最適ネットワーク機器選択術

3.イーサネット カード選びの方程式

3-8. デバイス ドライバは重要な選択ポイント

島田広道
2000/07/07

 イーサネット カードに限ったことではないが、周辺機器をPCにつないで利用するには、そのハードウェア専用のデバイス ドライバが必要になる。デバイス ドライバは対象のハードウェアを制御するためのプログラム コードからなり、ハードウェアとOSの間で橋渡しの役割を果たす。そのため、デバイス ドライバの出来・不出来は、エンドユーザーから見たそのハードウェアの性能や機能、安定性などに大きく影響を与える。特に安定性に関してはデバイス ドライバの責任が大きく、ここに不具合があると、OS自体が(つまりシステム全体が)ハングアップしてしまうこともあるのだ。また逆に、ハードウェアに起因する不具合が生じても、デバイス ドライバ内のプログラム コードを書き替えて回避する、ということも可能な場合がある。このように、デバイス ドライバは、イーサネット カード選びの重要な要素である。

デバイス ドライバの対応OSは多いほどよい?

 一般的に、デバイス ドライバは各OS専用に用意されており、ユーザーは使用中のOSに対応したデバイス ドライバを選んで組み込む必要がある。つまり、ハードウェア ベンダあるいはOSベンダが対応ドライバを開発していないと、そのハードウェアをそのOSの環境下で利用できない。また同じOSでも、バージョンが異なると、デバイス ドライバの互換性が失われることもある。Windows 9xやWindows NT/2000など内部構造がよく似ているOSのシリーズでは、単一のドライバでサポートされている例も見られるが、デバイス ドライバの組み込み方が特殊だったり、省電力機能などが一部働かなかったり、といった制限もあるので注意が必要だ。

 市販されているイーサネット カードのパッケージ外装を見ると、対応しているOSの一覧が記述されている。ここに記載のあるOSについては、何らかの形でデバイス ドライバが用意されていることを意味する。多くのイーサネット カードが対応しているOSの一覧を以下に記す。

対応OS 俗称、フォルダ名など 備考
DOS Packet Driver、PKTDVR DOS用のTCP/IPプロトコル スタックでよく使われていたドライバ
ODI、NWCLIENT NetwareクライアントのためのDOS用デバイス ドライバ
NDIS NDIS 2対応のリアル モード用ドライバ
Windows for Workgroup 3.11 WFW311、NDIS 日本では発売されなかったワークグループ ネットワークを構築できるWindows 3.xの亜種。NDIS 2/3に対応する
Windows 95 W95、NDIS NDIS 3/4に対応しているが、4を使うほうが望ましい
Windows NT NT、WNT、NDIS NDIS 3に対応している
Windows 98/SE W98、NDIS 4 NDIS 4/5に対応しているが、5を使うほうが望ましい
Windows 2000 W2K、NDIS 5  
OS/2 2.0以降 OS2 IBM LAN Serverのドライバも兼ねていることがある。
Netware Server NWSERVER、NETWARE、NW ノベルのネットワーク サーバOSであるNetware用デバイス ドライバ。3.11/3.12/4.xなど、OSのバージョンごとにドライバがそれぞれ用意されている場合がある
LAN Manager for DOS MSLANMAN.DOS マイクロソフトのサーバOSであるLAN Manager for DOS用ドライバ
LAN Manager for OS/2 MSLANMAN.OS2 マイクロソフトのサーバOSであるLAN Manager for OS/2用ドライバ
SCO UNIX SCO 商用UNIXの一種
UnixWare UW 商用UNIXの一種
Linux LINUX、REDHAT、TURBO、etc. フォルダ名にはディストリビューションの略称が用いられていることがよくある
デバイス ドライバの対応が豊富なOS
「フォルダ名」とは、各OS用のデバイス ドライバが格納されているフォルダによく付けられる名称のことである。

