。

423ピンと478ピンのリテンションの違い
内側に重ねて置いたのが423ピン用のリテンション。外側のマザーボードに固定されているのが、新しい478ピン用のリテンション。このように478ピンのリテンションは、423ピン用に比べて一回り大きくなっている。

 さらに下の写真は478ピン用のヒートシンクを423ピン用のヒートシンクと比べたものだが、ここに見えるグレーのレバーを倒してヒートシンクを固定する(ヒートシンクの四隅に黒い樹脂製のツメがあり、これをリテンションにひっかけた後、レバーを倒して固定する)。この大きさの違いがTDPの違いによるものとは思えないものの、ヒートシンクが巨大化したことだけは間違いない。

ヒートシンクの違い
左が478ピン用、右が423ピン用のヒートシンク。478ピン用では、固定用のレバーが装備され、より確実にリテンションに固定できるようになった。ファンの大きさも若干大きくなっている。

478ピンPentium 4購入時の注意点

 ただややこしいのは、この大型化したリテンションとヒートシンクは、Intel純正のマザーボードと一部のOEMが採用しているものの、サードパーティ製マザーボードの中には、423ピン用と同じ小型のリテンションを採用しているものがありそうなことだ。ヒートシンク自体は423ピン用の小型のものでも問題ないのかもしれないが、小型のリテンションは、大型のヒートシンクがバンドルされたリテール・パッケージの478ピン・プロセッサと組み合わせる際に、別途ヒートシンクを用意しなければならなくなる点に注意が必要だ。

 逆に、大型のリテンションを用いる新しい478ピンのマザーボードは、リテンション取り付け用のネジ位置が異なるため、既存のPentium 4対応のケースには、うまく固定できない可能性がある。どうやら、ネジ留め式ではないプラスチック製の固定金具も用意されるようだが、少々注意が必要だ。

補助電源コネクタの省略のナゾ

 さて、もう1度写真「Intel純正のマザーボード」に戻ってよく見ると、もう1つの違いに気付く。それは、Auxiliary Power Connector(補助電源コネクタ)が省略されていることだ。これまでのIntel 850マザーボードでは、通常のATX電源コネクタに加え、プロセッサ用+12V電源コネクタと補助電源コネクタの合計3系統の電源供給を行ってきた。しかしこのD850MDでは、RIMM用といわれる補助電源コネクタが省略されている。リテンションの場合と異なり、これで既存のPentium 4用の電源ユニットが使えなくなるわけではないが、ちょっと驚いた。ただし、これもサードパーティ製マザーボードの中には、これまでどおり補助電源コネクタを用いるものもあるようだ。

 もう少し細かな違いは、背面のI/Oパネル部の構成にある。下の写真を見ると、2つの点に気付くだろう。1つはオーディオ・コネクタの左側に、USBが2ポートと100BASE-TX用のRJ45コネクタを一体化したコネクタが追加されたこと、もう1つがシリアル・ポートが2ポートに再び増えたことだ。こうしたI/Oポートは、PCベンダの要求によって、頻繁に変わる部分であり、すべてのD850MD/MVがこの構成を採用するかは不明だが、従来のIntel純正マザーボード「D850GB」とは違うパターンのI/Oパネルであることは確かである。また、D850GBに備えられていた自己診断用のLEDは、このD850MDでは省略されている(こちらは基板上に空いたままの配線パターンがないので、おそらく全モデル共通だろう)。

D850MDのコネクタ部
USBポートと一体化された100BASE-TX用イーサネット・コネクタ、シリアル・ポートが2つに増やされている点が目新しい。せっかく1ポートに減らしたシリアル・ポートを今回復活させた理由は不明だ。
  USBポートと100BASE-TXのコネクタが一体化されて装備されている。
  シリアル・ポートは、このように2ポートとなっている。

Pentium 4-2GHzの実力は?

