インタビュー

2001年、AMDはプロセッサ・シェアの30%を目指す

聞き手:デジタルアドバンテージ
2001/05/11

 AMDの2000年の総売上は、AthlonDuronの好調に支えられ、46億4418万7000ドルと、設立以来の最高となった(AMDの決算に関するニュースリリース)。純利益も9億8302万6000ドル、1株当たりの利益は2.89ドルと、これも過去最高の値となっている。Athlon/Duronの搭載PCも着々と増えてきており、2001年にはサーバ/ワークステーション市場に積極的に参入することも表明している。

 そこで、日本AMDの取締役 吉澤俊介氏と広報 林真里さんに、2001年のAMDのサーバ/ワークステーション戦略を中心にお話を伺った(本文中敬称略)。

2001年末のシェア30%に向けた戦略

−−2000年を振り返って、AMDとしては予想どおりの結果だったのでしょうか?

吉澤:2000年は全体的によい年でした。最終的に日本国内シェアは、目標の20%に非常に近い数字が達成できましたし、AthlonとDuronを採用したPCも増えてきています。実は、2000年第3四半期だけを見ると、シェアは25%近くに達していたのですが、第4四半期に若干、落としてしまいました。

−−第4四半期にシェアが落ちてしまった原因はどこにあったのでしょうか?

吉澤:ノートPC向けのプロセッサが、AMD-K6-2+からモバイルAMD Duronへの移行期に入ったためです。スムーズにモバイルAMD Duronに移行できればよかったのですが、若干リリースまでに間が空いてしまったため、結果的にノートPC市場でシェアを落としてしまいました。この移行がスムーズにできていれば、20%以上のシェアは確保できたと思います。

−−2001年のシェアの目標はどの程度なのでしょうか?

吉澤:2001年の目標は、2001年第4四半期にシェアの30%を確保することです。現在の日本の全PC市場は、個人向けと企業向けで約800万台ずつになっています。このうち個人向けPC市場のシェアを50%確保するつもりです。こういうと、多くの人がまったく信じてくれないのですが、2000年8月のPOSデータでは実際に50%を超えているので、まったく無理な話ではないのです。今年は、モバイルAMD DuronとモバイルAMD Athlonがそろうので、ノートPCにも十分に対応可能です。

 さらに、昨年の時点で難しかったのは、薄型ケースのデスクトップPCにDuronとAthlonを採用してもらうことだったのですが、それも今年は改善されます。すでに今年1月に日本電気が発表した「VALUESTAR L(日本電気の「個人向けパソコン発表のニュースリリース」)」を見ても分かるように、省スペース・デスクトップPCにもAthlonとDuronが採用可能になっています。これは、これまで発熱などの関係で搭載できなかったのが、製造プロセスなどの改良で消費電力を低く抑えることが可能になったからです。開発コード名「Palomino(パロミノ)」と呼んでいる次のAthlonでは、さらに消費電力が小さくなるので、こうした省スペース・デスクトップPCに搭載しやすくなります。Palomino/Morganでは、ノートPC向けに開発した「PowerNow!テクノロジ」に対応します。これにより、今までよりも薄型のデスクトップPCに搭載しやすくなるのは間違いないでしょう。現在のAthlon/Duronの場合、薄型ケースのデスクトップPC向けには、特別とはいいませんが、消費電力の低いプロセッサを選別して出荷しているというのが正直なところです。しかし、これがPalomino/Morganになれば、エンド・ユーザーがPCショップで購入してきたものでも、当たり前のように薄型のデスクトップPCに搭載することができるようになります。このようにノートPCと薄型デスクトップPCに対応できるようになれば、個人向け市場で50%という目標は無理がないと思います。

日本電気のVALUESTAR L
AthlonならびにDuronを採用した薄型ケースのデスクトップPC。AMDは、このモデルのために低消費電力が可能なAthlon/Duronを選んで日本電気に納入しているという。Palomino/Morganが投入されれば、市販のAthlon/Duronを使って薄型ケースに搭載することも可能になる。

−−企業向けPC市場では、どの程度が目標になるのでしょうか?