 もちろん、対応OSが多いほど、そのイーサネット カードは「つぶしが効く」利用範囲が広い製品といえる。とはいえ、たとえばクライアントPCにしか使わないと決めているイーサネット カードには、サーバOS用のデバイス ドライバなど必要ないだろう(その逆もまた然り)。クライアントPCという用途に限った場合でも、DOSのパケット ドライバやOS/2用ドライバなど、Windows OS以外のOSに対応したドライバがどれだけ重要かは、個々の場合に応じて読者ご自身で検討する必要があるだろう。

 対応OSの数に注意する理由は、イーサネット カードの市販価格と対応OSの数の間に、ある程度の相関関係が見られるからである。イーサネット カードに限らずハードウェア製品では、その開発時にデバイス ドライバも含めたさまざまなテストが行われる。対応OSが多いほど、デバイス ドライバの開発はもちろん、このテストの手間も増えるため、開発コストも高くなりがちだ。つまり、対応OSの数を限定すれば、開発コストを抑えて市販価格も下げることができるかもしれない。実際、PCIイーサネット カードのうち実売価格が2000円前後と安価な製品は、対応OSをWindows OSだけに限定していることが多い。

PC以外のプラット ホーム対応は重要か?

 同じことは、ハードウェア プラットフォームにも当てはまる。PCIやPCカードのイーサネット カードなら、PC-9801シリーズやMacintoshシリーズも対応スロットを標準装備している機種がある。スロットの仕様は多少の違いこそあれ、基本的にはPCと仕様は同じなので、そこに装着するイーサネット カードもハードウェア レベルで互換性をとることが可能だ。従って、デバイス ドライバさえ開発すれば、この3つのプラットフォームすべてで使える製品を実現できるし、実際にそういった製品が市販されている。しかし、特にPCとMacintoshの両方に対応した製品は高価である(PCIカードの場合、7000円〜1万円程度)。これは、両者のアーキテクチャがまったく異なるため、デバイス ドライバの開発にかかる追加コストが高くつくためだろう。一方、PCとPC-9801シリーズの間では、アーキテクチャがよく似ており、同じOSを採用しているため、デバイス ドライバの互換性度も高い。そのため、両者に対応したイーサネット カードは多く、また価格とも連動しているようには見えない。

 もちろん、対応プラットフォームの多いイーサネット カードほど「つぶしが効く」のは確かだが、特にMacintosh対応製品の価格が高いことには注意すべきだろう。たとえPCとMacintoshの間でイーサネット カードを統一できたとしても、それによるメンテナンスの手間の縮小と、カード単価の上昇が見合うかどうか、よく考えてから選びたい。

対応ドライバをOSが標準装備しているか?

 基本的にデバイス ドライバは、イーサネットに添付のものか、ベンダのホームページに掲載されているものを利用するが、ほかにも入手経路がある。それはOS自身が標準装備しているデバイス ドライバである。最近のOSならハードウェアを自動認識できるものも多いので、もし対応のデバイス ドライバがOSで用意されていると、そのカードをPCに装着してOSを起動するだけで、自動的にデバイス ドライバが組み込まれる。つまり、ユーザーがいちいちデバイス ドライバを用意して組み込む必要がないのだ。手間が省ける分、便利といえる。

Windows 2000のネットワーク ドライバ選択画面
Windows 2000が標準装備しているネットワーク インターフェイスのデバイス ドライバが一覧できる。古いものも含む多くの製品がサポートされている。

 問題は、どのようなカードがOSに標準サポートされるか、という点にある。従来は、大手のメジャーなベンダの製品なら、古いものから最新のものまで、標準的にOSにデバイス ドライバが用意されることが多かった。大手ベンダの製品であればシェアが広いため、OSベンダも積極的にサポートしていたのが理由の1つである。しかし、最近は安価なイーサネット カードもよくサポートされるようになってきている半面、大手ベンダ製品のうちやや古いものがサポートされなくなった例もあり、一概に大手ベンダ製品が有利とはいえない。