 さて、マザーボードそのものの説明が長くなってしまったが、実際に2GHzのプロセッサを組み合わせて動作させた結果についても触れておこう。比較しやすいよう、ここでは前回の「N-Bench 1.2に思うベンチマーク・テストの公平性」とほぼ同じテストを実行してみた(システムの構成は表のとおり)。

プロセッサ Pentium 4-2GHz
マザーボード Intel D850MD
チップセット Intel 850
メモリ 256Mbytes PC800
OS Windows Me
DirectX DirectX 8.0a
画面解像度 1024×768ドット32bitカラー85Hz *1
グラフィックス・カード Leadtek WinFast GeForce 3TD
ディスプレイ・ドライバ NVIDIA Detonator 12.41
サウンド・カード ヤマハ YMF744B
サウンド・ドライバ Windows Me標準
ハードディスク Maxtor DiamondMax Plus 60
テストに用いたシステム構成
*1 DroneZmarKはV-Synch(ディスプレイの垂直同期周波数)設定の影響を受けるためドライバのOpenGL設定でV-Synchをオフにした

 下表に示したテスト結果で目立つのは、日本AMDが提供するN-Bench 1.2で、ほぼ動作クロックの比に近い性能向上が見られることだ。逆にSYSmark 2001のOffice Productivityでの性能向上は、きわめてわずかになっている。「Pentium 4はオフィス・アプリケーションに不向き」と、よく言われるところだが、ここでの結果もそれを表しているようだ。3DMark 2001の性能向上率も低いが、テスト設定の「GeForce3でハードウェアT&Lが有効」というデフォルトが影響していると思われる(ソフトウェアT&Lの設定なら、もう少し差が出たかもしれないが、前回との比較という点で、あえて設定を変えていない)。

テスト名 テスト条件など Pentium 4-1.8GHz Pentium 4-2.0GHz 1.8GHz比(クロック比:111%)
N-Bench 1.2 SSE2有効 5173 Marks 5687 Marks 110%
なし*1 5144 Marks
(-0.6%)
5659 Marks
( -0.5%)
110%
DroneZmarK*2 GeForce3 High Q 97.17 FPS 96.75 FPS 99.6%
3DMark 2001 5848 3DMarks 5958 3DMarks 102%
SYSmark 2001 SYSmark Rating 156 162 104%
Content Creation 170 182 107%
Office Productivity 143 145 101%
Pentium 4-1.8GHzと、Pentium 4-2GHzのベンチマーク・テスト結果比較
*1 SSE2のチェックボックスを外して実行しても、完了後は必ずチェックボックスが有効になっている
*2 DroneZmarkの値は平均フレーム/秒

 一方、DroneZmarKは、逆に遅くなってしまっているが、これは前回も書いたとおり、テストのデフォルト設定(1024×768ドット、32bitカラー)が、プロセッサ・ボトルネックではなくなっている影響だろう。いずれにしても、単純なクロックアップだけに、性能面ではクロック向上分のメリットはあるハズだ。

順調にPentium 4の動作クロックが向上している理由

 478ピン対応Pentium 4のプラットフォームとしては、近い将来PC133 SDRAMに対応したIntel 845チップセットが登場してくる。今回は簡単なテストしかできなかったが、Intel 845プラットフォームが入手可能になった時点で、どんなベンチマーク・テストをどういう設定で行うかを検討したうえで、詳細なテストをしてみたいと思う。

 それにしても2GHzの発表で思うのは、Pentium 4の動作クロックが順調に向上していることだ。まだデビューして1年もたたないのだから、こんなところでマゴマゴしている場合でもないのだが、筆者は特別な理由があると考えている。Pentium IIIは、Coppermine以降、モバイルPC向けとデスクトップPC向けが、共通のダイで作られるようになった。そして、当初のCoppermineでは、十分な数のチップが製造できず、供給量の問題が生じていたのはご存じのとおり。一方、現在のPentium 4のコアであるWillametteは、デスクトップPC専用である。

 また、AMDは新しいMorganコアによるDuronと、PalominoコアによるモバイルAthlon 4を発表したばかりだが、Morgan、Palominoともに、Thunderbirdの最高クロック(1.4GHz)をいまだに超えられない(それどころかPalominoコアのデスクトップPC向けプロセッサはいまだに姿を見せない)。いうまでもなく、MorganとPalominoはともにモバイルPC向けとデスクトップPC向けが共通のダイだ。モバイルPC向けとデスクトップPC向けを同じダイで製造しようとすると、どうもトラブルが多いように感じるのは筆者だけだろうか。記事の終わり

  関連記事 
N-Bench 1.2に思うベンチマーク・テストの公平性

  関連リンク 
Pentium 4に関するニュースリリース
  
「元麻布春男の視点」


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