吉澤:全体でシェアを30%にするには、企業向けでも最低10%は確保しなければなりません。できれば、20%以上を確保したいと思っています。そうすれば、第4四半期には全体の30%のシェアが確保できると期待しています。

 ある調査によると企業内で使うPCを選択する場合に重視する項目の第1位は価格、次がメモリ、プロセッサのスピード、ハードディスク、省スペースで、CPUのブランドは最後の方にあります。これが昨年からどのように変化してきたかを調べた結果、「プロセッサのブランドを気にする」という項目が一番減っています。つまり、多くの人がプロセッサのブランドを気にしなくなっているということです。逆に「省スペース」を気にする人が増えています。このアンケート結果から、2001年に売れる企業向けPCの条件を考えてみると、「安い」、「スピードが速い」、「薄型である」ということになります。

 この要件は、Pentium 4では満たせないでしょう。スピードという面では満たせますが、薄型のケースに搭載することは現状では難しいでしょう。Pentium IIIの場合、1GHzまでは条件を満たせると思いますが、それ以上となると難しいと思います。このところの動作クロックの上昇からすると、2001年の夏ごろにはほとんどのデスクトップPCのプロセッサが1GHzを超えてくるでしょう。そうした場合、Intelではこの3つの条件を満たすプロセッサがないわけです。なぜなら、Pentium IIIのアーキテクチャで1GHzを超えるのは、非常に大変です。もし、1GHz以上を供給しようとすると、同じウエハの中から一番いいものを選別する必要がでてきます。ただ、こうした選別したものというのは、数がそれほど取れませんから、価格が高くなったり、供給量が限られたりします。これまでは、それでもPCベンダはIntel1社しかないので、あきらめていたわけですが、いまはAthlonというソリューションがあるので、よほどの理由がなければ使わないということはないと思います。

−−ということは、今年は企業向けPCでもAthlonの採用がかなり増えるということでしょうか?

吉澤:もちろん、そのように期待しています。

−−特に個人向けPCでは低価格化が進んでいますが、2001年もこの動向は変わらないとお考えですか?

吉澤:ノートPCについては、液晶パネルなどの部品の値段が下がる余地があるので、価格は下がっていくでしょう。モバイルDuronが遅れてしまったのは、ノートPC用のグラフィックス機能を内蔵したチップセットがなかったためですが、今年はチップセットもそろってきたので、より低価格な製品が出てくると思います。

 ただしデスクトップPCは、いろいろな統計を見ると価格の低下は収まってきています。CD-R/RWドライブやDVD-ROMドライブの搭載が標準的になっていますし、IEEE 1394は当たり前だし、ハードディスクの容量も大きくなってきています。昨年の中ごろに広まった9万9800円で何も付いていないというPCよりも、こうした機能を備えた12万円以上のPCを求める人が増えてきているようです。また、2台目、3台目のPCとして購入する人が増えてきています。こうしたユーザーは、プロセッサのロードマップを見ると、今後も性能は向上していくことが明らかなので、少しでも長く使えるように比較的ハイエンドのPCを購入する傾向にあります。現時点でも、10万円少々で1GHzのプロセッサを搭載したPCを購入できるので、やはりこのクラスが売れるようです。

−−AMDとしては動作クロックの高いAthlonの方が伸びてくると予想しているわけですか?

吉澤:そうはならないでしょう。昨年、Athlonはスピード・キングとして動作クロックを引き上げてきました。しかし、今年はPentium 4にその座を譲って、どうぞご自由に、という感じですね(笑)。AMDが狙っていくのは、1G〜1.5GHzの間のもので、非常に性能が高く、リーズナブルであるという路線です。2002年以降になれば、Hammerシリーズでまたスピード・キングを狙っていくつもりです。

−−では、エントリPC向けのDuronはどういった戦略を考えているのでしょうか?

吉澤:ここは、一番ボリュームがあるクラスですが、Duronはほうっておいても売れると思います。Duronは、Athlonに比べるとブランドの認知度が低いのですが、実はこのクラスの購買層はプロセッサのブランドなんて気にしない人が圧倒的に多いのです。気にするのは「スピード」、それも実性能ということではなくて「クロック・スピード」です。Duronは、同じ価格でCeleronよりも高い動作クロックのものが購入できるので、必然的に売れるはずです。Duronは、4月2日に900MHz版を投入しましたし、第3四半期には1GHzを超える予定でいます(日本AMDの「AMD Duron-900MHz発表のニュースリリース」)。Duronは、すでにCeleronの市場はかなり奪っているので、これからはPentium IIIの市場をいただくつもりです。