 ここで、カード ベンダのうち大手とそれ以外でイーサネット カード開発手法にどのような違いがあるか触れておこう。大手ベンダは、自社でイーサネット コントローラを開発し、それをカード製品にして自社ブランドで販売する。コントローラを単体でOEM販売することもあるが、その割合は少ない。デバイス ドライバやユーティリティも自社で開発する。カード ベンダとしてみると、製品に含まれる主要なものは自社開発なので、どうしても開発コストは高めになる。その結果、市販価格も高めであることが多い。これに対して、大手以外のベンダは、台湾などのイーサネット コントローラ ベンダからデバイス ドライバとセットでコントローラを購入して、カードを製造・販売する(コントローラ ベンダはOEM販売だけで、カードは自社で製造・販売しないことが多い)。これだとカード ベンダは、コントローラもデバイス ドライバも(少なくとも0からは)開発する必要はないので、開発コストは下げられる(*1)。したがってコントローラの単価さえ安ければ、カードの市販価格も安く抑えやすい。1000円台〜3000円台で販売されている100BASE-TX PCIカードは、この方式で製造・販売されていることが多い。

*1 カード ベンダによっては、コントローラ ベンダより供給されたデバイス ドライバをほぼそのまま製品に添付して販売することもあるし、また改良や不具合の修正を独自に行うこともある。同じコントローラでかつほぼ同価格のイーサネット カードでも、こうした事情からデバイス ドライバの質が異なることがある。

 さて最近は、台湾などのベンダによる安価なイーサネット コントローラを採用したイーサネット カードが、その安さを武器にシェアを伸ばしている。そのためOSベンダもそのコントローラのデバイス ドライバを標準サポートするようになってきている。つまりベンダの規模の大小(あるいは有名か否か)では、どっちがよいか一概に判断ができないのが現状である。

 またOSに含まれるデバイス ドライバで不具合が生じてしまい、かえってトラブルのもとになる場合もある。よくあるのは、新しいリビジョンのコントローラをOSが誤って認識してしまい、古いリビジョンにしか対応していないデバイス ドライバをインストールした結果、不具合が生じるというパターンだ。OS標準ドライバで問題がないかどうかは、購入前なら、情報を収集して実情を確認するしかないだろう

 
     
 INDEX
  [特集]最適ネットワーク機器選択術
  1. イントロダクション
  2. イーサネットの基礎の基礎
    2-1. イーサネットの基本はCSMA/CD方式にある
      コラム:IEEE802の各種規格
    2-2. イーサネットのフレーム形式とコリジョン ドメイン
    2-3. 現在の主流、100BASE-TXを知る
      コラム:10BASE/100BASE以外のLAN規格
  3.
    3-1. デスクトップPCには100BASE-TX PCIカードが最適
      コラム:できれば避けたいISAイーサネット カード
    3-2. 一般的な100BASE-TX PCIカードの選択ポイント
    3-3. 100BASE-TX PCIカードの付加機能をチェックする
      コラム: イーサネット カードにおけるサーバ用とクライアント用の違い
    3-4. ノートPC用にはPCカードから選ぶ
    3-5. 100BASE-TX CardBusか、10BASE-T 16bit PCカードか?
    3-6. PCカードならケーブルの接続方式がポイント
    3-7. イーサネット ケーブル直結方式は便利か?
      コラム:USBによるイーサネット接続
  3-8. デバイス ドライバは重要な選択ポイント
    3-9. もう1つのソフトウェア サポート − ユーティリティ
      コラム:Linuxのためのイーサネット カード選び
  4.
    4-1. ハブ/スイッチの種類と機能
    4-2. ハブ/スイッチ選択の基礎知識
      コラム:そのほかのネットワーク機器
    4-3. ハブ/スイッチ選択のポイント

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