 同様のことは、ノートPCについてもいえます。AMDのノートPC用のプロセッサは、1四半期程度の遅れで動作クロックがデスクトップPCに追いついてきているので、モバイルDuronも間違いなく1GHzを超えてくることになります。そうなった場合、モバイルCeleronの1GHz超えが無理で、モバイルPentium IIIでやっと1GHzという状態では、モバイルDuron/Athlonには勝てないでしょう。今年は、Pentium 4のモバイル版は無理だと考えられるので、モバイルDuron/Athlonは性能的にも非常にいいポジションにいることになります。

サーバでの採用には実績が重要

−−では、サーバ向けの戦略はどのように考えているのでしょうか。いままでのところ、サーバでのAthlonの採用がほとんどありませんが、この理由はどのようにお考えですか?

吉澤:サーバで採用が少ないのは、現在のところAthlonにサーバ向けのソリューションがないからでしょう。

日本電気のInternetStreamingServer
ストリーミング・コンテンツ配信に特化したアプライアンス・サーバ。Athlonを採用したいことで話題となっている。デュアル・プロセッサが可能となるチップセット「AMD-760MP」が出荷されれば、こうしたアプライアンス・サーバを含むサーバ製品でのAthlonの採用も増えてくる可能性がある。

−−しかし、Pentium IIIはサーバ向けというわけではありませんが、エントリ・サーバなどで一般的に採用されています。必ずしもサーバ向けのソリューションが必要であるとは思いませんが。

吉澤:サーバに採用されるには、ある程度の企業系での採用実績がないと難しいという事情があります。とはいえ、すでにAthlonでもサーバの実例はいくつもあるのです。例えば地方のISPなどでは、加入者が増えてくるとサーバを増やさなければならなくなりますが、そこで性能、安定性、価格などの条件でAthlonを採用していただいています。また4月20日に日本電気が発表したストリーミング・コンテンツの配信サーバでは、Athlonが採用されました(日本電気の「InternetStreamingServerに関するニュースリリース」。このように徐々にではありますが、Athlonのサーバでの採用が増えてきています。

 ただ、ハイエンドのサーバとなると、もう少し実績を積まないと難しいでしょう。特にハイエンド・サーバでは、2プロセッサ以上のサポートが必要になります。そうはいっても、多くの場合は2つのプロセッサを搭載せずに、保険として2プロセッサの対応が求められているのですが、それでもこのクラスでは2プロセッサのサポートが必須なのです。その点に関しては、AMD-760MPという2プロセッサ対応のチップセットが出荷されれば解決できます。このAMD-760MPというチップセットには、すでに多くのマザーボード・ベンダが興味を示しています。

2002年に向けてHammerシリーズを準備中

−−AMD-760MPの出荷予定はいつごろになるのでしょうか? すでにいろいろなところで搭載したマザーボードを展示したり、デモンストレーションを行ったりしていますが、製品出荷についてのアナウンスが未だにありません。

吉澤:AMD-760MPは、2001年中ごろには出荷可能になると思います。

−−Athlonの発表当初は、すぐにでもマルチプロセッサ対応が可能ということでしたが、ここまで時間がかかっているのはどういった理由からなのでしょうか?

吉澤:1つは開発などのリソースの問題です。マルチプロセッサに対応する前にするべきことがいろいろとあったということです。個人ユーザーのシェアを確保することはもちろん、企業のデスクトップPCでAthlon/Duronが普通に使われるようにならないと、マルチプロセッサ対応にしてもPCベンダは採用してくれないでしょう。優先順位からいうと、ノートPCで個人ユーザーのシェアを奪回すること、薄型デスクトップPCでの採用を可能にして、企業内で使われるデスクトップPCで普通に使われるようになること、その次がマルチプロセッサ対応です。

林:補足させていただきますと、サーバの分野はAMDにとっては、まだ未知の部分であるため、慎重に顧客と話を進めていて時間がかかっているという面があります。サーバは、デスクトップPCなどと比べて、デザインの更新サイクルが長いので、タイミングを見ながら準備をして万全を期してから参入したいと考えています。

−−サーバ向けでは、64bitをサポートしたHammerシリーズが計画されています。すでにアプリケーション・ベンダに対しては、「VirtuHammer」と呼ぶx86-64アーキテクチャの開発環境を発表していますが、ベンダの反応はいかがでしょうか?

吉澤:現在のところ「布教活動」の段階ですので、まだ反応という話をするのは早いと思います。企業系に入るには、先ほども話が出たようにデザインの更新サイクルが長いので、かなり長期間にわたるロードマップを示さないとならないということです。しかも、それで「大丈夫」と企業ユーザーに思っていただかないとなりません。実際に製品が出てくるのは、2002年になりますが、それまでにHammerがIntelのIA-64に対してどの程度優位なものなのかを理解してもらわないといけないでしょう。これは、Hammerがサーバに採用されるかどうかだけでなく、Athlonのサーバ市場への導入にも大きく影響すると思っています。Hammerの場合は、IA-64のように大掛かりにすべてを変える必要はありません。そのため、資産を踏襲することができるので、導入の抵抗はそれほどないでしょう。

−−逆に変更点が少ないことで、性能的な向上もそれほどないのではないかという声も聞こえますが。

吉澤:確かに、そういう話も聞きますが、そういう顧客に対しては積極的に情報を公開していくしかないと思っています。まだ、そういう段階にはなっていませんが。

林:エンド・ユーザーに対して、詳しい仕様や性能について公表するのは、しばらく先になると思います。ただ、サーバ・ベンダなどにはすでに情報の公開を始めています。

−−Hammerシリーズに対するWindowsの対応について、まったく話が出ないのはなぜですか?

林:Microsoftにはいろいろな情報を提供して、フィードバックをいただいている段階です。

吉澤:1ついえるのは、HammerシリーズはデスクトップPC向けのClawHammer(クローハマー)からリリースされます。Hammerシリーズでは、パイプラインにも手を入れるので、性能的にもPentium 4に十分追いつくレベルになります。そうなれば台数的に見込めるものとなるので、自然と対応していただけることになると信じています。

−−最後に「AthlonとDuronはいいプロセッサなのだが、チップセットの安定性が低いため、メーカーとしては使いにくい」という話を、よくPCベンダから聞きますが、今後チップセットやマザーボードを積極的にAMDから提供するといった戦略の転換はありえますか?

吉澤:確かに「チップセットだけでなく、マザーボードもやってほしい」という話も聞きます。チップセットの出荷時期はまちまちですし、安定性の面でもいろいろと話を聞くことがあります。しかし、実績を積んでいって見てもらうしかないでしょう。2000年のAMDは、2650万ユニットのプロセッサを出荷しています。このほとんどがサードパーティ製のチップセットで、すべてがサードパーティ製のマザーボードなわけです。批判を受ける部分もあると思いますが、それに余りあるメリットがあると、AMDは考えています。まず、実績を見てください。

 2000年度好調だったAMDは、引き続き強気な目標を打ち立てている。確かに今年はIntelのPentium IIIからPentium 4への移行期に当たり、AMDにとってはすき間に入り込みやすい時期でもある。そのすき間を埋めるように、IntelはPentium 4の価格を大幅に下げ、移行を促進しようとしている。この戦略がどのように出るのか、年末の結果に期待したい。

 また、AMDの課題である企業向けPCでの採用も、徐々にではあるが進んでいるようだ。日本電気が発表した「InternetStreamingServer」のようなサーバ製品への採用がされたことでも、着実に実績を積み始めていることが分かる。しかし、一方でインタビューでも触れているように、チップセットやマザーボードの信頼性に対して疑問を持つPCベンダが多いのも事実だ。吉澤氏は、「実績が解決する」と述べているが、それまでにかかった時間を考えると、AMDがチップセットとマザーボードに参入する必要もあるのではないかと感じる。特に次世代の64bitプロセッサ「Hammerファミリ」では、サードパーティが安定した製品を出せるようになるまで、長い時間がかかることが十分に予想できる。Intelのようにプロセッサの登場と、システムの立ち上がりがほぼ同時、という環境を作るためにも、チップセット/マザーボード市場への参入を検討する時期に入っていると感じる。記事の終わり

  関連記事(PC Insider内) 
新しい製造技術の導入でIntelに挑むAMD
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変貌する2001年のノートPC
 
  関連リンク 
決算に関するニュースリリース
VALUESTAR L発表のニュースリリース
AMD Duron-900MHz発表のニュースリリース
InternetStreamingServerに関するニュースリリース
 
「PC Insiderのインタビュー」

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